【CoachingWorld】コーチが投げかける質問を考える ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『コーチが投げかける質問を考える』の記事を御紹介します。


コーチが投げかける質問を考える
コーチが投げかける質問を考える

コアコンピテンシー6
パワフルな質問

コーチングにおける関係性を向上させ、クライアントに与える利点を最大化するために必要な情報を引き出す質問を投げかける能力

時として質問はフクザツだが答えはシンプルだったりする」-ドクター・スース (米国・児童文学作家)

さて、投げかける質問が複雑過ぎることはありませんか?あるいは、投げかける質問をシンプルにするにはどうすればよいのでしょう?

私たち、プロコーチは投げかける質問が効果的であるよう確実にしなければなりません。なぜならば、それに対するクライアントの反応が、前進または変化へとつながるからです。曖昧、あるいはとりとめのない問いかけが、クライアントの持つ内省・続行・変化する力にどれだけの効果があると言えるでしょうか?私の意見はこうです。「質問がパワフルであれば、答えははっきりみえてきます」

コーチングの初心者の多くは、ひな形にそってパワフルな質問を学びます。しかし、変革的であるためには、前記の引用のように「ドクター・スース的」に疑問を抱き、好奇心を持ち、じっくり聴き、そして直観する力を際立たせさる必要があります。

質問の質を高める5つの秘訣を下記に述べます。簡潔に記していますが、実はとても重要な内容です。

1.質問は短く、簡潔に

私は、以前一緒に仕事をしていたメンターコーチに、質問の単語数を短く7語以内にすることに挑戦するよう指摘されました。コアコンピテンシー6条「パワフルな質問」に力を注いできた私にとって、この指摘は意外なものでしたし、行ってみるとコーチングをしている自分の出来具合に意識が向いていました-そう、コーチングを習い始めた頃のように。
この訓練のおかげで、質問が複雑で分かりにくくなればなるほど、それに応えるのが難しくなるということを習得することができました。長い質問は、クライアントの思考をフリーズさせるのです。ちょうど、コンピューターのキーボードで連打した時と同じように。クライアントの思考は止まり、コンピューターでいえば強制終了状態になります。
短くシンプルな質問を意識できるよう、下記の“KISS”を参考にしてください。中でも私のお気に入りは、「What else? (他には?)」です。
是非、7語以内の質問(短くシンプルな質問)にチャレンジし、そのような質問があなたのコーチングにどのような影響を与えているのか、またその理由を考えてみてください。

“KISS” = Keep It Short and Simple (短く簡潔に)

パワフルな質問は、明確さ、行動、発見、洞察力、コミットする力を喚起します。パワフルな質問は、可能性を広げ、新しい学び、あるいはより明確なビジョンをもたらします。
質問を効果的にするためには、長く、複雑にする必要はありません。
(2語)
What else? 他には?
Who else? 他には誰?
By when? いつまでに?
Like what? 例えば?
How else? 他にはどんな?

(3語)
What is that? それは何?
What stands out? (その中で)際立ってことは?
What is next? 次はなに?
What is working? うまくいっていることは?
What will change? 何が変わる?
What drains you? ストレスになっていることは?
How could you? どうすればできる?
What is possible? できることは何?

(4語)
What are you tolerating? 我慢していることは?
What is not working? うまくいっていないことは?
What is it like? どんな感じ?
What do you want? 何が欲しいですか?
What are you discovering? 気づいたことは?
Who are you becoming? どんな風になりたいですか?
What are you resisting? 抵抗を感じるものは?
What do you mean? どういう意味ですか?
What is stopping you? 何が妨げになっていますか?

(5語)
Where will that get you? それをすると何につながる?
What about this excites you? ワクワクするのはどんなところ?
What is this costing you? その代償は?
What will be different now? これから何が変わると思う?
What would that give you? それによって何が手に入る?
What is new about this? 今までと違うところは?
What could you stop doing? 止めることがあるとしたら何?
What will you do next? 次、何をしますか?
How would you do it? どのようにしますか?

(6語)
What are you learning from this? 学びは何ですか?
How do you feel about this? どう感じていますか?
What do you love about this? 中でもすごく好きなことは?
What is standing in your way? 障害は何?
What is your back up plan? バックアッププランはなんですか?

2.指令のような質問をしないこと

「Tell me (教えて)」「Show me(やってみせて)」「Help me understand(理解できるように聞かせて)」。
このような問いかけは、オープンクエスチョンではありません。心を開きたくないクライアントは、このような問いかけにそっけなく「yes 又は no」と応えることができます。
このような光景を、マネージャーやリーダーにコーチングスキル習得の研修やコーチングをする中で日常的に目にします。コーチにそのことについて訊いてみると、その「指令的質問」をオープンクエスチョンと捉えており、当然のごとくオープンクエスチョンとして使っているのです。
この指令的質問を抑える訓練は、コーチングの練習セッションの中でできます。指令的質問をしてしまったら、その都度自分にそっと×印をつけてみてください。こうすることで、自分の癖に対する意識が高まり、言い方を替えることにつながるでしょう。

3.2次的・3次的質問をすること
私たちコーチは、クライアントが抱く点と点を結び、あらゆる視点を持ちながら試し、そして見えていない盲点への気づきを促す努力をしています。
私たちは、クライアントの気づきを深めるためのサポートをします。
このことを、エグゼクティブコーチであり、人類学者のジュディスE.グレーサーは、“ダブルクリック”と呼んでいます。2011年に彼女は自身のブログの中で、このように説明しています:
“ダブルクリック”と名付けたのは、コーチングのプロセスがコンピューター内のフォルダーを開ける時のダブルクリックに似ていると思ったからです。私はこのように“ダブルクリック”を引用します。「チーム内において、個々人の考えを互いに比較したり、またはそれに対する理解や受け取り方を共有するために個々の頭の中を“ダブルクリック“してみてください。」これは、探究してみてください、という意味です。同じ言葉や言い回しでも個々人によってその意味や受け取り方が異なるということを発見し、探求し、理解するために”ダブルクリック“します。このダブルクリックを練習する際には、コンピューターでいうならば、クライアントのキーワードにハイパーリンクが貼ってるかの如く想像してみてください。
クライアントの発している言葉の裏にある真の意味をくみ取れるために、ダブルクリックをし、2次的・3次的質問をしてください。

4.視点を変える

私たちコーチは、クライアントの視野を広げる手助けをしています。クライアントの視点を変えるために次のようなことを試してください:
・時間軸を未来へシフトし、予測する… 「来年はどのようになっていますか?」
・仮定する… 「もし~」
・建物の1階から屋上へ移動してみる… 「もし上からその情景を見たならば…」
・アプローチする部分を変える… 「あなたの心はなんと言っていますか?頭は?脳は?子供の自分は?歳をとった自分は?」
ドクター・スースは、次のような豊かな表現で視点を変えることを促しています。 「右を考え左を考え、それから下のことも上のことも考えよう。ああ、トライしさえすれば、どれだけの考えを見つけ出すことができるか」

5.永遠に好奇心を持ち続けること

ドクター・スース曰く、「大人というものは、退化した子供にすぎない」
子供は生まれながらにして好奇心を持っています。
コミュニケーションミスや期待通りにいかなかったことに対し腹を立て、人生は複雑だと嘆くクライアントの話に私たちコーチは耳を傾けますが、こんな時、腹を立てる代わりに好奇心を持つよう励ましましょう。好奇心を持つと、「できることは何か?」と考えます。ドクター・スースが言うように、結局のところ「大切なのは、何がどうあるかではなく、どうなれる可能性があるか」なのです。

このようなヒントを基に練習し質問力をつけてください。そして忘れないでください。
簡潔な質問は、クライアントの思考を妨げることなく、彼らが探し求めている答へと導くということを。


著者情報
バーブ・ガーソン(ACC)
研修・コーチング・ビジネスコンサルティング・ファシリテーションにおいて20年以上の経験を持つ。提供する研修やエグゼクティブコーチングは、企業・チーム・個人事業主に自信を与え、行動へ移し成長を促している。
ICFコロンブス(米国オハイオ州)代表
Worldwide Association of Business Coaches 会員
バーブについて詳しくはこちら; www.mysalestactics.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Barb Girson
Coaching World, Issue 20 November 2016 p10-11 Oh, the Questions We Ask
http://icfcoachingworld.com