【CoachingWorld】「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長』の記事を御紹介します。


「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長
「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長数週間前、同僚が私のオフィスを尋ねてきました。
「ねえ、今、自分のコーチを探している学生がいるんだけど。」

彼女のいつものコーチが合わなかったため、私は彼女―サムと呼ぶことにする―と会うことしました。サムはかなり焦りを感じているようでした。

「いきなり来てすいません。でも、なんとかしなきゃいけないことがあって、そのためにコーチングが必要なんです。ここは、私が批判されずに話せる数少ない場所だから。」

そして私たちは話しはじめました。彼女の言葉が進むにつれて、私は彼女の変化、エネルギー・シフトを感じました。サムはこのセッションを、コーチにフォローアップしてもらいながら進めるべき、次のステップとプランを見出すことで終えることができました。

サムは、私たちのプログラムでコーチとのワークを行い、エネルギーと自分のゴールに向けた目標への気づきを得た1363人の学生の内の、1人の例に過ぎません。
 

次々とくる学生たちにとって、変化は新しい喜びの発見と自立、同時に無力感や不安を生むものでもあります。学生は日々選択(それは時に重大なものでもあり得る)を迫られますが、それには実行力とそのスキルや、感情の制御といったものが必要となってきます。このプレッシャーは学生に、質問と、すぐに出る「答え」を求めさせます。

すると熱心な学生たちは、教授たちなら「正しい答え」を教えてくれるだろうとキャンパス中を探し始めます。しかし、私の学生への長年のコーチングの経験は、コーチングの鍵となる教義が正しいことに気づかせてくれました:すなわち、このヤングアダルトたちは生まれながらに問題を解決する力も、必要なものも手にしている。大切なのは、彼ら自身が何者なのか、本当に求めるものは何なのかを見つけ出すことです。彼ら自身の中からそれを発見することは、簡単なことではありません。多くの学生たちが、自分のアイデンティティも目的も持たないまま大学に来ます。
 

コーチングのプロセスは、学生がコーチとの本当のパートナーシップを育むことのできる、安全でニュートラルな環境を生み出します。学生は自ら議題や話のトピックを選ぶことになります。その中には、大学入学という環境の変化、メジャーやキャリアのこと、ストレスのマネジメント、学業のこと、サークルや人間関係、意思の決定や、(学内の自治会などの)執行部への参加などが含まれます。

トゥーレーン大学でのサクセス・コーチング・プログラムの立ち上げは、教職員、学内スタッフ、そして保護者たちの観察から生まれました。以前から、学生たちは情報を集め、明確なプランを造り、それに力を注ぐことができました。しかし、それを実行する段階で失敗していました。何かが欠けていたのです。そう、学生たち自身の視点が。ですので、当初からこのプログラムは人間をまるごとプロセスと融合し、「処理する」というより「変わる」ということに重点をおいています。

「コーチングのプロセスの中で、学生たちが成長し、自分自身が何者なのか/何ができるのかに確信を持てる姿を私は見てきました。」と、サクセス・コーチのカレン・ホッカイザー(ACC)は言っています。これは特に、自身のアイデンティティを発達させ、世界の中に自分の居場所を見つける段階の学生に顕著です。コーチングは、様々なこと、何か違うことに挑戦できる安全な場所をつくりだします。それは、クライアントとコーチの両方にとって、変化とエネルギーをもたらします。
 

試験的に始めた2012年から、このプログラムを通して、私たちのオフィスは圧倒的にポジティブな反応を経験してきました。学内からの紹介も学期ごとに増えています。試験時の学期には、69人の学生が256回のミーティングを行いました。4年後の2016年春学期には、638回のミーティングが行われてます。2015~16年度を通しては、1363人の学生が5817回のミーティングを行っています。この成功は、「強み」に注目したメッセージ方法のおかげでもあります。例えば、学内の同僚や保護者には、学生を「紹介」するのではなく(有望だと思える学生を)「ノミネート」してもらっています。

私たちのゴールは「数」ではありません。代わりに、交流の「質」に重きを置いています。このアプローチにより学生とコーチはラポールを築き、信用できる関係を作り上げ、学生のゴールを成し遂げるために動くことができます。結果として、学生にとっての成果、感情の制御や、学業的なパフォーマンスの向上、属する団体の強化、時間のマネジメントスキルの獲得、自己効力感の向上、そしてキャンパス内でも「信用できる人物」としてのアイデンティティの確立などが起きます。更に言えば、2016年春学期には、99%の学生がコーチングを「役に立つ」もしくは「非常に役に立つ」と評価しています。

私たちは、学生のニューロダイバーシティ(脳の多様性)へのサポートも必要だと考えています。そのために、コーチたちはICFの専門トレーニングプログラムの中でもADHDと根拠に基づいたメソッドにフォーカスしたプログラムで学び、認定資格を取得しています。(この知識とトレーニングは、ニューロティピカル(定型発達=いわゆる健常者)の学生とのワークにも役立てられることが分かっています。)

科学というレンズを通したコーチングは、途方もない価値を持っています。脳のメカニズム、プロセスのスタイル、ポジティブ/ネガティブ両方の感情の力を知ることで、学生たちが熱心な学習者になっていく姿を見てきました。恥や不安といったものがどこから来るのか、それを説明できる要素を、労を厭わず見つけ出そうとする姿勢も観察してきました。神経生物学的な要素への気づきにより、学生はそれまで制限や限界だと認識していたものに気づき、そこから開放されていきました。

コーチングの感想を公表することに同意してくれたとある学生がこんなことを言っています。

「私はいつも乗り越えられないタイムマネジメントの問題をかかえていたんです。それは私の人生にずっとついてまわる重荷だと思っていました。あなたが今、水の中に囚われていて、足首には鎖が繋がれ、その先には大きな重りが付いている状況を想像してみてください。あなたの人生は、ずっとその重りを外そうとしながら、時々水面に顔を出してやっと息継ぎをしているような状態なんです。それがようやく、鎖を外すだけの力を得ることが出来て、水の上に頭を出し、肺いっぱいの酸素を吸うことができた。この安心感。まるで命が助かったというような感じ。それが私がコーチングを体験して味わった感情なんです。」


著者情報
ミシェル・エルキング
ミシェルはテューレーン大学で学生たちへの学習のサポートサービスを包括的に提供する、アカデミック・サクセス・センターのディレクター。また彼女は同時にライフコーチ、ADHDコーチでもあり、テューレーン大学のサクセス・コーチング・プログラムの創設者でもある。ADDコーチ・アカデミー卒。ニューオーリンズにあるサザン・ユニバーシティの社会福祉課程で修士号を取得。2012年12月には、学生の進学率とサクセスについての業績が認められ、テューレーン大学の学長によるスタッフ・エクセレンス・アワードを受賞。彼女自身のビジネス、Souljourn Coachingでは、個人、組織双方の成長についてのプログラムとサービスを自ら提供している。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Michele Oelking, PCC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p31-32 Supporting the “Who:” Coaching and College Student Development
http://icfcoachingworld.com