【CoachingWorld】アウトドアでのウォーキングと会話

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『アウトドアでのウォーキングと会話』の記事を御紹介します。


アウトドアでのウォーキングと会話

「歩くことは人にとって最大の薬である」
ヒポクラテス

アウトドアでのウォーキングと会話

自然の中での運動を、コーチングの科学と技術に組み合わせることで、人に変化を起こす力が生まれます。ウォーキングと会話によるコーチング・セッションには、川の傍を流れに沿って歩くことや街中の探索、目的地を決めてのウォーキングから、山の頂上を目指すことや未知の場所を求めて海外へ遠征することまで、様々なものがあります。こうした機会は、いつもの職場を離れ、日々のルーチンを破壊することで、豊かなテーラーメードのコーチング体験を創り出してくれるのです。

エクスペリエンシャル・コーチングはこれまでにも、創造力を産み、生産性を高め、ストレスを減らし、頭をクリアにし、異なる視点への感謝をもたらすなど、たくさんの効果が確認されています。こうした効果はドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェによって「全ての真に偉大な思想は、歩くことから得られている」とまとめられてもいます。ウォーキングと会話によるコーチングは、初めは家族や友人同士での個人的なアウトドア体験から始まり、次に軍や探検などから、その後プロフェッショナル・コーチングの開発によってより洗練されてきました。

基本に立ち返る

この狂ったような21世紀の人々の生活の速度は、エスカレートする一方です。仕事、テクノロジー、ファイナンス、社会的な義務、政治、環境への配慮などなど、リストは続きます。その一つひとつのどれもが私たちに時間とエネルギーを要求しています。
これら仕事へのコミットメントや社会との関わりは、主に私たちに座っての作業を求め、世界中のメディアが「座ることで生じる病」として報道するような不健康や、肥満を引き起こす原因にもなっています。西洋社会では、人が1日に座って過ごす時間は8~10時間とも言われ、今もまだ増え続けています。しかし、進化の観点から見ると、人類は毎日12マイル(約19km)歩くようにデザインされています。
自然、そして狩猟・採集者としての遺伝生理学的な傾向に立ち返ることで、身体に生化学的な変化がもたらされます。より多くの血液と酸素が脳を巡り、脳細胞間や海馬(感情、記憶、自律神経をつかさどる)で新たな繋がりが形成されていきます。要するに、アウトドアでのウォーキングと会話は、生来の神経的、生物学的、遺伝的な要素をサポートすることで、人の認識機能を高めてくれる、ということです。

ウォーキングの素晴らしい働き

ウォーキングと会話のもたらす無数の恩恵は、全体的な健康と、メンタルと身体を繋ぎ合わせる手助けをしてくれます。下記のリストは、その一部です。
・認識力を高める
・記憶、論理的な思考、学習をサポートする
・生産性とエナジーレベルを上げる
・自己肯定感を高め、幸福度を上げる
・不安を和らげる
・ストレスや憂鬱な気持ちを和らげる
・脳細胞を健康に保ち、ニューロン形成を助ける
・BDNF(脳由来神経栄養因子)のレベルを高める
・体内のリズムや、体内時計を整える
・ビタミンDの吸収を助ける
・食欲増進
・心臓病、アルツハイマー、脳こうそく、糖尿病の可能性を減らす
・筋肉と骨を強くする
・力とバランス力を鍛える
・血液の流れを良くし、細胞に酸素、糖分、代謝産物を届ける
・血液の流れを良くし、細胞の毒素排出を助ける

コーチングセッションでのウォーキング

コーチングの効果を高めるために、アウトドアでのウォーキングと会話は様々な形で取り入れることが可能です。
・いつものコーチングの効果を高めるために、ウォーキングと会話だけで構成するセッションを行う
・時間(半日、一日、複数日)、場所、距離、アプローチを変えて、ウォーキングと会話のセッションを専用にデザインする
・コーチングの合間に、アウトドア環境を利用してコーチングをベースとしたエクササイズを利用する(例: 個人での振り返り、マインドフル・ウォーキング/シッティング、呼吸法、対話により関係性を深める)
・スカイプなどのオンラインツールを使い、あなたの「グリーンオフィス」(アウトドア)からバーチャル・コーチング・セッションを行う

注意点

アウトドアはコーチングをサポートし、あるいは深めるための素晴らしい手段です。高いクオリティーのコーチングを提供するために、次のことに注意してください。

実験。もしウォーキングと会話を行うのが初めてであれば、仲間や希望するクライアントに試してもらってからにしましょう。近場の公園やオープン・スペースで試し、学びながら調整しましょう。

クライアント目線で。誰もがアウトドアを楽しめる訳ではありません! クライアントと話し合ってアウトドアのことは決めましょう。契約書も確認すべきでしょう。

荒天時のプランを。クライアントによっては防水のジャケットとブーツで、雨傘を差すことを喜んでくれる人もいます。しかし一方で、濡れない、もっと快適な場所を希望する人もいます。

1に場所、2に場所、3に場所。場所と距離、あくっせすのし易さ、フィットネス・レベル、信頼性や健康に合わせて、会場とルートを考えましょう。

健康と安全への配慮。ファーストエイド、一般賠償、専門職業責任保険がカバーされることを確認しましょう。初めてのクライアントの場合は、あなた自身の安全にも配慮を。

クライアントの医療情報の開示。通常のコーチングパートナーシップではあまり必要がありませんが、アウトドアでのウォーキングを行う際には、クライアントの健康状態(医療的なコンディション)を明らかにしておきましょう。

「仕事での難題、時間のかかる趣味での気晴らし、家族間のデリケートな話題について、現代社会の装飾物に埋められていない場所で話すことが私の思考を整理してくれる」
ソフィー、プロジェクト・マネージャー

「私はいつも、外で歩いている時に、一番ものごとを深く考えられると思っています。新鮮な空気を吸いながら身体を動かしている時が、頭の中にあるものについて考えをめぐらすのに丁度良いのです。」
ピート、エンジニア


著者情報
アンナ=マリー ワトソン、ACC
アンナ=マリーはパフォーマンスコーチで、セッションの前、最中、後にクライアントとアウトドアで過ごすことを好む。彼女のコーチング哲学と精神は、彼女のコンサルタントビジネス、Reach and Moreにも反映されている。彼女はまた、アナリティック・ネットワーク、mBrainingコーチ、eDISCとiWAMサイコメトリック・プロファイル・ツールズの認定者でもある。
アンナ=マリーは、マウンテンリーダーの資格、ワイルダーネス・ファースト・エイドの認定資格を持ち、10年以上の国際的な大会での経験を持つブリティッシュ・マウンテニアリング・カウンシルのメンバーでもある。現在はFresh Air Learning Companyとパートナーシップを組み、チームのアウトドアでの体験型学習のファシリテートなどを行っている。詳しくはrfmcoaching.comを参照のこと。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Anna-Marie Watson
Coaching World, Issue 19 August 2016 p16-18 Walking and Talking in the Great Outdoors
http://icfcoachingworld.com