【CoachingWorld】勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~』の記事を御紹介します。


勇気あるコーチングによる次の時代
~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~あなたは解雇に直面したクライアントをコーチングしたことがあるかもしれません。しかし、もしそれが知能を持った機械のせいで働いていた産業自体が消滅したことによるものだとしたらどうでしょうか?

まるでSFのようですが、それは現実になってきています。私達は「雇用」そのものの変化に直面しているのです。でも、コーチである私達は、その対策を提示することができるのではないでしょうか?

人工頭脳学について追いかけてでもいない限り、人工知能(AI=Artificial Intelligence)の目覚しい進歩に、あなたはすぐに置き去りにされてしまうことでしょう。コンピューターによる実行の複合体、もしくは不可解な推論として大まかに定義される「AI」は、長らく会話の認識や、言語の理解、顔の認識といった期待された役割を果たすことなく、あざ笑われる存在であり続けていました。しかし近年、これらの目的は果たされてきています。スマートフォンに特定の友人が写った写真を表示するように話しかけると、AIはあなたの言葉を解析し、要求を理解し、人物を認識して画像を探してくれます。

この進歩のスピードは、いくつもの分野を混乱させるに足る程になっています。まだほとんどの人が自動運転の車を見た事がないというのに、モルガン・スタンレーは10年ほどで長距離トラックの仕事は自動操縦車に取られてしまうと予見しています(自動運転のトラックは、ネバダ州ですでに稼動し出していることが考慮されてのことです)。実現すれば、アメリカで300万人の仕事がなくなることになります。

しかし、あなたのクライアントはホワイトカラーであり、車の変わりに机に座り、頭を使うことで対価を得ているとしましょう。例えば年間に35万ドルを稼ぐウォール街のアナリストのようにです。それでもAIはその仕事も自動化しています。AIアナリティクスカンパニーの創立者ダニエル・ナドラーは2026年には33~55%のファイナンス関連従業員の仕事はソフトウェアに置き換えられてしまうと考えています。彼は、クライアントが人間によって仕事が成される必要性や欲求をもはや感じなくなってきていると指摘しています。

他にも、倉庫の荷造り人(二足歩行のロボットに置き換えられた)、受付係(マイクロソフトは人口のプロトタイプを3年前から配置)、警備員(ドローンはテロリストから違法駐車までを狩っている)など、多くの弱い産業が倒されてきました。これらは全て長い時間をかけて起きたのではなく、10年~20年程度の間に起きています。もしこれでもなおあなたにとって遠い世界の話のように感じるなら、ガートナーのダリル・プラマーはこれから1年か2年でこんな変化が起きると予言しています。

  • 現在の全てのビジネスの20%(レポートの記述、法的な書類など)は自動化される
  • 300万人以上の従業員が「ロボット上司」によって管理される
  • 45%の急成長企業では、スマート・マシンより従業員の数の方が少なくなる

バンク・オブ・アメリカは業界全体が自動化に直面している産業として、農業や、ヘルスケア、教育、エンタテイメントを挙げています。コンピューター科学者のモシェ・ヴァルディ(Moshe Vardi)は2045年にはほとんどの仕事が自動化されると指摘しています。

もしあなたがマネージャーをコーチしていて、その人たちがマネージするべき人間が居なくなってしまうのだとしたら・・・?

一度、深呼吸してみましょう。

コーチは今すぐにコンピューターに置き換えられてしまう危険性はありません(下記コラム、「どの仕事が一番安全か?」を参照のこと)。安全性の高い仕事は、人間の肉体的、あるいは精神的な部分に直接関わっているものになります。
ホワイトカラーのクライアントたちは、彼らの仕事が不要になるという説を聞いても、鼻で笑うかもしれません。彼らの多くは働きすぎて、山が消えていっていることをイメージすることが出来ないのです。しかし、ワーナー社のアニメで有名な、ロード・ランナーを追いかけるワイリー・コヨーテ(訳者注:トム&ジェリーのトムのように、俊足の鳥を追いかけては、毎回崖から落ちたり岩につぶされたりしてコミカルに失敗するキャラクター)が崖から落ちる時のように、その瞬間まで本人は全て上手くいっていると思っているものです。崩壊は、もし皆が事前に訪れることを知っていれば、そこまで崩壊的にはならないはずなのですが。

コラム:一番安全な仕事は何か?

2013年のオックスフォード大学の研究で、賃金と職業のサイズごとに仕事が自動化される可能性が示されました。

最もリスクが高いのは、レジ係、小売業の販売員、外食産業の労働者でした。在庫管理者から石工まで多くの物理的な仕事も、最近進化が特に顕著なロボティクスなども含めた自動化によって、2013年以降もリスクが高いとされています。ボストン・ダイナミクスのアトラス・ロボットは、荷物を持ったまましっかりと二足歩行が出来るようになっています。

同様にリスクが高いのは、テクニカル・ライター、から保険の販売者、核施設の技術者、事務補佐官などの知的労働者になります。

コーチについては特別には言及されていませんが、心理学者、教師、セラピストはリスクが低いとされています。看護師や科学者も同様です。

しかしながら、研究の結論からこのような問題をとりあげておきたいと思います。私が安全だと考えた経営責任者と弁護士は、短期的には正しいが、究極的には先見の明がないようです。やがては企業内での役員の意思決定も、十分な速度を持って事態にあたるためにAIにとって代わられることになります。

 

知識人にとっての自明の通説として、自動化は、人間をもっと報酬の高い、繰り返し作業の少ない仕事に移行させてくれるものだという考えがあります。馬車の製作者は、自動車のデザイナーとなることでより満たされます。流れ作業の労働者は、会計管理者となることでより幸せになるでしょう。従って、自動化は常に、究極的には全員の状況を改善することになるという考えです。

しかし、今はその通りになっていません。コンピューターは知的なタスクもこなせるよう学んでいます。クリエイティブで知的なレベルの労働者は、その仕事まで自動化されたらどこへ行けば良いのでしょうか? 近代最後の砦、ジョン・ヘンリー(19世紀末、機械化が進み多くの労働者が解雇されそうになった時、機械と勝負して勝ったら解雇を取り消してくれと持ちかけ、戦いに勝つもそのまま亡くなった英雄)となるのは、我々の魂に語りかける仕事になるでしょう。すなわち、芸術家、治療師、そしてコーチです。

多くの人が近いうちに自動化のプレッシャーを感じることになるでしょう。産業全体が消失することによって失業してしまうリスクが高いクライアントを、あなたはどうやって助けることができるでしょうか? 彼らの能力が、より安全な仕事に使えそうか評価しましょう。それが誰もが知る共通のニュースとなる前に、社会的な大変動のために備えようと考える先進的なクライアントは居るでしょうか?

この待ち受ける大変動の裏側に、更に大きな変動もあります。ある日、AIたちは意識を持ち、人間のようにクリエイティブで独立した思考と感情を持つようになるでしょう。それがいつ、どのようにして起きるかはまだ誰も知りません。しかし、ほんの一部の専門家はそれが起きるのではないかと疑っています。ステファン・ホーキング、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク―この惑星で最も頭の良い人間の内の3名です―は、賢くなりすぎたAIは、人類の生存を脅かす可能性を現に有していると言っています。

チャールズ・アイゼンシュタインは著書『The More Beautiful World Our Hearts Know is Possible(我々のハートが知っている「より美しい世界」は実現可能である)』の中でこう述べています。「もしあなたがいくつかのストーリーの間にある神聖な場に居るなら、それを認めよう。古い安全な体制を失うのは恐ろしいだろうが、自分が失うことがないと思っていたものを無くしても、大丈夫であることに気づくはずだ。」 2030年に起きるであろう激震に比べれば、今日の比較的穏やかな状況はこの神聖な場、状況を反映し充電する場のような状態にあります。ただし、人間性、あるいは人類愛といったものはこの場にはありません。

これからは、人間のこの状況を深く理解し、AIたちに人間を受け入れ決して我々を殲滅しないよう教える人々が必要になります。それはコンピューター技術者ではなく、心理学者であり、セラピストであり、コーチであるでしょう。

あなたは将来、この世界を救うかもしれないのです。


著者情報
ピーター・スコット、ACC
ピーターは情報技術と人間開発、両方の分野で30年以上の経験を持つ。『コントロールの危機:人口超知能は人類をどう破壊し、あるいは救うのか(Crisis of Control: How Artificial SuperIntelligences May Destroy or Save the Human Race)』の著者。詳細についてはHumanCusp.comを参照のこと。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Peter Scott, ACC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p26-28 Brave New Coaching World

http://icfcoachingworld.com