カテゴリー別アーカイブ: 国際コーチ連盟(ICF)について What is ICF?

【CoachingWorld】コーチは「問題」の根幹を捕える必要があるか?

クライアントは、しばしば自らに変化をもたらすことを期待してコーチングを求めます。その時、ある領域を「問題」であると自らラベリングし、それに対する解決策をコーチング的なアプローチから得ようとすることがあります。これはコーチに対してカギとなる問題を提示しています:彼らが前に進むために、現在抱えている「問題」をどれだけ掘り起こす必要があるのでしょうか? 別の言い方をすれば、ある人が本当の意味で視野を変え、行動に移していくために、我々コーチは「問題」の根幹を捕える必要があるのでしょうか?

私の体験では、コーチングのクライアントというのはある程度、現在の状況についての掘り起こしを期待していると思います。彼らにとってこの内省的なプロセスは、問題とされる領域の原因となる部分に対して、自らの世界の中で今何が起きているのかを理解し、その根幹を捕えたり、そこに迫ることが出来るものです。間違いなく、コーチの役割の一つはアクティブリスニング的にクライアントに耳を傾けることであり、それにより信頼関係や親密な関係が生まれます。そして、彼らが現在抱えている「問題」をなんとかしようと考える限り、非生産的で堂々巡りな思考に囚われてしまう可能性があるという事実にも、コーチは常に注意していなければなりません。

例えば、あなたの行うコーチング・セッションについて考えてみてください。セッションの中で「問題」の領域についての話を一番大きくとりあげたことはありますか? そこでした質問や質問の順序は、クライアントを上手くサポートし、解決策を見出すことを手助けするどころか、問題をよりもつれさせてはいなかったでしょうか? コーチ・トレーナーとして、私はこうした情景をしばしば見てきました。新人コーチの多くは、人の心を動かすような未来を描くことよりも、問題を特定し解決することにフォーカスしがちなのです。

もちろん人が成長していくために、問題の原因を理解することが必要であるという考えには、理論的な魅力があります。しかし、コーチングでの対話に「問題について話す」というマインドセットで臨むことは、クライアント(そして私たち自身)がストーリーの網に絡め取られてしまう危険性があります。とるにたらない細かなことばかり質問してしまい、問題が何故起きたのか、どうしてこうなってしまったのかということにばかりフォーカスしてしまうという罠に陥ってしまいかねません。こうした話し方は、クライアントをネガティブで不安な状態にさせてしまい、彼らが問題を超えて未来のゴールに向けて視野を広げることを妨げてしまうことを避けられません。

クライアントがポジティブな感情を抱き、カタルシスを開放することも選べる中で、入り組んだ問題についてフォーカスし思索することは、その人が前に進むことを阻んでしまうことにもなり得ます。多くのクライアントは自身が直面している問題についてはすでによく知っているため、問題のみにフォーカスした対話は、彼らの視野を広くすることには繋がりません。逆に、コーチによって投げかけられた質問が挑戦的で、未来の状態を見つけるためのものである程、クライアントが新しいアイデアを創り出す助けになるものです。このプロセスは、彼らにとって自分を変えるきっかけ、あるいは変えずにはいられない動機を作り出すことにも繋がります。

私達はこのような「解決」にフォーカスしたスタイルを用いることにより、クライアントが未来のビジョンを描くのを助け、望む状態と現在の状態との違いを明らかにすることにも役立つことが出来ます。これにより、より高いレベルの当事者意識を感じてもらい、それにより彼らが変化し前に進むためのモチベーションを上げることが出来ます。

とはいえ、問題の根幹を掘り起こす質問を全くしてはいけないということではありません。この質問は、例えば認知行動的なコンテキストでのコーチングにおいて、とても重要になってきます。このアプローチでは、クライアントが物事に適切に対処していくために、現在の状況を理解することが必要です。他にも、過去の挑戦をどう解決したかを明らかにし、次の成功のために活かしたい時などにも有効でしょう。

コーチがこのパラダイムで仕事を出来るようになるためには、いくつかのポイントがあります。一つ目にして最も重要なものとして、優れたコーチは、クライアントがしている話が、前に進むためではない、「問題」についての話なのかどうかを見極めることが出来なくてはいけません。2つ目に、一連の質問を行っていく際、問題について聞く質問が、クライアントのためではなくコーチの好奇心によるものではないかをよく認識しておくことが重要になります。

最後の、そして決定的かもしれないものとして、コーチは、クライアントのサポートのために必要な情報としての問題への理解を手放す必要があります。これを受け入れ、相手の込み入った問題について知らないままクライアントに向き合うことは、最初は非常に勇気のいることでしょう。しかし、そうすることにより、コーチはクライアントの劇的な変化を起こすサポートが行える、よりレベルの高い存在となることが出来るのです。

(c)Smarter Learning Ltd.


著者情報
ジョセフ・グレッチ, ACC
ジョセフ・グレッチは、各国の企業や個人に対してエグゼクティブ、キャリア、ライフ・コーチングを行い、人の可能性を強く信じ、育てている。彼の、一人ひとりを全体的に見ていく手法は彼のコンサルタント会社、Smarter Learning Ltdを支えている。コーチとして、リーダーたちが信頼を勝ち取り、成長し、自身のポテンシャルを使えるようになることを傍で支えている。ジョセフはまた、コーチング業界を育てることにも情熱を注ぎ、ICF認定プログラムのコーチ・トレーナーをすると共に、CIPDやILMの資格も有している。ジョセフについては詳しくは、www.smarter-learning.netへ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Joseph Grech, ACC
Coaching World, June 12, 2018, Should We Get to the Root of a Problem?
https://coachfederation.org/blog/root-of-problem

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】コーチのためのエモーショナル・インテリジェンス(こころの知性)活用法

コーチである皆さんは、エモーショナル・インテリジェンス(EI、こころの知性)の話を長年にわたり耳にしてきたことだと思います。世の中には複数のEIモデルがありますが、私が開発したモデルでは自他の感情に気づくことや情動を管理し行動すること、そして周囲の人と上手に対話をすることを提唱しています。EI能力の高い人は、日常はもとより厳しい状況下でさえも感情のバランスを保つことができます。このような人は、人とのやり取りにおいて言葉では表現されていない感情の動きや様々な力関係を汲み取ることができ、仕事やプライベートな関係でポジティブな人間関係を培うことができます。このような能力は、優れたリーダーやチームメンバーには欠かせない要素です。そういう意味では、親としてあるいは配偶者としても同じことがいえるでしょう。

一方で、EIの乏しい人は人生や仕事において苦労することになります。目標達成を難しくさせることはもちろんのこと、他者を効果的に導くことは困難になるでしょう。具体的には、感情の自己管理能力に欠けた人は、直ぐにカッとなり、特にストレスがかかっている時には相手に向かって暴言を吐くことでしょう。また、共感力に乏しいリーダーは、部下と良い関係性を築くことはできません。すなわち、共感力に欠ける人は、誰しも有意義な人間関係を構築できず悪戦苦闘することになります。

下図は、 ケース・ウェスタン・リザーブ大学ウェザーヘッド・スクール・オブ・マネジメントのリチャード・ボヤツィス教授(米国Case Western Reserve University’s Weatherhead School of Management・Richard Boyatzis)と共に開発したEIのフレームワーク、「The Emotional and Social Intelligence Leadership Competencies(リーダーに必要なコンピテンシー:情動知性と社会的知性)」です。このモデルには、4つの領域に則し12のコンピテンシー(能力)が含まれています。これは誰にでも身につけることのできる能力です。この12のコンピテンシー(能力)こそが、優れたリーダーとそうでないリーダーの違いを生み出します。

また、EIはIQ(知能指数)とは異なり簡単に点数で表せるものではありません。包括的なEIプロフアイルを作成するために12のコンピテンシーを横断的に評価しますが、EIを把握するには360度評価の実施が最も適した方法です。本人の自己像とその人と共に働く人々がもつイメージの両面を捉えた360度評価は、多面性のあるEIの評価に適しています。仕事以外にも、時に家族や友人の評価が重要な役割を果たすこともあります。

コーチを職業としていれば、よく知る人からのフィードバックこそが自己の認識と他者から見た自分のギャップを埋めてくれることは理解できるはずです。フィードバックをもらうことによって、自分の強みを特定すると同時に自分の能力や活動の限界を知ることができます。そうすることで、EIを更に鍛えるためにできる事が見えてくるでしょう。自分の強みや限界を正確に理解することは、EIを開発する原動力になります。要するにEIは、不変なものではなく、開発できる能力なのです。

先ずは自分から

先ずは自分のコンピテンシーを育むことから始めることで、クライアントのEIを高めるコーチングが上手くいでしょう。優れたコーチは、自らのEI能力を常に発揮しています。具体的には、難しい状況でも感情のバランスをとり平常心を保っています。また、共感力を用いクライアントの意見や見解を理解し、その人に相応しい的を得たフィードバックをします。優れたコーチは、クライアントが自身の成長につながる可能性に気づけるよう心から支援します。これこそが上図のコンピテンシーにある「コーチとメンター」に欠かせない能力です。

EIの開発に役立つ、簡単にできる練習があります。それは、内省をすることです。ジャーナリング等により内省することで、自分の情動やそれが自分に与える影響に更に気づくことができるようになります。このことは、自己認識や自己管理を含む複数のコンピテンシーにわたり極めて重要です。また、マインドフル瞑想で脳を鍛えることもできます。マインドフル瞑想は、全てのコンピテンシーの基盤となる集中力を養い思考や心の乱れを軽減し、いずれのコンピテンシーを高めるための貴重な資源にもなります。その場、その瞬間にしっかり意識を向けることで、もっと“その場に存在する”ことができ、より良いリーダー、あるいは聴き手になれるでしょう。

コーチングにEIを取り入れ探求する

360度評価やEIを測定するツールは沢山あります。私のお薦めは、360度評価の中でも私とリチャード・ボヤツィス教授がコーン・フェリー社(Korn Ferry Hay Group)と共同開発したESCI-360(Emotional and Social Competency Inventory)です。ESCI-360は、リーダーに必要なEIコンピテンシーの全てを評価できるように開発されたものです。評価結果で出た自己像と他者からのイメージのギャップは、「活用できる情報」として扱い、クライアント自身がどのような成長を望むのかを探求することに役立てることができます。クライアントの目標達成のために役立つコンピテンシーを培うきっかけになることが理想です。

例をあげて見ていきましょう。リーダーの役割を担うにあたり、「セルフアウェアネス(自己認識)」と「セルフマネジメント(自己管理)」の領域は優れているが、「ソーシャルアウェアネス(社会認識)」と「リレーションシップマネジメント(人間関係の管理)」の能力を課題とするクライアントがいるとします。このようなケースは、チームや部下をもたない一般社員として優秀だった人が、チームや部署を任される立場に昇進した場合に多く見られます。それまでうまくいっていた個人の強みは、新しいリーダーの役割では全く通用せず四苦八苦するのです。ソフトウェア開発者として常にトップを走っていた人であっても、優れたチームリーダーになるには「インフルエンス(影響力)」や「コンフリクトマネジメント(衝突・対立の管理)」といったコンピテンシーを身につけることが必要となります。

コーチとしては、アドバイスをするよりも、クライアントが自己認識力を培い、自分の情動、習慣や癖、原動力に気づけるよう支援しましょう。クライアントの思考や行動のパターンに気づいたら、それを共有し親身になって何がそうさせているのか理解できるよう支援してください。いつもの悪い習慣に戻ってしまい、うまく行かない時に失敗してしまったと捉えているクライアントに対し、その出来事を成長のきっかけに転換しクライアントが再び軌道に乗れるよう支援するのです。

EIの基盤である「エモーショナル・セルフアウェアネス(情動の自己認識)」から取り組んでみてください。クライアントは、自分の原動力となる情動と逆に失速させる情動に気づくことでしょう。それによって情動と自分の価値観やビジョンを調和させることができるようになります。クライアントが成長の元となるモチベーションを保ち続けられるかどうかは、自身が意義目的や価値観を発見または再認識できるよう支援するコーチの能力にかかっています。優れたコーチと相手構わずワンパターンのコーチングをするコーチとの違いはここにあります。優秀なコーチは、クライアントと協同し信頼関係を築き、クライアントが目標を実現するために必要なコンピテンシーを習得できるよう支援します。そうすれば、クライアントは自ずと一層の努力をすることでしょう。

EIを開発する上で、有能なコーチが関わることほど効果的な方法はないと思います。目標設定だけではなく、クライアントへ質の高い適切なフィードバックをし、支援できるコーチの能力は、クライアントが長期的な変化を起こし続ける上で根本的な違いを生むことでしょう。優れたコーチからコーチングを受けたクライアントは、たとえコーチング関係が終了した後もEIを活用し、セルフコーチング力にアクセスし自らの道を選択して行くことでしょう。


著者情報
ダニエル・ゴールマン
ダニエル・ゴールマン
心理学者、ベストセラー作家
代表著書『EQ こころの知能指数』(Emotional Intelligence: Why it Can Matter More than IQ
最新の活動:EIの基礎能力に焦点をおいたプログラムをリリース、EIコーチ認定(Emotional Intelligence Coaching Certification)の発行をしている。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Daniel Goleman
Coaching World, September 10, 2018, How a Coach Works with Emotional Intelligence
https://coachfederation.org/blog/work-with-emotional-intelligence

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【CoachingWorld】座りっぱなしは脳に悪影響を与える

もしあなたが一日の大半を座って過ごしているなら、もっとイスやソファーから離れることを習慣にしたいと思うこともあるのではないでしょうか。UCLAの研究者達は、記憶に大きく関係する脳の部位と、座っている時間の関係性をつきとめました。

研究者は45歳~75歳の35名の被験者に、ここ1週間でどれだけ身体を使った行動をしていたかと、毎日何時間程度座って過ごしているかを質問しました。同時に、高解像度MRIで、脳の内側側頭葉(medial temporal lobe)、新しい情報を記憶する部位を調べました。

研究者はこの被験者たちの情報から、長く座っている人ほど、部位が細くなっていることに気が付きました。内側側頭葉のやせ細りは、中年期から老年期において、認識の衰えと痴呆の前兆となりえます。

この研究では、被験者に週どれだけの休息を得ているかを聞いてはいませんが、研究者達は座っている時間を減らすことが、アルツハイマーのリスクを抱える人にとって脳の健康増進に繋がると指摘しています。

これまでも長時間座っていることは、心臓病や糖尿病、うつ病、肥満などのリスクを上げることが報告されてきました。心と身体両方のために、1時間毎に5分程度、立ち上がって少し歩きましょう。もし机で仕事をしているなら、立って作業が出来るスタンディング・デスクの導入を検討しても良いでしょう。もしあなたが電話やオンラインでコーチングをしているなら、セッション中に(クライアントの気が散らない程度に)歩くのもありかもしれません。小さくてもこうした変化は、あなたの心と健康のメンテナンスに役立つことでしょう。


著者情報
リサ・カニンガム
リサ・カニンガムはICFのソーシャルメディアの専門家。フリーランスのライターや、ソーシャルメディアのコンサルタントとしても活動している。チャタム・ユニバーシティでのウェブ・コンテンツ・デブロプメントにフォーカスしたプロフェッショナルライティングの修士号と、ピッツバーグ・ユニバーシティでのイングリッシュライティングとコミュニケーションでの学士号を持つ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, June 12 2018, Too Much Sitting is Bad for Your Brain
https://coachfederation.org/blog/too-much-sitting-is-bad-for-your-brain

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【CoachingWorld】アサーションと協力で利害対立を解決に導く5つのTKIモデル

TKI(トーマス – キルマン コンフリクト・モード検査)は、過去40年以上に渡って活用されている「コンフリクト・マネジメント」のツールで、他人との衝突や対立(コンフリクト)の建設的な解決を目指すクライアントをサポートするのに最適なツールです。
ケネス・W・トーマス博士およびラルフ・H・キルマン博士が考案したこのTKIは、「アサーション(自分の主張をどれだけ通すか)」と「協調(相手の意向にどれだけ配慮したか)」という2つの軸から課題解決の行動を分類するツールです。
TKIは、この2つの行動軸から、利害対立を解決する5つのモードを以下のように定義しています。

  • 強制 (相手に協力せず、自分の意見を主張する):議論や討論に勝つことを優先して、自分の意見を押し通す
  • 協調 (自己主張をしつつ、相手の意向も尊重する): win-winの関係構築を目指し、協力して課題解決を行う
  • 妥協(双方が納得できる意見を取り入れる):双方が譲歩して妥協点を見つけ、協力して課題解決を行う
  • 回避 (自己主張もしないが、相手の意向にも同意しない):衝突・対立そのものに関わらない
  • 服従 (自己主張せず、相手の意向に従う):相手の怒りを鎮めたり、屈服する

すべての人が、この5つの利害対立の解決モードを使い分ける能力を持っているはずですが、現実には、多くの人が自分が使いやすい1~3つのモードに偏り、効果的な使い分けを行っていないように思えます。コンフリクト・マネジメントのコーチングでは、クライアントが自身の行動の悪循環を断ち切って、これまでに使ったことがないモードに挑戦したり、状況に即した効果的なモード選択を行えるようにサポートします。具体的には、クライアントがいつも選択しがちな(または使ったことがない)TKIモードについて自己認識を高めるところから始めます。一旦立ち止まって冷静になったり、状況を分析し、最適なモードを意識的に選択する方法について考えることなどが、コーチングの主なテーマとなります。コーチングを通じてクライアントがワンパターンな条件反射的行動を脱し、より効果的な課題解決力を身に着けることにつながるでしょう。
コーチングセッションでは、TKIの5つの課題解決モードが、利害対立のどの場面において効果的(または逆効果)かクライアントとディスカッションを行います。これは個人セッション、グループセッションを問わず使えます。職場や家庭での実例を取り上げつつ、以下の基本的な質問を使ってクライアントの気づきをうながしていきましょう。

TKI 効果的なコーチングの質問「5つのモードは、利害対立解決のどのような場面で役立ちましたか?またはどんな場合に役立ちそうですか?」 効果的なコーチングの質問「過去にいずれかのモードを使った時、どのようなリスクを感じましたか?またはどんなリスクが想定できるでしょうか?」
強制 結果を左右するような極めて重要、かつ緊急性の高い決断を行う時、またはその決断を短期間に行う必要がある場合 時間に余裕がある時や重要性がそれほど高くない決断にこのモードを使うと、他人からは独裁的なマネージャー/支配的なチームメンバーだと思われ、関係性が悪化する恐れがある
協調 ある状況について詳細なディスカッションを行う時間的な余裕があり、かつ関係者全員がwin-winの関係の構築をする意志がある場合 時間に制約がある場合、または関係者の一部に協調する意志がない場合にうまくいかない恐れがある
妥協 ある状況についてのディスカッションにある程度時間をかけることができ、かつ関係者全員が双方が納得できる解決方法を見出す意志がある場合 時間に制約がある場合、または関係者の一部に妥協する意志がない場合にうまくいかない恐れがある
回避 膠着状態が続き、議論を回避して小休止することが望ましい時。または精神的・身体的な幸福などが脅かされている場合 個人の幸福が脅かされているような状況ではなく、時間に制約がある中で重要な決断を行う必要がある場合にうまくいかない恐れがある
服従 衝突・対立や自己主張を通じて得られる成果に、それほど大きな重要性や意義がない場合 このモードのみを繰り返し使うと、他者に利用される恐れがある

通常、「協調」や「妥協」が最適なモードだと思われがちですが、TKIコーチングでは、それぞれのモードを状況に応じて適切に使い分けることこそが大切だという気づきが生まれます。
クライアントは、一つのモードだけを繰り返し使っていても、様々なタイプの衝突や対立を解決することはできないことや、これまでに使ったことがないモードに挑戦することが自己成長につながることに気づき、感謝します。
また、5つのモードを使い分け、状況に応じた適切なアサーションや協力的な行動を行うことの価値やメリット、そしてクライアント自身の現在の能力に気づくでしょう。
すべての人々がTKIを活用して衝突や対立を建設的に解決することができたとしたら、素晴らしい世の中になると思いませんか?


著者情報
キャロリン・ハミルトン・クービーCEC, PCC
キャロリン・ハミルトン・クービーCEC, PCCは、企業研修のトレーナーおよび講演家で、エネルギッシュかつ穏やかな人柄で知られる。カナダ・オンタリオ州のキングストンで、エグゼクティブ・コーチング「Morningstar Centre for Engagement」を運営する。ロイヤル・ローズ大学でエグゼクティブ・コーチングの認定資格、聖フランシスコ・ザビエル大学で成人教育の認定資格、セント・ローレンス・カレッジで人事管理の資格を取得。神経言語プログラミング(NLP)とMBTIの認定プラクティショナー、「Coaching Out of the Box」認定トレーナー、「World Business Executive Coach Summit」オフィシャル・パートナー、ICFのメンターコーチ、コーチング・コンピテンシーの第一人者など、多彩な顔を持つ。詳細は、公式ホームページ(http://mstar.ca)またはLinkedInをご覧ください。


【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Carolyn Hamilton-Kuby, CEC, PCC
Coaching World, March 5 2018, 5 Ways to Leverage Assertiveness and Cooperativeness in Conflict Situations Using TKI
https://coachfederation.org/conflict-situations

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【CoachingWorld】リーダーの気づき:あなたのユーモアは従業員に影響を与える

職場でリーダーが何を言い、何をするかは、従業員に影響を与える可能性があります。

たとえば、職場でのユーモアは、従業員へのモチベーションアップや勇気づけの手段となり得ますが、セントルイスのワシントン大学の調査によると、上司のユーモアはルールを破ってもかまわない、という風潮を作り出す可能性があります。

「良性の違反理論」に則ったジョークは、事務用品を盗んだり、仲間を侮辱したり、報告書を誇張したりするなど、他の違反(侵害)もやってよいことだと、その意に反して、従業員に伝わってしまうことがあります。

アカデミーオブマネジメントジャーナルに掲載された彼らの論文では、研究者は「良性の違反理論」の例として、次のようなジョークをあげています。
「恐竜とまともな弁護士の共通点は何か?。 それは両方とも絶滅している、ということです。」

あるタイプのユーモアは、この理論によれば、「規範への違反」を引き起こします。

この場合の違反は、まともな弁護士は絶滅している、ということです。

まともな弁護士がもう一人もいない、とは誰も本当には思っていないので、この違反は良性と言えます。

つまり、この理論では、違反と良性であることが同時に起こる必要があるのです。

セントルイスのワシントン大学のオリン・ビジネススクール、組織行動学部のポスドク研究員である、Zhenyu Liaoは「あなたは従業員に何らかの規範を違反して良いと暗に伝えるシグナルを送っている」と言っています。

「リーダーがユーモアを使ってはならない、と言っているわけではありません。

ただ、リーダーは自分のユーモアにもっと注意を払うべきです。

あなたの役割、立場(行動のすべて)は、ここではどんな行動が許容されるのか、ということについてのとても強いシグナルを発信しています。」

また彼らは、200人以上の中国のMBA学生と、200人以上のアメリカの主に銀行員、営業職、技術職の従業員に対する一連の調査から、ある結論を導き出しました。

応用心理学のジャーナルに掲載される別の論文で、Liaoと同僚たちはリーダーが怒りを爆発させたときに何が起こるかを調べました。

ある一定期間、99人のリーダーと140人の部下を対象に、悪罵を受けたり、言ったりした後の行動についての調査を行いました。

研究者たちは「道徳的な勇気」をもつ注意深いリーダーは、憮然としている部下に対し、面白い仕事のわりあてや、キャリア構築の助言を行ったり、より個人的に気にかけたり、仕事のリソースを提供することによって、後で自分の罪悪感を拭い去ろうとしている、と結論づけました。

「あなたがこの種の行動をしていると自分でわかったとき、それはすべきでないことだ、と気づくかもしれません。
それに対し何らかの罪滅ぼしをしたいと思うかもしれません。」とLiaoは言います。

このタイプの行動は、その日の出来事にあるように、リーダーシップスタイルにそれほど根ざしていない、とLiaoは述べています。

上司にとっては良くない一日であったかもしれません。

上司が部下との行動に意識的に注意深くあれば、怒りの爆発を避けることができるし、それゆえ罪滅ぼしの行動をとることもないでしょう。


著者情報
Lisa Cunningham
Lisa Cunninghamは、ICFのソーシャルメディアスペシャリストであり、フリーランスの作家、ソーシャルメディアのコンサルタントです。
彼女はチャタム大学で、Webコンテンツ開発に関する執筆で修士号を、ピッツバーグ大学では英語ライティングとコミュニケーションで学士号を得ています。


【翻訳 畑さち子】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, July 3 2017, Leaders Be Aware:Your Humor Influences Employees
https://coachfederation.org/blog/leaders-be-aware-your-humor-influences-employees

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【CoachingWorld】神経科学からモチベーションを理解する:クライアントは恐れているのか、またはシャットダウンしているのか?

人が恐れを感じ、励ましを必要としている状態なのか、または事実上シャットダウン状態(神経学的には限界の状態)に陥っているのか。神経学はこの両者の違いを認識するために役立ちます。クライアントが無力と感じる時、それは選択肢がほとんど無い状態でしょうか?あるいは追い詰められた状態でしょうか?

トラウマの専門家であり、“Waking the Tiger, Trauma and Memory and In an Unspoken Voice”の著者であるピーター・レバイン(Peter Levine)氏は、動物が生命の危機にさらされるあらゆる場面での動物的反応を長年研究してきました。全ての哺乳類は、生命の危険を察知すると生理的な反応を起こすものですが、動物は私たち人間よりもそれに対応する力に優れています。私たちは、思考する能力に優れているが故に必要以上に考え過ぎ、やがてバーンアウトしてしまうのです。

追いつめられると、闘うことや逃げることの術を失います。つまり、神経学でいうとシャットダウンの状態です。身体がシャットダウンするこの状態は、生物学的にはトカゲから進化する過程で引き継がれたもの(なごり)です。トカゲは、身をシャットダウンすることで酸素の無駄な消費をおさえています。哺乳類にとって、酸素がなければ血液がつくられません。よって、生命の危機に直面した時を踏まえ、シャットダウン機能を備えておく必要があるのです。

クライアントが“狸寝入り”をしている可能性は?

哺乳動物でシャットダウンの名人といえば、フクロネズミです。その他哺乳動物同様、フクロネズミは捕食者を察知するとシャットダウンし死んだふりをします。捕食者は、“死んだふり”をしているフクロネズミには興味を失い他の獲物を探すでしょう。分からない振りをすることを、私たちは“狸寝入りする”と表現することがあります。

人間がシャットダウンの状態に陥ると、頭が真っ白になり自分のことを「愚か」に思うかもしれません。「私には太刀打ちする力はない」「これ以上やっても意味がない」「私は愚かだな」のような否定的な独り言で更にシャットダウンすることもあるでしょう。

クライアントは、このような独り言を心に秘めているかもしれません。
クライアントがなかなか繋がりを感じられず、コーチングの関係性から距離を置く場合、否定的な独り言、またはシャットダウンしている可能性があります。シャットダウンの状態を察知する力とそれに対応する力がないと、コーチ自身がフラストレーションや限界を感じ始めるでしょう。

コーチは、どうしたらシャットダウン状態と、リスクに対し臆病になっていて励ましを必要としている状態を見分けることができるのか?

見分けるためには、モチベーションの低いクライアントとのやり取りの中でコーチは自らの身体反応に気づくことが大切です。この身体反応を認識する力は、ニュアンスをくみ取る際に役立ちます。

通常、クライアントに自信が不足している場合、コーチは支援したいと願うものです。クライアントの求めに応じ励ますことができると、コーチは恐れを抱いているクライアントの役に立ったと感じるでしょう。
一方で、クライアントのシャットダウン状態に対し、コーチ自身が不安になる、または攻撃的な感情を抱くこともあるでしょう。しかしながら、コーチ自身がこのような自らの感情を注意深く意識せずにいると、押し寄せる自らのシャットダウン状態に気づくこともないでしょう。
コーチのシャットダウンは、混乱やバーンアウトという形で現れる可能性があります。

コーチの辛抱する力に影響を及ぼすクライアント

クライアントがシャットダウン状態に陥ると、コーチは不安になり辛抱することが難しくなることがあります。シャットダウンした状態は、危険のサインであり、コーチがクライアントの切羽詰まった状態に巻き込まれることもあります。それにより、クライアントに対し気が短くなり辛抱強く接することができなくなります。

生命の危機にさらされた時に起こる、“闘争または逃走”反応はシャットダウンよりも良い選択肢なのです。闘争または逃走できれば、シャットダウンするよりも生き延びる可能性が高まるのです。シャットダウンはやがて死に至るのです。コーチがシャットダウン状態にあるクライアントと関わる場合に、悩みのあるクライアントをその状態から無意識に救い出そうとして、自らが闘争または逃走モードに陥ってしまうかもしれません。

シャットダウン状態にあるクライアントは、自分自身だけではなく私たちコーチにさえも攻撃的になることもあります。レバイン氏は、人は闘争または逃走モードになることでシャットダウンの状態から抜け出す術として身体が覚えていることを教えてくれています。悶々とした状態からひとたび目覚める時、私たちは“勢いよく”その状態から抜け出します。フクロネズミが死んだふりをして捕食者から身を守るように、闘争または逃走することは素早く身を守る術といえます。
コーチがモチベーションのなかなか上がらないクライアントの中で起こっていることを理解し、クライアント自身の神経系反応について気づかせることは、クライアントが無力さから抜け出すための大きな一歩です。クライアントのシャットダウン状態に気づくことが私たちコーチの“闘争・逃走・シャットダウン”モードに陥ることの防止になるでしょう。

教育が啓発をもたらす

クライアントの神経系が柔軟に機能している場合、クライアントを励ますことは恐れの克服に役立ちます。コーチが、クライアントのシャットダウン状態に気づくことができれば、励ますことだけに頼る以上にクライアントを教育出来る事となるのです。

全ての哺乳類共通に機能する神経系の働きについてクライアントを教育することは、霧を晴らし悶々とした状態から抜け出した時の興奮を静めることに役立ちます。生命の危機を感じるほどの出来事に対し、身体で起こることを説明することで、クライアントはそれが普通であることを知り安心するでしょう。再びクライアントが道筋を立て、成功に向け歩み出す自由をみつける助けになるコーチが、理解のあるコーチと言えるでしょう。


著者情報
ディー・ワグナー
ディー・ワグナー(LPC, BC-DMT)はカウンセラーであり、米国アトランタにてダンス・ムーブメント・セラピストとして25年の経験があります。2017年ICFコンバージでは神経系機能をテーマに発表し、ICFブログでもお馴染みの存在です。その他記事を以下に掲載しています:American Journal of Dance Therapy; Body, Movement and Dance in Psychotherapy; Voices: the Art and Science of Psychotherapy (American Academy of Psychotherapists); Elephant Journal and Asana International Yoga Journal.
ディー・ワグナーは、ワークブックNaked Online: A DoZen Ways to Grow from Internet Datingの共同制作者でもあります。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Dee Wagner
Coaching World, April 16, 2018, Using Nervous System Science to Understand Motivation: Are Clients Fearful or Shutdown?
https://coachfederation.org/blog/using-nervous-system-science-understand-motivation-clients-fearful-shutdown

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【CoachingWorld】健全なコーチング・プレゼンスの構築

ICF認定資格のPCC又はMCCのコーチはもちろん、同資格を取得予定のコーチであれば、コーチングにおいて「コーチをする(do)」のではなく「コーチで在る(be)」ことの大切さを心得ているはずです。

コーチはそれぞれのクライアントの異なった個性や価値観・世界観に寄り添えるだけの注意深さをもつことを求められます。この注意深さをもった状態を、「コーチング・プレゼンス」と言います。

コーチング・プレゼンスとは、言語的であれ非言語的であれクライアントが言わんとしていることに注意を注げるかということです。

プレゼンスが欠如していると、クライアントの話に深く耳を傾けることはできませんし、
クライアントとパートナーとなることも、パワフルで広がりのある問いかけをすることもできません。傾聴、パートナーシップ、オープン質問の欠如は、本来のコーチング・カンバセーション(対話)からかけ離れたコーチングを招くと言っても過言ではないでしょう。

コーチがひとたびプレゼンスの重要性に気づき始めると、「健全なプレゼンスを手に入れるにはどうしたらいいだろう?」と絶え間なく思うものです。

意図が注意深さを生む

コーチに意図があれば、それが心の眼となり、着目しなければならない点へ導いてくれます。
つまり、コーチの興味のあることへ関心の注意が向くのか、あるいはクライアントの言わんとしている事を受け取ることに注意を向けることができるのか、はコーチの意図次第でどちらか一方に傾きます。

例えでみてみましょう。
新人コーチのボブはセッションを始めるにあたり、次のような意図をもって臨みます: 「クライアントの置かれている状況を解決するためにできることは何か?」
このような意図は、限定的な聴き方をまねき、ボブは解決策とみなすものだけに注意がはたらくスペースしか持つことができないでしょう。

ボブよりもコーチ歴の長いクララの場合はどうでしょう。
彼女は、「クライアントが置かれている状況を、自らの力で乗り越え成長するためには?」という意図をもってセッションに臨みます。このような意図のはたらきによって、クララは制限することなくクライアントへ注意を注ぐことができ、こうしてクライアントは自身の知性に気づき、置かれている状況を乗り越えるに必要なスペースを得ることができるのです。

無理にでもなく、また理解したふりをすることもなく、本当に心からこのような意図をもつには、コーチは次の二つの素質を発達させ深めていくことが必要です:

  • 信じること:コーチとしてキャリアを始めたころ、私は先ず自分自身を信じることを学び、経験を積む中でそれに加えてコーチングのプロセスを信じることを学びました。私は自分を信じる力を向上させ、クライアントの知性を重んじることができてはじめて驚くようなセッションを体験するようになりました。クライアントの人生においては本人こそが誰よりも賢い、ということを心に留め、コーチはクライアントから教えてもらおう、くらいの気持ちを持つことです。
  • 好奇心をもつこと:コーチからクライアントへの最高のプレゼントは、純真無垢な子供のような高い好奇心だと身をもって学びました。コーチが好奇心をもってクライアントの世界観を理解することで、彼ら自身が物語を変えることのできる主人公だと感じさせることができます。純真な好奇心とクライアントの知性を信じ切る心が融合するたびに、現状を乗り越え成長する力をクライアントへ与えることになります。

ソマティック・シンキング (Somatic Thinking)が限りない注意深さを生む

ソマティック・シンキングは、コーチが自らの身体感覚に気づき、それをコーチングに活用するものです。私は、長年の経験の中でこの考えにたどり着きました。
みなさんもご自身の経験や数々の研究発表から既にご存知かもしれませんが、言語による表現は、クライアントが伝えたいことのわずか7%しか占めていません。残りの93%は身体的なパターン、身体感覚から現れる(ソマティック)な振る舞い、エネルギーの移り変わりや情動で表現されます。つまり、クライアントから次々に現れる、膨大な非言語的要素によって表現されています。このような多量な情報をコーチがどのように処理するか、更に深く理解するためにボブとクララのケースに戻ってみてみましょう。

ボブの意図がはたらくことで、彼の認知プロセスは下記のような流れをたどると考えられでしょう:

  1. 感じ取る: 言葉や声のトーンを限定的に聴き、視覚から入るシグナルにある程度気づく。
  2. 思考がはたらく: 「解決の糸口は?」「クライアントを助けなければ」「自分は良いコーチングをしているのだろうか?」のような次から次に迫る思考に気をとられる。
  3. 実感する:ボブが理解したつもりになっている内容、コーチとしての責任感、そして自分に対する疑念をもちながらも解決策に至ったかのような実感を得る。

このような状況下では、多くの場合コーチはいっぱいいっぱいの状態になり、頭が真っ白。これではPCCのコーチングンスキルレベルからは程遠いものになるでしょう。

一方、クララはどうでしょう。クララがもつ意図と彼女が自身の身体感覚に気づくことで、彼女の認知プロセスはソマティック・シンキングへ移行します。ソマティック・シンキングにより感覚と情動が融合し、クライアントに対し限りなく注意深くなれます。

  1. 感じ取る:クライアントの言葉・視覚から入るシグナル・声のトーン・身体的パターン・エネルギーの移り変わりやそれ以上のものをクララは全身で聴く。
  2. 実感する:クライントから伝わり感じ取ったものがクララへ響き情動が湧く。
  3. 思考がはたらく:クララ自身が感じ取ったものや抱いた感覚に対し、クライアントがどのように受け取るか好奇心をよせる。

クライアントから伝わるものをしっかり感じ取りながらコーチが自身の情動に気づき、そのことをオープン質問や見聞きした内容と合わせ共有することがソマティック・シンキングの本質です。このプロセスは、正しく意図を持ったうえで高めていけば健全なプレゼンスをもたらし、無理のないコーチングセッションが実現され、コーチングスキルをMCCレベル、またはそれ以上へ押し上げるでしょう。


著者情報
セイマー・ハッサン、MCC
セイマー・ハッサン(MCC)は、多言語を扱うエジプト系イタリア人。彼の仕事や人生は、4大陸・3言語に及ぶ文化、習慣、信条に影響を受けている。
セイマーは、15年に渡り個人やリーダーの能力開発に取り組み、結束力の高いチーム作りとコーチ・メンターを育てている。人間の可能性を広げるセオリーを熱心に学び、30年間武道に打ち込む中で、心と身体をつなげレバレッジすることが目覚ましい変化を生む最短かつ最もパワフルな方法であることに気づく。身体感覚をコーチングやリーダーシップに活用するコーチング・メソッド、「ソマティック・シンキング」はこの気づきから生まれた。詳しくは、www.KunCoaching.com


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Samer Hassan, MCC
Coaching World, April 3 2018, Building a Robust Presence
https://coachfederation.org/blog/building-robust-presence

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】健康・幸せ・生産的な自分を手に入れるための7つの方法

クライアントが、自分を労わることの大切さに気づいた瞬間を見守ったことはありますか? または、あなた自身がその大切さに気づいていますか? 自分を大切にすることは、コーチとして、人間としての成長につながるだけでなく、本当の自分自身と対話する方法でもあります。以下の7つの習慣を実践し、時に自分自身を慈しんであげましょう。

1) たまにはNoと言ってみる

みんなを助けたいコーチにとって、Noと言うのは難しいもの。新しいビジネスのチャンスやクライアントの依頼を断るのは、金銭的な損失への恐れにもつながります。それでも、クライアントや他の誰もと同じように、あなた自身のワークライフバランスも大切だということを忘れないでください。忙しくてもう無理!という気持ちになってしまった時は、一週間に一度でもいいのでNoと言ってみてください。初めのうちは難しく感じられるかもしれませんが、次第に心がリフレッシュされるのを感じられるようになるはずです。
まだ確信が持てないあなたは、「成功者と真の成功者の違いは、真の成功者はあらゆることにNoと言っていることです」という、巨額の富を築いたウォーレン・バフェット氏の言葉を胸に刻みましょう。

2) 仕事場をすっきり整頓する

最近、創造性や生産性が失われていると感じるなら、仕事場を片付けて整理してみましょう。達成感やポジティブなエネルギーが心に湧いてくるはずです。ゴミや不要な物を処分することには、あなた自身も気づかないうちに心に溜まっていたストレスや悩み事を軽減する効果があります。どこかにあるはずなのに見つからない情報や、紛失してしまった物も、思いがけず見つかるかもしれません。すっきりと整頓した仕事場からは新しい環境へのポジティブなエネルギーが生まれ、創造性が心に溢れ出すのが感じられるでしょう。

3) “ポジティブ”メモを活用する

心にネガティブな感情が溜まっていると、ポジティブに考えることは難しいもの。ポジティブな気持ちになれる言葉や名言を目につきやすいところに置き、心をよりよい状態に保つ工夫をしましょう。ポジティブな気持ちになれる言葉を書いたメモや、誰かからかけられてうれしかった言葉をオフィスなどの目につくところに飾るなどがその一例です。私自身は、雑誌から切り取ったり、パソコンから印刷したやる気の出る名言などを仕事場に貼っています。付箋に手書きで書きとめたメモなども活用しています。大好きな名言を目につくところにいくつか貼るという簡単な方法を実践するだけで、ポジティブな気持ちが湧いてくるのが感じ取れるでしょう。

4) 癒しグッズを活用する

決まった場所に心が癒されるグッズを準備しておいたら、必要な時にさっと取り出して手軽に癒されることができます。下記の例を参考に、オリジナルの癒しグッズを用意しましょう。

  • ぬいぐるみ
  • クレヨンや色鉛筆、マーカーなどを使った塗り絵セット
  • エッセンシャルオイルなどのアロマグッズ
  • ヨガマット
  • 見ると笑顔になれる写真

5) 外に出かける

アメリカの思想家、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、「ゆっくりと流れる安息の時間や自然の静けさが、すべての悩みや仕事を忘れさせてくれることがある」と言っています。外に出かけ、歩き、自然と触れ合うことは、ストレスや心配事、憂鬱な気持ちを軽減し、生産性や創造性を高め、心身にポジティブな影響を与えるとされています。

6) SNSをお休みしてみる

時に自尊心を傷つけられたり、メンタルにも悪影響があると言われることもあるSNS。Facebookも、よりポジティブな内容のニュースフィードが表示されるアルゴリズムへの変更を先日発表しています。たまにはSNSをお休みし、ポジティブな気持ちになることをしてみませんか? 一日に30分だったとしても、大きな効果をもたらすでしょう。エクササイズをしたり、Netflixで映画を見たり、本記事の7つの方法を実践してみるのもいいですね。心だけでなく、目を休めることにもつながります。

7) 感謝することを習慣化する

時にはうまくいかない日々が続き、やりきれない気持ちになることもあるでしょう。そんな時には、うまくいったことや感謝すべきことを思い出しながら寝る前に一日を振り返り、そのうち最低3つをメモに書き出しておきます。私の友人は、日記代わりに「感謝の缶」を作り、その日に起きたよかった事を毎日最低1つメモに書き、年毎の缶に貯めています。ネガティブな気持ちになったら缶を開けてメモを読み返し、自分の人生がいかに感謝すべき出来事に満ちているか思い出しているのだそうです。また、年末には365枚(またはそれを超えることも)のメモを読み返し、一年を振り返っているそうです。2年前にこれを始めて以来、心身ともに健やかになれたと実感しているそうです。

皆さんは、どんな方法で自分を大切にしていますか? ぜひ、で教えてください!


著者情報
リサ・カニンガム
リサ・カニンガムリサはICFのソーシャルメディアスペシャリストであり、フリーライター、ソーシャルメディアコンサルタントでもある。チャタム・ユニバーシティでウェブのコンテンツの発展についてのプロフェッショナル・ライティングで修士号を取得、ユニバーシティ・オブ・ピッツバーグでイングリッシュ・ライティング&コミュニケーションで学士号を取得している。


【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, July 3 2017, 7 Self-Care Habits that will Improve Your Health, Happiness and Productivity
https://coachfederation.org/blog/7-self-care-habits

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】近年増加する行きすぎた「完璧主義」について

若者の「完璧主義」が少なくとも80年代ごろから増え続けていると、米国心理学協会(American Psycological Association)ジャーナル、心理学公報(Psycological Bulletin)で発表された研究で報告されました。この完璧志向は、彼らのメンタルヘルスにとってマイナスに働きます。

ユニバーシティ・オブ・バスのトーマス・カラン博士と、ヨーク・セント・ジョン・ユニバーシティのアンドリュー・ヒル博士は、1989年から2016年にかけて、アメリカ人、カナダ人、イギリス人の大学生41,641人から多次元的な完璧主義基準を満たした164のサンプルを分析しました。

彼らは3つのタイプの完璧主義に分けられます。自己に向いたもの、もしくは全てに置いて完璧であろうとする欲求があるタイプ。社会的な規範に向いたもの、もしくは他者から過大な期待を受けているタイプ。そして、他者へ向いたもの、他者に非現実的な期待を課すタイプです。特に最近の学生達は、前の世代に比べて3つ全てのタイプに対し明らかに高いスコアを示していることに博士達は気づきました。その増加率は、自己志向性タイプが10%、社会的規範タイプが33%、他者志向性タイプが16%に上ります。

この完璧主義の増加は、良い教育を受け高い成績を得るためのプレッシャーや、お金を稼ぐため、高度に成功したキャリアという高遠なゴールなどを含めた、複数の要因があるとカランは認識しています。その上で、これらの要因は、大学が促進している社会的、経済的優位を得るための学生間の競争、それによる実力主義の向上を示しているとしています。

「実力主義は、若者たちが現代生活の中で何かについて努力し、実行し、成し遂げるための強い動機付けとして働きます。」とカランは言います。「それに対し、若者たちは年々より非現実的なまでの教育、あるいはプロフェッショナルとしての期待を自らに課すことで応えています。結果として、ミレニアル世代で完璧主義傾向は増しているのです。」

では、彼らの期待はどれだけ非現実的なのでしょうか? 2008では高校生三年生の80%が大学の学位取得を期待されています。これは、1976年には50%だったものです。しかし、その期待は必ずしも実現できるものではありません。大学の学位取得をしたい高校三年生と実際にそれを実現できない若者の数のギャップは、1976年から2000年の間に2倍になり、その後も増え続けています。

ソーシャルメディアの利用も、若者の完璧への欲求に作用しています。データは、SNSが若い成人たちにとって自分を他者と比べさせ、完璧を目指さなくてはいけないプレッシャーを与えていることを示しています。カランの推察によると、この他者との比較は、しばしば彼ら自身の肉体に対しての不満を生じさせ、社会的な孤立感を生んでいると云います。

「これらの発見が示すのは、大学の近年の世代は、自分や、他者に対して、以前の世代よりもより高い期待感を抱いているということです。」とカランは言っています。「昨今の若者達は、受け継いで行くべき社会のプレッシャーに負けないために他者と競争しており、完璧主義は、安全を感じ、他者と社会的に繋がりを持つために必要なものであると感じています。」

カランとヒルは、完璧主義の増加は、学生達の精神面での健康に影響があると考えています。うつ、不安感、自殺願望などは、10年前より増加していると報告されています。

もしあなたのクライアントが、完璧でならなくてはいけないという思いに囚われているときは、その思いがどこから生じているかを考えてみるよう促してあげましょう。彼らが自らの完璧主義的思考によって何を感じているのか、より健康的な考えを持つにはどうしたら良いかを見つけ出すのをサポートすることが出来るのではないでしょうか。


著者情報
リサ・カニンガム
リサ・カニンガムはICFのソーシャルメディアの専門家。フリーランスのライターや、ソーシャルメディアのコンサルタントとしても活動している。チャタム・ユニバーシティでのウェブコンテンツデブロプメントにフォーカスしたプロフェッショナルライティングの修士号と、ピッツバーグ・ユニバーシティでのイングリッシュライティングとコミュニケーションでの学士号を持つ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, March 22 2018, An Unhealthy Amount of Perfectionism is on the Rise
https://coachfederation.org/blog/perfectionism-rise

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】在ることの作法

クライアントやクライアントになろうとしている人は関心を向けて欲しいし、聴いて欲しいと思っています。そして、クライアントが元々持っている考える力を信じることで、行動へと導かれます。コーチはプレゼンス&コーチング・コミュニケーション(コーチング・スキルを使ってクライアントと共にいること)によるプロセスによってクライアントと共にいます。ICF はコーチングの際にコーチはどうすべきかを示すとても有効なコンピテンシー(能力)のセット(コーチングのコア・コンピテンシー)を作成しました。でもどうすればコーチは、クライアントが内在する自己の力及び創造する能力の可能性を感じることができるような信頼感と一体感の場をファシリテートできるのでしょうか?

コーチとしてのあり方はクライアントにとって人生を描き、設計する白いキャンバスのようなものです。白いキャンバスとしてのあり方を鍛える方法としてリレーショナル・プレゼンスがあります。リレーショナル・プレゼンスは人前で話す恐怖感を解決する為にスピーキング・サークルズ・インターナショナル創始者のリー・グリクステイン氏によって考案されました。リレーショナル・プレゼンスは人前で話す恐怖感の問題を解決するだけでなく、クライアントの思い込みにとらわれることなくクライアントを完全に受け入れ支援する、コーチとして真にクライアントと共にいることができる能力を鍛えることに有効です。

心地よいリレーショナル・プレゼンスの実践は優しい意識とともにゆったり聴く知性の空間における探求活動です。この手法はコーチとして必要な二つのコアになる作法、呼吸法とアイ・ゲイズ(優しい眼差し)を含みます。

呼吸する

呼吸に意識を向ける作法は穏やかで集中した心の状態を得る為に行われる多くの瞑想の真髄です。ところで、人とコミュニケーションする毎に何度位呼吸に意識を向けているでしょうか? 呼吸は直接的に神経系に働きかけ脳幹の活動を落ち着かせることが知られています。呼吸を意識することで、クライアントにも情報を処理する機会を与え、前向きな自己意識への創造を可能にさせます。

オードリー・シーモア(MCC)は、「呼吸は空間を埋めようとするものではなく、クライアントに安心感とひらめきを得る間(ま)を与える。クライアントは呼吸の間を持つことで静寂の空間から何が現れようとしているのかに気づく機会を得る。」と言っています。

倉田隆弘氏(ACC)は、クライアントと向き合った時、呼吸法を次のように使うと言っています。「呼吸と共に訪れる沈黙にとても価値を感じます。深く呼吸をすることでくつろぎと安心を感じ、クライアントに対して心が開いた状態になります。音楽に例えると、コーチングはオーケストラではなくジャズ・セッションのようなもの、それは準備されたシナリオ通りに演奏するのではなく、化学反応のようなものです。コーチングを何年間経験してもセッションの前には不安が訪れます。そんな瞬間に呼吸を意識することで『私は OK、そしてクライアントを受け入れる準備ができている。』と言う状態になることができます。」

呼吸法はクライアントが示す怒り、深い悲しみやシンプルな平穏と言った感情の起伏と共にコーチがいることを支援します。またコーチが呼吸することでクライアントにも呼吸を促し、自分が何を言ってしまったかを受け入れ、そこから動くことができます。

アイ・ゲイズ(優しい眼差し)で繋がる

共にいる事の二つ目の作法はアイ・ゲイズ(優しい眼差し)、視線を合わせることです。コーチングでは対面または、ビデオ会議でアイ・ゲイズが可能です。アイ・ゲイズによって安心感や信頼感を高める作用を持つ社会的結合ホルモンであるオキシトシンが分泌されると言う研究があります。また、ステファン・ポージズ博士は恐怖を与えないアイ・コンタクトによって社会との関わりを持つことを推奨しています。その活動は自然に起きうる攻撃・逃避反応(
戦うか逃げるか反応;火事場の馬鹿力的反応)に対するブレーキの役割を果たし、心拍数を下げ、安心して繋がる気持ちを起こさせます。アイ・ゲイズを使うことでクライアントを招き入れ、クライアントはコーチがありのままの自分を完全に受け入れている状態であることに気づきます。

野田パメラ氏(PCC)は、「私の全身がアイ・ゲイズ(優しい眼差し)になります。それはクライアントへの無条件な受け入れです。全てのクライアントがすることは私に目を向ける事です。そしてクライアントは自分が受け入れられている事を認知することができます。アイ・ゲイズの作法を身に付けることで、たとえ電話を使っていてもあたかもクライアントと対面しているかのようにクライアントを受け入れ続ける事ができるようになりました。」と述べています。

アイ・ゲイズは積極的に繋がろうとすることではありません。むしろ人と人の間の自然な繋がりを受け入れると言うことです。グリクステイン氏は、「我々は脳を再配線することに関与します。私は、幼い頃人に注目される度に萎縮し不安を感じるように脳の神経経路が配線されました。しかし、このリレーショナル・プレゼンスの実践により、人に注目されることで喜びと広がりを感じるようになり、非常にパワフルな神経経路を新たに作ることができました。」と述べています。

リレーショナル・プレゼンスの真髄である呼吸法とアイ・ゲイズの組み合わせはクライアントに抵抗感を持たせる事なく、帰属感と受容感、そして真剣に聴いて貰えたと言う気持ちをもたらします。グリクステイン氏曰く「一人の相手と話していても、部屋全体と話していても、この作法で聴く事に優先順位を置くことができれば、話すペース、考えるペースは聴衆と自然に同期するというシフトが起きる、つまり繋がり、フローを経験するということである。」


著者情報
ティナ・マーテル
ティナ・マーテル氏(M.A.、PCC)は20年以上に渡りクライアント自身や相手とのより良い関係性作りの支援を行ってきました。彼女の書籍「Meaningful Coaching」では、コーチの価値感がICF コア・コンピテンシーを使う時、どう影響するか、そしてコーチの価値感とICF コア・コンピテンシーの相性について焦点が当てられています。マーテル氏はスピーキング・サークルズ®の認定ファシリテーターとして相手と共にいるリレーショナル・プレゼンスを使って人々を支援しています。


【翻訳 倉田 隆弘】
Originally written in English by Tina Mertel
Coaching World, January 5, 2018 A way to be
https://coachfederation.org/a-way-to-be/

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください