【CoachingWorld】組織内でコーチング文化を築くには

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『組織内でコーチング文化を築くには』の記事を御紹介します。


組織内でコーチング文化を築くには
組織内でコーチング文化を築くには私が働いている組織、Tech CUではコアバリューである“培う”(Cultivate)をとても大切にしています。当社は、大きな組織ではありませんが、従業員の育成プログラムを豊富にそろえており、特に新人マネージャー向けのプログラムには力を入れています。また、執行部役員やシニアバイスプレジデントへは、外部のコーチによるエグゼクティブコーチングを実施したこともあり、その効果も見てきました。しかしながら、数ある育成プログラムを見直したところ、改良できるものがあることに気づきました。

それは、中間層のマネージャー向けのプログラムです。このプログラムは、シニアバイスプレジデント以上のポジションへ昇格するために必要な、リーダーシップ・コンピテンシーを養うことを目的としていますが、その内容は個々人にオーダーメイドされています。現在、私たちは、このプログラムに目をつけ、個々人のキャリアにおけるニーズに応じて社内コーチングプログラムの設計に取り組んでいるところです。この取り組みを進める中で、大きな学びがありました。その内容をここで共有することで、同じように自組織において社内コーチングプログラムを価値あるものとして広げ、その対象者を増やしたいと考える方々の参考になることを願います。

先ず、コーチングそのものの価値を理解してもらう必要がありましたが、幸いエグゼクティブチームの中にはコーチングが効果的であると考えている者が数名おりました。オペレーションチーフのジニー・ジェイコブソンは、「しっかり構成されたコーチングプログラムの導入による人材への投資は、リーダー育成の主軸となります。受けた本人がコーチングの効果を感じ、次第にどのようにすれば自らがコーチングを行えるか、ということを少しずつしみ込ませることができるからです。」
彼女のこの考えがヒントとなり、私たちはいわゆるストリーム・バリュー・マッピングの現状マップと将来マップを用いることにしました。それを用いることにより、中間層のマネージャーからシニアバイスプレジデント/エグゼクティブバイスプレジデントへのサクセッションプラン(後継者育成計画)を見てみると、現状マップと将来マップが連動していませんでした。このことから、重要な課題は技術的なスキル向上ではなく、エグゼクティブとしての自信、あるいは信頼を得るためのソフトスキルであることに気づきました。このようなソフトスキルの習得は、マイクロソフトのエクセルクラスを受講すれば済むというような簡単なものではありません。このため、私たちは課題を明確にするため自組織のコアバリューである“培う”(Cultivate)に焦点を絞り、シニアマネジメントへ次のように働きかけました。「想像してみてください。私たちの提案を受け入れてくだされば、将来、ご自身のサクセッションプラン(後継者育成計画)をご覧になった際、変革する力と強い意志を持ち、それを行動で示しいるリーダーの顔が浮かぶことでしょう。その人こそが、コーチングを受けることにより、自らの可能性を伸ばしリーダーへと成長する人です。」明確な根拠を必要とする人には、ICFが発表しているコーチング文化の構築に関する研究結果(https://coachfederation.org/coachingculture)を参照してもらいます。

進める過程では、コーチングに期待できることとできないことを説明しました。例えば、業務のパフォーマンス向上計画の一環ではないということ。また、コーチングは日常業務の改善やもっと働くことを“指導”するものではないということ。更に、シニアマネジメントの期待と相違が生じぬよう、コンサルティングやカウンセリングとの違いも明確にしました。これにより、「その人の行いを正すにはどうすべきか」という考え方よりも「その人の成長を促すために何ができるか」という考え方の方が、より前向きに捉えられるポイントだと、私たちは気づきます。
その上で、コーチングセッションとは、毎回行動へ移すことが求められ、本人がその責任を負うものであり、決して軽い思いつきで提案するものではないという事を強調します。

社内コーチ育成プログラムの実現化に向け、更なる理解と新たな見解を得る目的で、ベテランのマネージャーを集い、一人一人と時間をかけ話し合いました。その中で、私たちが提案するプログラムの位置づけや運用の流れを図で示しました。また、彼らの持つ素朴な疑問に答えた上で、私たちからは二つのお願いをしました。一つは、話の内容を消化した後、一か月程の後に再び話し合いの場をもつことと、二つ目は、彼らのチームからこのプログラムの先駆けとなるメンバーを検討してもらうことです。
その願い通り、次の話し合いの場では、彼らから調整事項と参加候補者リストの提示がありました。調整事項には、万一のバックアップと持続性を担保するために1名ではなく、2名以上の社内コーチを育成することとありました。これに併せ、特に守秘義務を重んじる事、そしてコーチング同意書にはクライアント・コーチ・クライアントの上司三者の同意を必ず得ること、が含まれていました。この頃になると、組織全体でコーチング文化を築く兆しがみえてきました。組織のコアバリューとニーズを基に積み上げた提案と、最初の段階から現職リーダーの意見を取り入れて進めたことにより、しっかりとしたプログラムを作ることができたと考えています。このプログラムを進めることにより、今後社内コーチングの価値が更に高まることでしょう。プログラムは始まったばかりですが、今年の後半には次期コーチ要員が、ICF認定プロバイダーの研修を正式に受ける予定です。私たちは、組織のコアバリューである”培う“ということを、このプログラムの中で実現することができることに期待を膨らませています。そして、引き続き次世代リーダーの育成の根幹に関われることを楽しみにしています。


著者情報
ジョシュア・レイミーレンク
Tech CU社(米国カリフォルニア州サンタフェ)でTalent and Organizational Development (組織及び人材開発)のバイスプレジデントを務め、同僚チームと同社のコアバリューである促進・培う・革新・協働に日々取り組んでいる。
ミドルベリー国際大学院モントレー校(カリフォルニア州)国際マネジメントMBA取得。
現在、Coaches Training Institute(CTI)でコーチングを学んでいる。

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Joshua Ramey-Renk
Coaching World, Issue 21 February 2017 p14-15 Building an Internal Coaching Pilot
http://icfcoachingworld.com