【CoachingWorld】効果的な手法“チェックイン”の有用性 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『効果的な手法“チェックイン”の有用性』の記事を御紹介します。


効果的な手法“チェックイン”の有用性
効果的な手法“チェックイン”の有用性

コアコンピテンシー11
進捗と説明責任の管理

クライアントにとって何が重要であるかに着目し続け、行動を起こす責任をクライアントに委ねる能力


18年前、私が初めて受けたコーチングのトレーニングプログラムでは、毎回セッションの最後にこう訊かれました。「セッションで得られた成果は何ですか?」そしてこの問いかけは、私たちがクライアントに対しコーチングセッションの最後に訊く習慣となったのです。

それから5年ほど経ったある日、この習慣を考え直すきっかけとなった衝撃的な出来事が起こりました。いつもの問いかけに、クライアントは次のように応えました。「得たものは何点かあって、とても良い会話でした。このセッションで期待していたものは得られませんでしたが、話した内容はとても良かったです。」
「え?!今のはどういうこと?どういう意味?私が気づけなかった、クライアントが本当に話したかったことって何だったの?彼の期待に応えられなかったなんてコーチとして失格だわ!」電話を切りながらこう思ったのを覚えています。

その日から、私はそれまで以上にクライアントの希望を明確に確認するように努めました。セッションの中では、クライアントが望む方向へ向かっているのか確認しながら進めました。
このような経験から、私が今回お勧めするのはコーチングの中でも最も効果的な手法の一つ、“チェックイン”(方向性の確認)です。

クライアントからみてセッションが希望通りの方向へ進んでいるのかを確認するには、先ずクライアントの向かいたい方向・着地点を知る必要があります。そのために、私はエグゼクティブコーチとして、コーチングのトレーナーとして、そしてICF資格認定メンターコーチとしてICFのPCCマーカー(認定資格PCC取得の評価基準)日本語翻訳版)を常時利用しています。このPCCマーカーを活用することによって、コーチングスキルを極め、より効果的なセッションを行うことができるのです。

PCCマーカーのコアコンピテンシー2:【コーチングに関する同意の取り交わし】の1番目には次のように記されています:「コーチはセッションでクライアントが達成したいことを特定または再確認できるよう手助けしている」。この意味するところは、クライアントが望む方向へ進むにはクライアントが話したいトピックを理解するだけではなく、クライアントがそのトピックにまつわる何について探究したいのかを理解する必要があるということです。

例えば、クライアントがこのような発言をしたとしましょう。「同僚達が私よりも高い給料をもらっていることを先ほど知りました。やっている仕事は同じ、しかも彼らが入社した当初、彼らに仕事を教えたのはこの私ですから侮辱された気分です。私の給料が彼らよりも低い理由をマネージャーに訊いてみたいです。」

これを聞いてトピックはわかります。しかしセッションを通し、このトピックについてどのような成果を得たいのでしょう?マネージャーとの話し合いの準備をしたいのかもしれませんし、マネージャーと理路整然と話すために先ず自分の感情を整理したいのかもしれません。あるいはまったく別のことかもしれません。

ここで仮にクライアントが、セッションの直前に給料に関する情報を得たとして、「先ずは感情の整理をしたい。」、「その後、マネージャーとの話し合いの準備をしたい。」と言ったとしたならば、ここではじめて感情の整理と話し合いの準備の2点に焦点をあてたセッションの方向性が定まります。

PCCマーカーのコンピテンシー2【コーチングに関する同意の取り交わし】の5番目に挙げられているのは、「コーチは、クライアントから指摘されない限り、クライアントが望む成果の方向へ会話を続けている。」このポイントを知っておくことで、セッションがクライアントの望む方向に沿っているかどうか、方向性の確認をすることができます。

確認の問いかけは、例えばこのようにします:
「トピックのどの部分から掘り下げていきましょうか?」
「違うトピックが出てきたようですが、その内容は元々のトピックと関連しているのですか?」

“チェックイン”を行うタイミングは、セッションの半ばで行います。60分~90分のセッションであれば、“チェックイン”の回数を増やしましょう。

“チェックイン”の例をあげましょう:
「セッションの始めと今の感情を比べるとどのような変化がありますか?」
「このセッション中、マネージャーへの良いアプローチ方法が浮かんできているようですが、進み具合はいかがですか?」

“チェックイン”を行うと、ほとんどの場合クライアントの中で次のようなことが起こります:
1.セッションから得た気づきを熟考する
2.アクションポイントが浮かんでくる

このため、クライントから湧き起こる気づきや行動内容について掘り下げる時間を確保できるよう、セッションの終盤まで“チェックイン”のタイミングを遅らせてはいけません。“チェックイン”時の会話は、その他の「深く掘り下げる」「発見する」ことを目的とした会話と同じくらい重要です。“チェックイン”のタイミングを逃すことは、クライアントの損失となります。

コーチングにおいて”チェックイン“は、セッションがクライアントの期待に沿って進んでいるのか、クライアントが他の方向へ切り替えたいのか、または掘り下げて自分の行動について話す準備ができているのかを判断する上でとても有効的な方法なのです。


著者情報
カーリー・アンダーソン(MCC)
ICF認定メンターコーチ。
CCE単位認可プログラムのMentor Coachesを実施。
企業とコーチング契約を結び活動中、代表的なものとしてグーグル社450名の従業員を対象にコミュニケーションやリーダーシップ向上のためコーチングを提供。
カーリーが作成したThe Target Approach: Demystifying the ICF Core CompetenciesではICFコアコンピテンシーを解りやすく紹介している。
カーリーについての詳しい情報:CarlyAnderson.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Carly Anderson
Coaching World, Issue 21 February 2017 p10-11 The Value of Checking In
http://icfcoachingworld.com