【CoachingWorld】コーチの在り方 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年5月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『コーチの在り方 ~道具箱から~』の記事を御紹介します。


コーチの在り方 ~道具箱から~
コーチの在り方 ~道具箱から~

コアコンピテンシー4
コーチングを行う際のコーチの在り方

オープンかつ柔軟で自信に溢れる態度をもって、コーチングに対し十分に自覚しクライアントと自然な関係性を築く能力



コーチングの挑戦:コーチの在り方!
コーチングを語るうえで、コーチが「そこに存在している」、とは一体どういうことでしょう?誰かと共にそこに居れば、確かにそこに存在はしています。例えば、学校で先生から出席簿を取られた時、私たちは、「はい。」と返事をし、ちゃんと席に居ることを伝えたものです。しかし、実際そこで先生と繋がっていた、あるいは関わり合っていたでしょうか?
ICFのコアコンピテンシーでは、「コーチとしての在り方」を、「軽やかに存在感があり柔軟であること(dance in the moment)」「直観にアクセスし、内なる感覚を信じる」と表現しています。このことを、もう少し詳しく見ていきましょう。

ここからは、誰かを揶揄するつもりはありませんが、軽やかに気分が高まるよう、少しユーモアを交えてお伝えしましょう。

VisualThesaurus.com(オンラインの類義語集)で”Presence”を調べたところ、「being 在り方」「beingness在る状態」と出てきました。“being”は、「存在している」という意味です。すなわち、「存在している」とは単にそこに居る、とも捉えられるかもしれません。しかし、コーチングで最も重要なのは、クライアントがコーチの存在を感じられることです。これは、対面であろうと音声セッションでも同じです。あなたは、話をしながら気が散るようなことはしていませんか? 例えば、相手から見えないからといってゲームをしたり。当然、私たち「コーチ」はそんなことは間違ってもありませんね。だからこそ、私たちはコーチとして雇われるのです。コーチ以外の人は分かりませんよ。

私たちは、クライアントの話に耳を傾け、問いを投げかけ、少々の困難があっても新しいことにチャレンジできるよう支援します。コアコンピテンシーには、クライアントに対しこうしなさい、あるいは、彼らのすべきことをコーチが決め込むということは一切書いてありません。しかし、コーチがクライアントと「共に居ない」としたら、対話をどの方向へ進めて良いのかわからなくなります。あなたは、その場、その瞬間で「常に」何を言えば良いか、どうすれば良いか分かっていますか? クライアントにどう反応して良いか分からない時、自己批判をしていませんか?私は、あなたがそう感じていないことを願います。確かに、時には他者の事例を挙げ支援することもありますが、基本的にはクライアント自身で答えがみつかるよう支援をするだけで、コーチが答えを持っているわけではありません。

コーチングにあらかじめ用意されたシナリオはありません。コーチングの定義や進め方、あるいはどのような事を期待できるか、を書き記したものがあってもそこには個々のクライアントとの進め方については書いていないはずです。セッション中に唯一起り得ることは、「軽やかに存在感があり柔軟である(dance in the moment)」状況です。私たちは、クライアントがサポートを必要としているところに手を差し伸べます。その支援がいつも正しいとは限りませんが、正しいかどうかは誰にも分りません。私たちは、クライアントが自らの情動の変化や妨げとなっているものを受け止め、リスクに対応できるよう勇気づけます。コーチ以外の人はこのような関わり方をしないでしょう。

ここで情動について考えてみましょう。クライアントが私たちのもとを訪れる時、往々にして彼らはハッピーではありません。気力がなく、どうにかして状況を変えたいと思っているものです。時には、何かによって傷つき、それが原動力となり変化を求めて来ることもあります。このようなテーマには、情動が関わってくるでしょう。あなたは、他者の情動と伸びやかに向き合うことができますか? 平常心を保てますか? その情動を受け止めることができますか? 共感できますか? 相手と「共に在る」ことができますか?

私は、重い病を経験した人と関わることもあります。彼らにとってコーチングは、大きな気づきを与え、残りの人生の送り方を変えるきっかけになることもあります。例えば、全く異なる職への転職、人との関わり方の変容、または引っ越しをする等。このような行動変容は、大きなリスクもあれば恐れもあるでしょう。このような時、私たちは、彼らのコーチとして「共に在る」必要があります。人生の変化や成長に関われることを、個人的には光栄なことだと思います。クライアントは、コーチがコーチらしく彼らと「共に在る」に相応しい(値する)存在です。
 

“どのようなことでも、何かが直接影響を受ければ、それに伴ってすべてが影響を受ける。
私が私であるためには、あなたはあなたであるべきであり、
あなたがあなたであるために、私は私でなければならない。
これこそが、内なる真実の仕組みである。”

~マーティン・ルーサー・キングJr

 


著者情報
アン・フライ Ann Fry, MSW, PCC
コーチ歴20年以上。専門分野は、エグゼクティブコーチングと大胆な変化を望む人向けのプライベートコーチング。重い病を患い、人生のシフトを望む人にも尽力している。
アンのHP: www.annfry.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Ann Fry
Coaching World, Issue 18 May 2016 p12-13 From the Toolbox Coaching Presence
http://icfcoachingworld.com