【CoachingWorld】360度評価とコーチング:コア・コンピテンシーへの関連付けと活用

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年5月号から、荒木まさえ氏に翻訳いただきました『360度評価とコーチング:コア・コンピテンシーへの関連付けと活用』の記事を御紹介します。


360度評価とコーチング:コア・コンピテンシーへの関連付けと活用
360度評価とコーチング:コア・コンピテンシーへの関連付けと活用コーチの多くが360度評価は個人の仕事のスキル、能力、行動の多重視点を示すものと認識しています。よく「フル・サークル」評価と呼ばれ、通常その人の上司、同僚、部下のフィードバックと自己評価を含んでいます。
評価フィードバックは、個人的および専門的能力開発を導く一連の行動計画を可能にする多角的視点から、個人データのポイントを与えてくれます。

私は、360度評価フィードバックコーチングセッションの一つでロバートに出会いました。中堅管理職のロバートは、ストレスでくたくたに疲れ切った状態でセッションにやって来ました。セッション前にコンピュータの不具合があり、自分の評価フィードバックレポートをダウンロードすることができず、セッションに手ぶらで来たのでした。

前もって渡していたロバートのフィードバックレポートのコピーを私は持っていたのですが、ICFコア・コンピテンシーを活用する有利な状況であると認識しました。ですので、最初にロバートにレポートを差し上げて、フィードバックの話し合いからどのようなことを達成したいかを質問するセッションから始めるのではなく、「今日、何について話したら一番役に立ちますか。」という質問を投げかけました。

大変驚いたことは、ロバートが「私は今のように完璧に準備ができていないと、いつも非常にストレスがたまるので、それについてもっと話して、ストレスを少なくする方法を考見つけたいと思います。」と答えたことでした。

コア・コンピテンシー
 関連付ける方法
基盤を整備する
倫理指針とプロフェッショナルとしての基準を満たしている
  • クライアントが自由に自信をもって話すことができるよう不安のない安全な場を与える
  • フィードバックレポートと話し合いの内容は守秘義務があることを明確に伝える
コーチングの契約を確立する
  • フィードバックコーチングセッションの結果となぜそれが重要なのかをクライアントが確認、承認するのを支援する
  • 表明した結果を達成するため、フィードバックセッションの軌道を保つ
関係性を共に築く
クライアントと共に信頼と安心感を作り上げる
  • 敬意を持った、偏りがなく、決めつけることのないアプローチでフィードバックするために、安全で信頼できる場を築く 
  • 評価データの意味やクライアントの懸念についての考えをクライアントが現わせるよう、クライアントを後押しし支援する
コーチングを行う際の在り方
  • クライアントの学びを支援するため、評価結果を掘り下げることができるようクライアントとパートナーを組む
  • クライアントをよりよく知るために好奇心を持つ
  • データやフィードバックの話し合いに対するクライアントの反応や応答に気づき(例:心を開いている、不安になっている、抵抗している)、それについてクライアントに話すよう招き入れる
効果的なミュニケーション
積極的傾聴
  • クライアントの言葉、トーン、ペース、沈黙、応答を注視し、質問する
  • クライアントの考え、行動、感情、視点について質問し、掘り下げる
  • コーチのコメント、フィードバックの見解や質問に対して、クライアントが話し、考え、返答する時間を与える
人を動かす質問
  • フィードバックデータ、強みや改善すべき領域の自己認識、その後の行動へのコミットメント、そして掘り下げることの構成要素についての新しい考え方を働き掛ける、明確で、率直で、そしてそのほとんどを自由回答形式で質問をする
  • フィードバックレポートと話し合いから得た大きな驚きや新しい学びについてクライアントに質問する
  • その後の行動やその後どのような展開にしていくのかの決意をクライアントに話してもらうよう質問する
明確なコミュニケーション
  • 特定評価ツールの詳細を明確に伝える(例:得点構造、データ表示形式、図表)
  • クライアントが優先順位付けして前進するために、フィードバックデータやコメントの使い方について、クライアントが理解を高められるような率直で正直なフィードバックを与える
  • クライアントの言葉を使う、あるいは学びを支援する話し方をする
  • クライアントにほとんどの時間を話させる
学びと結果を促進させる
気づきの創造
  • クライアントが評価フィードバックをどのように使い、どのように自己理解させる のかを考えるよう後押しする
  • クライアントが自分の強みや、あるいは成長の機会について新たな知見を得るときにそれを気づき、認識する
  • クライアントにコーチングから得た学びをどのように使うか質問する
  • セッション中にクライアントを観察し(例:声、エネルギーレベル、開放性と自己反省)、クライアントが得ることと見つけようとしていることを追求する
行動のデザイン、計画とゴール設定、進捗と説明責任の管理
  • クライアントに成長のための行動やリソース、トレーニングを扱うブレインストーミングを提案する
  • クライアントがセッション後の行動を決め、行動に責任が負えるよう支援する。(例:新たなスキルまたは能力、成長に向けてのアプローチ、必要なリソース、行動時間割、そしてその他の計画構成要素を得る計画)
  • セッション中にクライアントの進歩に気づき、伝える。

その日、私は「コーチングの契約を確立する(Establishing the Coaching Agreement)」のコア・コンピテンシーをより明確性を持って毎回のフィードバックセッションを開始する重要性を学びました。それはまた、360度評価フィードバックコーチングの間、ICFコア・コンピテンシーのすべてに関連付ける価値を一層明らかにしてくれました。

クライアントの現状、フィードバックレポートの理解度、そしてフィードバックに対するセッションの心構えと準備、すべてが360度フィードバックセッションで取り組むアジェンダの一助となります。

クライアントにセッションで何にフォーカスしたいかを質問すると、よく聞く答えの一つに、「何に取り組む必要があるか考えるのを助けてほしいです。」があります。このような一般的な答えを受け、クライアントと私はうまくいくセッションとはどういったものか、セッションを最高に意味のあるものにするにはどうしたらよいかということを探る時間を過ごすのです。

ひとたびゴールが明確になると、セッションはたいてい典型的な解釈プロセスをたどります。

  • コーチとクライアントが協力して評価者グループのフィードバック データパターンや傾向を調べる。
  • コーチは、クライアントがデータについて結論を出し、成長や発展に最も意味があり、関連する領域を特定することをサポートする。
  • セッションは、特定の領域に取り組むための行動を探し続け、セッション後の行動計画で終了します。

ただし、クライアントが個人的問題に取り組むことからセッションを始めたい、または個人的な成長の計画に焦点を当てたいのであれば、それは始めるのに前向きな状況です。

フィード バック データの解釈はセッションの最初だけでなく、話し合いの最中でも常にすることができます。

ロバートのケースを見てみましょう。ロバートはストレスの意味について焦点を当てたかったにもかかわらず、セッションの間に評価者グループからのフィードバックレポートとコメントについて検証する機会が非常に多くありました。

例えば、ストレスに関連する項目やコメントのフィードバックレポートのコピーを渡して、確認するよう勧めたとき、彼は上司からのコメントに注目しました。「ロバートは勤務中に手を止めて歩き回ることで、管理効果をさらに上げることができるでしょう。」このコメントは話し合いにエネルギーを湧かせ、どのような体の動きがストレスを軽減するかを探らせたのです。

すべてのコーチングのパートナーシップでもそうであるように、安全、安心、守秘義務は 360 度フィードバックコーチングを成功させるために必須です。さらに、360 度フィードバックのコーチは使用する評価ツールの特定の資格や専門知識と経験、そして、クライアントに結果をもたらすより深い自己認識と行動を導くことを実証します。

評価ツールの技能

効果的に360度フィードバックを行うコーチは、特定評価をベースとしたフレームワークやモデルを知っています。データ表示、数字の目盛り、基準の対比、自由回答式質問に対する回答形式、またフィードバックレポートの他の側面についても説明し話し合いを持ちます。例えば、あるコーチが評価結果を受けるのをあまり好ましいと思っていないシニアリーダーに会うとします。そのリーダーは評価ツールとデータ表示、特に基準データを使用した個人データの比較をするとします。

基準データの情報源を明確にすることと、リーダーのデータがどのように基準グループと対比するかを話し合うことは、リーダーシッップに新たは視点を与えます。リーダーは時に自身と他を比較した時に、自己認知の変化を価値の高いものにします。

ツールについてのリーダーの懸念を対応することで、コーチやリーダーはフィードバックデータを率直かつ生産的に分析する幅広い機会を得るのです。

コーチングの技能

ほとんどの商品としての評価ツールは、結果に対するフィードバックを担当するコーチが、システムの管理者であり、解釈プロセスのファシリテーターとして認定されていることを条件としています。資格を取得し、360度評価フィードバックセッションをICFコア・コンピテンシーに関連付けるコーチは、成功するように思います。

技能にたけ経験豊富な360度フィードバックコーチはICFコア・コンピテンシーを前表に記載されている方法で実証しています。

解釈セッションの技能

360 度フィードバックコーチングは、通常、時間が定められているので、セッションを成功させるために時間管理は重要です。フィードバックコーチングセッションが短い場合は、長い時間のセッションや複数回のセッションに比べ、よりセッションのペースに注意しなくてはなりません。1 時間のセッションでは、コーチとクライアントはセッションを予定通りに行う時間についてコーチングの合意をやり直したり、再確認したり、または変更することは滅多にありません。

ICFコア・コンピテンシーを十分に活かすことで、クライアントの学びやポジティブなコーチング成果が上がることをコーチは大変認識しています。360度フィードバックの話し合いに同じコア・コンピテンシーを関連付けることで、コーチはクライアントが今以上に前進するコーチング力を高めるのです。


著者情報
バーバラ・スミス PCC

アメリカバージニア州フェアファクス在ICF International Organizational Researchのパーフォーマンス部門シニアコンサルタント。長期開発プログラムリーダーを含む全レベルのリーダーにコーチングを行う。多数の業務用および特別仕様の360度評価ツールの認定資格取得。ICF東北地域諮問評議会およびICFグローバル指名委員会会員、ICFワシントンメトロ元会長。25年以上の米国連邦政府における経験を有し、現在、国防総省、航空宇宙局 (NASA) 、国立衛生研究所、米国環境保護庁、その他の連邦政府機関で人的資源スキルやリーダーシップコーチングの専門知識を適用している。

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参考(コア・コンピテンシータイトル):
国際コーチ連盟日本支部翻訳版(2013)『国際コーチ連盟が定める核となる能力水準』 ビズナレッジ株式会社

【翻訳 荒木まさえ】
Originally written in English by Barbara Smith, PCC
Coaching World, Issue 18, May 2016, p28 360-degree Assessment and Coaching:
Connecting and Capitalizing on the Core Competencies
http://icfcoachingworld.com