【CoachingWorld】システム神経科学から学ぶ苦言を呈する“直観型”(Disruptive)リーダーシップの在り方

苦言を呈する“直観型”リーダーシップは核心に触れ、本質に迫ることに長けています。但し、そのやり方は正しく行う必要があります。“裸の王様”の物語を思い出してください。パレードをしている王様の姿を見た子供は、王様が裸であることを叫びました。観衆が集まるパレードの場であり、叫んだのが子供であったこと。真実を知らしめる絶好のタイミングであり、また子供はそれに相応しい立場にありました。民衆が、幻想の世界から現実に引き戻された瞬間です。

この物語から学べることは、“直観型”リーダーシップにはただ単に真実を口にするということ以上の能力が必要だということです。適切なタイミング、穏やかで気さくな雰囲気、微妙なニュアンスが保たれているチームとの関係性がそれにあたります。

人は、神経系統の働きがある状態になると、“夢想的な思考”とその反対の“機械的な思考”との解離を認識できる、とトラウマの専門家は言います。コーチは、コーチ自身またはクライアントがその解離している状態を察知すると、コーチとしてはつい口を挟みたくなる衝動にかられるでしょう。しかし、既にショック状態にあるクライアントに、新たなショック(刺激)を与えることで更に深いショック状態に陥ることも考えなくてはなりません。

“闘争”か“逃走”か

今、辿っている道が誤りであるという真実を知ることは誰にとっても不快なものです。例えば、ナビに従い進んだ末、何やら間違った方向へ向かっているようだと気づいた時には、神経系統に影響を及ぼす物質が分泌され、いわゆる“闘争する”又は“逃走する”といった反応が起きるものです。真の“直観型”リーダーシップは、このような反応に注意深く意識を向けています。

“闘争”や”逃走“のような反射的な行動は、身体の反応から引き起る行動の一つです。危機的状況に陥ると、極度の疲労を体感し感情が高揚するのです。激しく起こるその反応は瞬間的である一方で、その影響は長期に及びます。

私たちの動物的身体は、“闘争”や“逃走”の感情を奔出することでシャットダウン状態(停止状態)から覚醒するように作られています。例えば、ポッサム(フクロネズミ)の行動で考えてみましょう。家の庭に犬が放されたとします。それを察知したポッサムは、一瞬死んだふりをして静止します。そして犬が他の事に気をとられた瞬間に猛スピードで一目散に逃げ、犬に襲われる危険から逃れるのです。逃れたポッサムは、体をブルブルっとさせ、体内に残る“闘争”や“逃走”のエネルギーを振り払います。

私たち人間も、他の動物と同じように“闘争するか、逃走するか”の反応が起こりシャットダウン状態から目覚め、その後余分な“闘争”又は“逃走”の化学反応を放出しています。車で事故を起こした場合、事故直後は何とか気持ちを落ち着かせ、電話を手に助けを求めることが出来ますが、徐々に冷静さを取り戻すに従い震えが来るのがそれに当たります。

かつて人々は、生命が脅かされるような出来事があると、太鼓を叩いたり踊ったり、その出来事を演技で再現したり洞窟に絵を描くことで、余分な“闘争”や“逃走”のエネルギーを放出していました。真の“直観型”リーダーシップは、真実を目の当たりにした相手が目を覚ました時に引き起こされるショックに対応できるよう手を差し伸べるものです。

プロセス共有

真の“直観型”リーダーシップは、“闘争”や“逃走”の反応から回復するために習慣的に手を差し伸べることの重要性を心得ています。人はこのような化学反応をはねのけ、“いつもの日常”に戻るためには時間が必要ですが、残念ながら現代ビジネスの文化ではその必要とする時間そのものが蔑ろにされています。

“裸の王様”に登場する民衆を思い出してください。誤った思い込みは、王様を騙した仕立屋によってもたされました。「この布は自分にふさわしい仕事をしている人にしか見えない」と言われた住民は、布が見えないことにより“闘争・逃走”感覚に陥り恐怖を覚えたのでした。

見えないことに絶望的になり、何としても見たいという感情が人々を硬直させポッサムのように身体がシャットダウン状態になったのです。そして、死んだふりをしたポッサムが逃走したのと同様、私たち人間が備え持つ“機械的な思考”が働き、「ええ、なんて素敵な布でしょう」と答えたのです。

物語の子供が真実を叫んだことによって民衆は目を覚まし、王様が裸の状態であることに気づいたのです。物語ではその後民衆がどうしたからは語られていませんが想像してみましょう。おそらく、その後何週間何カ月の時が流れ、何年もの間この出来事は語り継がれたでしょう。また、パレードでの雰囲気、子供が叫んだ瞬間や仕立屋に対する感情などが細かく歌になったかもしれません。集会ではその歌に合わせフォークダンスを踊り、集会場にはこの出来事から人々が学んだことを誇らしげに展示し、視覚的なアートとして残したでしょう。

真の“直観型”リーダーシップ:
・できるだけ相手に負担をかけずに目覚めさせます。
・目覚めた後のフォローを行い、悪い目覚めに伴う化学反応を放出するための支援をします。
・ビジネス文化における誤った方向性を軌道修正し、より有意義な考えを広げる努力をします。
例えば、解雇等でチームが精神的ダメージを受けている場合には、週末の息抜き程度では結束力を回復することができないからです。
・目覚めた後のショックから回復できるよう休息とリチャージすることを促します。
・新たな真実を受け止められるよう工夫のある取り組みを助成します。
・新たな気づきから啓発された神経系統が、“いつもの日常”の状態へ回復できるよう励まします。

“末永く続く幸せ”だからといって山や谷がないわけではありません。良き時間を過ごしている時には満たされますし、苦難な時期を共にすることによって別の意味での幸福感を得ることもあります。危ない道に迷い込んだ時に正してもらえる事はありがたい事です。但し、真実からのショックを消化してからにはなりますが。長い年月をかけ修正を幾重にも重ねることで私たちは開花するのです。私たちの旅は、目覚めるたびに歌や踊り、芸術や愛によって豊かになるのです。


著者情報
ディー・ワグナー
ディー・ワグナー(LPC, BC-DMT)はカウンセラー、米国アトランタにてダンス・ムーブメント・セラピストとして25年の経験を持つ。2017年ICFコンバージでは神経系機能をテーマに発表し、ICFブログでもお馴染みの存在。その他記事は以下に掲載されている:American Journal of Dance Therapy; Body, Movement and Dance in Psychotherapy; Voices: the Art and Science of Psychotherapy (American Academy of Psychotherapists); Elephant Journal and Asana International Yoga Journal.
ディー・ワグナーは、ワークブックNaked Online: A DoZen Ways to Grow from Internet Datingの共同制作者でもある。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Dee Wagner
Coaching World, October 09, 2018, How Nervous System Science Helps Coaches Understand Disruptive Leadership
https://coachfederation.org/blog/disruptive-leadership

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