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【CoachingWorld】心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、田中チズ氏に翻訳いただきました『心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス』の記事を御紹介します。


心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス
心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス管理職や起業、スピリチュアル・ヒーラーの他、コーチとしての独立など様々なキャリアを経験してきた私が感じるのは、マーケットへの理解だけでなく、情熱や目的意識が起業家としての成功を左右するということです。今この記事を読んでいるあなたも、コーチの仕事に情熱を注ぎ、クライアントのサポートに大きなやりがいを見出しているのではないでしょうか。コーチングとは、理論で勝負する単なるビジネスではなく、いわば心を使って経験を積んでいく使命のようなものです。また、多くのコーチにとって、コーチングとは心のあり方の模索でもあります。金銭的な報酬は目標達成にもちろん必要ですが、情熱的なサポートで意識改革を促し、パートナーとしてクライアントに自信や力を与えることこそがコーチングの本来の目的なのです。

情熱の持ち方を、ビジネススクールで習得することはできません。ソニー創業者の盛田昭夫がもしビジネススクールに行っていたら、ウォークマンの発明はなかったでしょうし、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが大卒だったら、マイクロソフトやアップルはこの世に存在しなかったでしょう。成功している起業家は数学的な市場分析ではなく、ひらめきや情熱、不屈の精神、自分の創造力を信じる力を持っています。彼らには、失敗を繰り返し、挫折から立ち直る強さがあります。それらはすべて自分を信じる強さからくるものです。成功者は、自分を駆り立てる情熱に突き動かされて進むことが圧倒的な成功につながることを知っています。そもそもの動機がお金や権力だったとしても、数々の失敗や成功を経て、彼らはやがて、社会に還元できる確かな何かを手にしていきます。つまり、情熱を心に秘めているかどうかが成長や成功を大きく左右するのです。

コーチとして生きることを選択したあなたは、彼らと同じ成功への変革を遂げつつあります。あなたには人をサポートする情熱があります。あとは、チャンスを活かす長所や強みを、情熱や目的意識と結びつけ、クライアントをサポートする独自のシステムを構築したら、コーチとしての成功はすぐそこにあります。この記事では、私がスピリチュアル・ヒーラーとして活動していた頃、数千名のクライアントと実践した6つのプロセスを紹介します。これは「マインドレス」と呼ばれる瞑想を活用したプロセスで、禅やヨガの概念にもとづいています。結果ではなく過程を重視するテクニックで、意識に働きかけるマインドフルネス法をはるかに超える気づきや行動、発想の変革を促します。まずは自分自身がマスターして、クライアントと実践してみましょう。

ここでは6つのプロセスのうち主要な4つを紹介しています。残りの2つは瞑想を用いた対面でのフォローアップとなるため割愛します。

1. 成功につながるポイント「スイートスポット」を発見する

下図に示す第一のステップは、長所やチャンス、リソースなどを情熱と結びつけ、未来の成功を強く思い描く基盤を作るための4つの要素です。

喜びとワクワク感をリスト化:何かをやり遂げた場面、うれしかった評価、人間関係、人をサポートした時など、大きな喜びが満ち溢れる瞬間を1つめの円にリストアップしましょう。そのリストから、あなたの情熱と目的意識の傾向が浮かびあがってきます。

自分の長所を見つける:2つ目の円には、上記の「喜びが満ち溢れた瞬間」を得るために活かした自分の長所や強みをリストアップしてみましょう。円1と円2が重なる部分は、叶えたい夢と強みとが重なり合う場所です。

どんなチャンスがあるか:情熱と長所の接点にある夢を叶えるために捉えるべきチャンスは何でしょうか。思いつくチャンスを円3にリストアップしてみましょう。

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活用できるリソースは何か:上記で発見したチャンスを成功に結びつけるために必要な学びや研修機会、身につけたいスキル、ビジネス上や個人の人間関係などを円3に整理しておきましょう。

CW201702_bringyourb02

この4つの円の中心点に「スイートスポット」が浮かび上がってきます。それはあなたの情熱や長所が、訪れたチャンスの中で最高の形で活かされ、さらにリソースで補完することによって成功へとつなげることができる最強のポイントとなるでしょう。

2. 「65バック・ビジョン」で25年後の未来像を描く

「65バック・ビジョン」とは、キャリアと私生活両面における充実を目指した統合プロセスです。過去の経験にもとづいて重要だと信じているものなどの制約を時間・空間的に解き放ち、本来あるべき未来像を描くことを可能にしています。私がコーチングを行っているエグゼクティブの多くは、目標設定を富や地位を得るためのものと考えており、ビジョン設定も3~5年間の短期間で設定しています。その先の将来は、自分の影響力が及ばない曖昧な領域だと考えているのです。それは、言い換えれば未知に対する恐れとも言えます。私自身も富や地位にこだわっていた頃はまさに同じように感じていました。

未来像を描くこのプロセスでは、例えば現在40歳のエグゼクティブに、25年後の自分を想像してもらいます。富や地位だけでなく、健康、家族・パートナーとの関係、学び、奉仕、精神の充実など、人生の主要な領域を満たすビジョン設定を行うのです。すると、そのビジョンを達成するために必要な情熱や目的意識がまったく違ってくることに気づくことでしょう。

この全方向性の長期ビジョンを描く方法は、65歳の未来像を描いた「人生の輪」を作成することです(少なくとも20年以上先の未来像を描くのが望ましいでしょう)。この人生の輪では、前述の「スイートスポット」を参照して達成できる可能性を考慮しつつ、富や地位をはじめとする各領域における具体的かつポジティブな目標をリストアップしていきます。

完成したら、現在の自分の年齢に向かって5歳ずつ遡りながら同様に「人生の輪」を作っていきます。例えば、もしあなたが今40代前半なら、まず初めに60歳の輪を作り、その後、55歳、50歳、45歳と遡って作成していきます。この5年毎の目標は、最終的な20年後の未来像を実現することを念頭においた目標にすることがポイントです。これらの5ヵ年目標が、短期目標の進捗管理のサポートをしてくれます。

3. 行動を喚起する計画を立てる

図式などを用いたビジネスプランを作成し、現在の自分から一歩ずつ前進するための短期計画を立てましょう。課題を洗い出し、それを克服するための選択肢を見つけます。今使えるリソースを探し、行動計画を練り、見つけた選択肢をもとに課題を克服していきます。このプロセスは認知的なプロセスで、アクション重視のコーチングを活用してビジネスプランを作成するのに似ています。5ヵ年計画用の雛形として、上の図をご参照ください。

4. 視覚化し、落とし込む

夢が叶った時、あなたは何を達成して、どんな自分でありたいですか?ここまでのプロセスを進めたあなたなら、数年後のありたい姿を感覚的に視覚化できるようになっているのではないでしょうか。いろいろなことに思いを巡らせたら、夢を知覚で認識し、心に落とし込みましょう。最後のステップとして、夢を信じて描くことができたあなたのエネルギーに感謝し、目標達成についての執着心を意識的にすべて手放します。心の力を活用してビジネス目標を設定し、心にしたがって実践することが、成功への一番の近道なのです。


著者情報
ラム・S・ラマナサン, MCC
リーダーシップ・コーチおよびトレーナーで、スピリチュアル・ヒーラーとしても活躍。東洋の精神論を心理学や神経学と融合させたマインドレス・アウェアネスを専門分野とする。
ウェブサイトはこちらから coacharya.com
Eメールはこちらから ram@coacharya.com

【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Ram S.
Coaching World, Issue 21 February 2017 p16-19 Brings Your Business With Your Heard
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチが投げかける質問を考える ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『コーチが投げかける質問を考える』の記事を御紹介します。


コーチが投げかける質問を考える
コーチが投げかける質問を考える

コアコンピテンシー6
パワフルな質問

コーチングにおける関係性を向上させ、クライアントに与える利点を最大化するために必要な情報を引き出す質問を投げかける能力

時として質問はフクザツだが答えはシンプルだったりする」-ドクター・スース (米国・児童文学作家)

さて、投げかける質問が複雑過ぎることはありませんか?あるいは、投げかける質問をシンプルにするにはどうすればよいのでしょう?

私たち、プロコーチは投げかける質問が効果的であるよう確実にしなければなりません。なぜならば、それに対するクライアントの反応が、前進または変化へとつながるからです。曖昧、あるいはとりとめのない問いかけが、クライアントの持つ内省・続行・変化する力にどれだけの効果があると言えるでしょうか?私の意見はこうです。「質問がパワフルであれば、答えははっきりみえてきます」

コーチングの初心者の多くは、ひな形にそってパワフルな質問を学びます。しかし、変革的であるためには、前記の引用のように「ドクター・スース的」に疑問を抱き、好奇心を持ち、じっくり聴き、そして直観する力を際立たせさる必要があります。

質問の質を高める5つの秘訣を下記に述べます。簡潔に記していますが、実はとても重要な内容です。

1.質問は短く、簡潔に

私は、以前一緒に仕事をしていたメンターコーチに、質問の単語数を短く7語以内にすることに挑戦するよう指摘されました。コアコンピテンシー6条「パワフルな質問」に力を注いできた私にとって、この指摘は意外なものでしたし、行ってみるとコーチングをしている自分の出来具合に意識が向いていました-そう、コーチングを習い始めた頃のように。
この訓練のおかげで、質問が複雑で分かりにくくなればなるほど、それに応えるのが難しくなるということを習得することができました。長い質問は、クライアントの思考をフリーズさせるのです。ちょうど、コンピューターのキーボードで連打した時と同じように。クライアントの思考は止まり、コンピューターでいえば強制終了状態になります。
短くシンプルな質問を意識できるよう、下記の“KISS”を参考にしてください。中でも私のお気に入りは、「What else? (他には?)」です。
是非、7語以内の質問(短くシンプルな質問)にチャレンジし、そのような質問があなたのコーチングにどのような影響を与えているのか、またその理由を考えてみてください。

“KISS” = Keep It Short and Simple (短く簡潔に)

パワフルな質問は、明確さ、行動、発見、洞察力、コミットする力を喚起します。パワフルな質問は、可能性を広げ、新しい学び、あるいはより明確なビジョンをもたらします。
質問を効果的にするためには、長く、複雑にする必要はありません。
(2語)
What else? 他には?
Who else? 他には誰?
By when? いつまでに?
Like what? 例えば?
How else? 他にはどんな?

(3語)
What is that? それは何?
What stands out? (その中で)際立ってことは?
What is next? 次はなに?
What is working? うまくいっていることは?
What will change? 何が変わる?
What drains you? ストレスになっていることは?
How could you? どうすればできる?
What is possible? できることは何?

(4語)
What are you tolerating? 我慢していることは?
What is not working? うまくいっていないことは?
What is it like? どんな感じ?
What do you want? 何が欲しいですか?
What are you discovering? 気づいたことは?
Who are you becoming? どんな風になりたいですか?
What are you resisting? 抵抗を感じるものは?
What do you mean? どういう意味ですか?
What is stopping you? 何が妨げになっていますか?

(5語)
Where will that get you? それをすると何につながる?
What about this excites you? ワクワクするのはどんなところ?
What is this costing you? その代償は?
What will be different now? これから何が変わると思う?
What would that give you? それによって何が手に入る?
What is new about this? 今までと違うところは?
What could you stop doing? 止めることがあるとしたら何?
What will you do next? 次、何をしますか?
How would you do it? どのようにしますか?

(6語)
What are you learning from this? 学びは何ですか?
How do you feel about this? どう感じていますか?
What do you love about this? 中でもすごく好きなことは?
What is standing in your way? 障害は何?
What is your back up plan? バックアッププランはなんですか?

2.指令のような質問をしないこと

「Tell me (教えて)」「Show me(やってみせて)」「Help me understand(理解できるように聞かせて)」。
このような問いかけは、オープンクエスチョンではありません。心を開きたくないクライアントは、このような問いかけにそっけなく「yes 又は no」と応えることができます。
このような光景を、マネージャーやリーダーにコーチングスキル習得の研修やコーチングをする中で日常的に目にします。コーチにそのことについて訊いてみると、その「指令的質問」をオープンクエスチョンと捉えており、当然のごとくオープンクエスチョンとして使っているのです。
この指令的質問を抑える訓練は、コーチングの練習セッションの中でできます。指令的質問をしてしまったら、その都度自分にそっと×印をつけてみてください。こうすることで、自分の癖に対する意識が高まり、言い方を替えることにつながるでしょう。

3.2次的・3次的質問をすること
私たちコーチは、クライアントが抱く点と点を結び、あらゆる視点を持ちながら試し、そして見えていない盲点への気づきを促す努力をしています。
私たちは、クライアントの気づきを深めるためのサポートをします。
このことを、エグゼクティブコーチであり、人類学者のジュディスE.グレーサーは、“ダブルクリック”と呼んでいます。2011年に彼女は自身のブログの中で、このように説明しています:
“ダブルクリック”と名付けたのは、コーチングのプロセスがコンピューター内のフォルダーを開ける時のダブルクリックに似ていると思ったからです。私はこのように“ダブルクリック”を引用します。「チーム内において、個々人の考えを互いに比較したり、またはそれに対する理解や受け取り方を共有するために個々の頭の中を“ダブルクリック“してみてください。」これは、探究してみてください、という意味です。同じ言葉や言い回しでも個々人によってその意味や受け取り方が異なるということを発見し、探求し、理解するために”ダブルクリック“します。このダブルクリックを練習する際には、コンピューターでいうならば、クライアントのキーワードにハイパーリンクが貼ってるかの如く想像してみてください。
クライアントの発している言葉の裏にある真の意味をくみ取れるために、ダブルクリックをし、2次的・3次的質問をしてください。

4.視点を変える

私たちコーチは、クライアントの視野を広げる手助けをしています。クライアントの視点を変えるために次のようなことを試してください:
・時間軸を未来へシフトし、予測する… 「来年はどのようになっていますか?」
・仮定する… 「もし~」
・建物の1階から屋上へ移動してみる… 「もし上からその情景を見たならば…」
・アプローチする部分を変える… 「あなたの心はなんと言っていますか?頭は?脳は?子供の自分は?歳をとった自分は?」
ドクター・スースは、次のような豊かな表現で視点を変えることを促しています。 「右を考え左を考え、それから下のことも上のことも考えよう。ああ、トライしさえすれば、どれだけの考えを見つけ出すことができるか」

5.永遠に好奇心を持ち続けること

ドクター・スース曰く、「大人というものは、退化した子供にすぎない」
子供は生まれながらにして好奇心を持っています。
コミュニケーションミスや期待通りにいかなかったことに対し腹を立て、人生は複雑だと嘆くクライアントの話に私たちコーチは耳を傾けますが、こんな時、腹を立てる代わりに好奇心を持つよう励ましましょう。好奇心を持つと、「できることは何か?」と考えます。ドクター・スースが言うように、結局のところ「大切なのは、何がどうあるかではなく、どうなれる可能性があるか」なのです。

このようなヒントを基に練習し質問力をつけてください。そして忘れないでください。
簡潔な質問は、クライアントの思考を妨げることなく、彼らが探し求めている答へと導くということを。


著者情報
バーブ・ガーソン(ACC)
研修・コーチング・ビジネスコンサルティング・ファシリテーションにおいて20年以上の経験を持つ。提供する研修やエグゼクティブコーチングは、企業・チーム・個人事業主に自信を与え、行動へ移し成長を促している。
ICFコロンブス(米国オハイオ州)代表
Worldwide Association of Business Coaches 会員
バーブについて詳しくはこちら; www.mysalestactics.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Barb Girson
Coaching World, Issue 20 November 2016 p10-11 Oh, the Questions We Ask
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチングにおけるパーソナルブランド

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『コーチングにおけるパーソナルブランド』の記事を御紹介します。


コーチングにおけるパーソナルブランド
コーチングにおけるパーソナルブランドコーチングとは、この上なくパーソナルなサービスです。クライアントがコーチに対して、(恐らくは他のプロフェッショナルに対してよりも)「雇う」という意識よりも、「知っている」「好みに合う」「信頼できる」といった感覚を大事にしたいと思うのはそのためです。

残念なことに、多くのコーチはウェブサイトや名刺を作る際、単に自分のビジネスの構築に必要なTo-Doリストの一項目として考えています。見栄えの良いロゴや顔写真をテンプレート的なウェブサイトに載せて、クライアントがドアまで歩いてきてくれるのを期待するのです。でも、分かりやすく確かなパーソナルブランドを構築し、それをマーケティングやコミュニケーションを通じ、一貫性を持って発信することに投資していなければ、彼らが望むような展望は中々開けないことでしょう。もっと悪いことには、見込み客と初めて顔を合わせた際に、「あれっ、あなたは私が求めていたのと違うね」と言われてしまう(もしくは、思われてしまう)ことになり、売り上げ損失に繋がってしまいます。

あなたのパーソナルブランドは?
Entrepreneur magazineへの寄稿で、LogoYes.comの創設者ジョン・ウィリアムスはパーソナルブランドをこのように定義しています:
「シンプルに、あなたのブランドとは、あなたの顧客への約束だと考えると良い。彼らがあなたやあなたの商品に何を期待して良いのか、他社とどんな点で違うのかを、ブランドは語るのだ。」
もしくは、Amazon.comの創設者ジェフ・ベゾスはこう言っています。「あなたのブランドとは、あなたについて、みんながあなたが居ない場所で語ることのことだ。」
本質的に、コーチとしてのパーソナルブランドはあなた自身の評判-あなたを知る人、出会った人が、他の人にあなたのことをどう説明するか-になります。
あなたの経験、専門性、価値、強み、魅力-あなたをあなたたらしめる全て-は、あなたならではのパーソナルブランドを構築する重要なスタート地点になりますが、ブランドとはあなたの全てとイコールではないことにも注意が必要です。
他人の頭の中には、あなたについての(もしくは他の誰かの、でも構いません)情報を入れる場所はほんの少ししかありません。つまり、あなたのブランドは、あなたがクライアントにしたい相手にとって魅力的で覚えやすくなるようなあなたの特質の一部を、深めすぎず、戦略的に抽出して構築することが大切になります。

どうやってあなたのパーソナルブランドを広めるか?
一口に言えば、あなたが言うこと、成すこと、作るもの全てが、あなたのパーソナルブランドの信頼を上げたり下げたりします。
あなたの、コミュニケーション(文章、言葉、非言語を問わず)、スタイル、フォント、ウェブサイトやドキュメントで使う色や画像、ロゴ、キャッチコピー、推薦、資格、料金-これら全ての要素や、それ以外の様々なものが、あなたのパーソナルブランドを広めるための手法であり、これらは全体を通して一貫性のあるブランドストーリーを貫かなくてはなりません。

あなた自身のパーソナルブランドが何故大切なのか?
あなたのパーソナルブランドは、潜在的な顧客がクライアントへと変わるために、とても重要な役割を果たします。
何故なら、コーチングサービスの性質として、潜在的顧客は、そのコーチのことを好みに合い信頼できる相手だと、コンタクトする前に知っておきたいからです。これらに合う相手を探すのに、今の人々はどんな方法を使っているでしょうか? それは2つあります:オンライン上のリサーチと、人からの紹介(これもオンライン上でのリサーチを伴う場合が多いでしょう)です。

オンライン上でのリサーチ
ビジネスの成功において、オンラインで上での露出はいまだかつてない程に重要になっています。GoogleとMilward Brown Digitalによる2014年度の調査では、B2B取引の89%がインターネットでの情報を元に購入の決定を行っていると示しています。
潜在的顧客があなたについて検索した時、何が出てきますか? あなたのオンライン上での露出は、信頼できるパーソナルブランドに繋がるものですか? そこにはクライアントがあなたを知り、好きになり、信頼できるような情報があるでしょうか?

人からの紹介
どうすれば、あなたがもっと紹介してもらえるでしょうか?ヒンジの『Referral Marketing Study』によれば、最も重要なことは、その人が目に見える専門性を提示していることです。すなわち、その人が提供するサービスについて、手に入れやすく高い品質を持った事例、例えば講演、記事、本、ウェブサイトなどです。あなたは、他のコーチよりもあなたの方が信頼できると潜在的顧客が思えるようなオンライン上のプレゼンスを発揮していますか?

有効なパーソナルブランドは何が違うのか?
あなたがパーソナルブランドに投資する効果をイメージするために、こんなケーススタディがあります。
ある電気製品の小売業者が、ポテンシャルの高い女性のためのリーダーシップ開発プログラムを創り、25名の参加者に対して外部コーチによる1対1のコーチングを行いました。人材開発部門のマネージャーにより9人のICF認定資格取得者が選ばれ、それぞれ2pずつのプロフィールを参加者に配り、コーチングを受けたい相手を選んでもらいます。その結果、互いに面識が全くない状態にも関わらず、2名のコーチ(22%)が16人の参加者(64%)から選ばれました。
何がこの2名のコーチを魅力的に見せたのでしょうか?
それが明確で信頼に足りるパーソナルブランドでした。
書かれたプロフィールを受け取ったにも関わらず、参加者の多くはそのコーチについてオンラインで調べました。大多数から選ばれた2名のコーチは、信頼できるブランドストリーを語るオンラインでのプレゼンスやウェブサイト(ブランドに合わせた写真、キャッチコピー、デザインなどが整っているもの)に投資していました。
この強力な第一印象は、多くの参加者にとって自分たちがすでにコーチのことを知り、好み、信頼できてきているという気を起こさせ、そのコーチを選ぶことに安心感を持たせました。
明確に定義され、一貫性を持って発信されるユニークで信頼感のあるパーソナルブランドは、(マーケティングで重要とされる)より多くの人にあなたのサービスを知ってもらうためには役立たないかもしれません。しかし、潜在的な顧客があなたを知った時に、「この人が、私の求めていた人だ!」と思ってもらうために大いに役に立つことでしょう。


著者情報
エーンスリー・タンナー, ACC
エーンスリーはリーダーシップコーチにして、パーソナル・ブランド・エージェンシーの創設者。詳しくはAensleeTanner.comへ。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Aenslee Tanner
Coaching World, Issue 21 February 2017 p12-13 It’s Personal
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】効果的な手法“チェックイン”の有用性 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『効果的な手法“チェックイン”の有用性』の記事を御紹介します。


効果的な手法“チェックイン”の有用性
効果的な手法“チェックイン”の有用性

コアコンピテンシー11
進捗と説明責任の管理

クライアントにとって何が重要であるかに着目し続け、行動を起こす責任をクライアントに委ねる能力


18年前、私が初めて受けたコーチングのトレーニングプログラムでは、毎回セッションの最後にこう訊かれました。「セッションで得られた成果は何ですか?」そしてこの問いかけは、私たちがクライアントに対しコーチングセッションの最後に訊く習慣となったのです。

それから5年ほど経ったある日、この習慣を考え直すきっかけとなった衝撃的な出来事が起こりました。いつもの問いかけに、クライアントは次のように応えました。「得たものは何点かあって、とても良い会話でした。このセッションで期待していたものは得られませんでしたが、話した内容はとても良かったです。」
「え?!今のはどういうこと?どういう意味?私が気づけなかった、クライアントが本当に話したかったことって何だったの?彼の期待に応えられなかったなんてコーチとして失格だわ!」電話を切りながらこう思ったのを覚えています。

その日から、私はそれまで以上にクライアントの希望を明確に確認するように努めました。セッションの中では、クライアントが望む方向へ向かっているのか確認しながら進めました。
このような経験から、私が今回お勧めするのはコーチングの中でも最も効果的な手法の一つ、“チェックイン”(方向性の確認)です。

クライアントからみてセッションが希望通りの方向へ進んでいるのかを確認するには、先ずクライアントの向かいたい方向・着地点を知る必要があります。そのために、私はエグゼクティブコーチとして、コーチングのトレーナーとして、そしてICF資格認定メンターコーチとしてICFのPCCマーカー(認定資格PCC取得の評価基準)日本語翻訳版)を常時利用しています。このPCCマーカーを活用することによって、コーチングスキルを極め、より効果的なセッションを行うことができるのです。

PCCマーカーのコアコンピテンシー2:【コーチングに関する同意の取り交わし】の1番目には次のように記されています:「コーチはセッションでクライアントが達成したいことを特定または再確認できるよう手助けしている」。この意味するところは、クライアントが望む方向へ進むにはクライアントが話したいトピックを理解するだけではなく、クライアントがそのトピックにまつわる何について探究したいのかを理解する必要があるということです。

例えば、クライアントがこのような発言をしたとしましょう。「同僚達が私よりも高い給料をもらっていることを先ほど知りました。やっている仕事は同じ、しかも彼らが入社した当初、彼らに仕事を教えたのはこの私ですから侮辱された気分です。私の給料が彼らよりも低い理由をマネージャーに訊いてみたいです。」

これを聞いてトピックはわかります。しかしセッションを通し、このトピックについてどのような成果を得たいのでしょう?マネージャーとの話し合いの準備をしたいのかもしれませんし、マネージャーと理路整然と話すために先ず自分の感情を整理したいのかもしれません。あるいはまったく別のことかもしれません。

ここで仮にクライアントが、セッションの直前に給料に関する情報を得たとして、「先ずは感情の整理をしたい。」、「その後、マネージャーとの話し合いの準備をしたい。」と言ったとしたならば、ここではじめて感情の整理と話し合いの準備の2点に焦点をあてたセッションの方向性が定まります。

PCCマーカーのコンピテンシー2【コーチングに関する同意の取り交わし】の5番目に挙げられているのは、「コーチは、クライアントから指摘されない限り、クライアントが望む成果の方向へ会話を続けている。」このポイントを知っておくことで、セッションがクライアントの望む方向に沿っているかどうか、方向性の確認をすることができます。

確認の問いかけは、例えばこのようにします:
「トピックのどの部分から掘り下げていきましょうか?」
「違うトピックが出てきたようですが、その内容は元々のトピックと関連しているのですか?」

“チェックイン”を行うタイミングは、セッションの半ばで行います。60分~90分のセッションであれば、“チェックイン”の回数を増やしましょう。

“チェックイン”の例をあげましょう:
「セッションの始めと今の感情を比べるとどのような変化がありますか?」
「このセッション中、マネージャーへの良いアプローチ方法が浮かんできているようですが、進み具合はいかがですか?」

“チェックイン”を行うと、ほとんどの場合クライアントの中で次のようなことが起こります:
1.セッションから得た気づきを熟考する
2.アクションポイントが浮かんでくる

このため、クライントから湧き起こる気づきや行動内容について掘り下げる時間を確保できるよう、セッションの終盤まで“チェックイン”のタイミングを遅らせてはいけません。“チェックイン”時の会話は、その他の「深く掘り下げる」「発見する」ことを目的とした会話と同じくらい重要です。“チェックイン”のタイミングを逃すことは、クライアントの損失となります。

コーチングにおいて”チェックイン“は、セッションがクライアントの期待に沿って進んでいるのか、クライアントが他の方向へ切り替えたいのか、または掘り下げて自分の行動について話す準備ができているのかを判断する上でとても有効的な方法なのです。


著者情報
カーリー・アンダーソン(MCC)
ICF認定メンターコーチ。
CCE単位認可プログラムのMentor Coachesを実施。
企業とコーチング契約を結び活動中、代表的なものとしてグーグル社450名の従業員を対象にコミュニケーションやリーダーシップ向上のためコーチングを提供。
カーリーが作成したThe Target Approach: Demystifying the ICF Core CompetenciesではICFコアコンピテンシーを解りやすく紹介している。
カーリーについての詳しい情報:CarlyAnderson.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Carly Anderson
Coaching World, Issue 21 February 2017 p10-11 The Value of Checking In
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長』の記事を御紹介します。


「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長
「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長数週間前、同僚が私のオフィスを尋ねてきました。
「ねえ、今、自分のコーチを探している学生がいるんだけど。」

彼女のいつものコーチが合わなかったため、私は彼女―サムと呼ぶことにする―と会うことしました。サムはかなり焦りを感じているようでした。

「いきなり来てすいません。でも、なんとかしなきゃいけないことがあって、そのためにコーチングが必要なんです。ここは、私が批判されずに話せる数少ない場所だから。」

そして私たちは話しはじめました。彼女の言葉が進むにつれて、私は彼女の変化、エネルギー・シフトを感じました。サムはこのセッションを、コーチにフォローアップしてもらいながら進めるべき、次のステップとプランを見出すことで終えることができました。

サムは、私たちのプログラムでコーチとのワークを行い、エネルギーと自分のゴールに向けた目標への気づきを得た1363人の学生の内の、1人の例に過ぎません。
 

次々とくる学生たちにとって、変化は新しい喜びの発見と自立、同時に無力感や不安を生むものでもあります。学生は日々選択(それは時に重大なものでもあり得る)を迫られますが、それには実行力とそのスキルや、感情の制御といったものが必要となってきます。このプレッシャーは学生に、質問と、すぐに出る「答え」を求めさせます。

すると熱心な学生たちは、教授たちなら「正しい答え」を教えてくれるだろうとキャンパス中を探し始めます。しかし、私の学生への長年のコーチングの経験は、コーチングの鍵となる教義が正しいことに気づかせてくれました:すなわち、このヤングアダルトたちは生まれながらに問題を解決する力も、必要なものも手にしている。大切なのは、彼ら自身が何者なのか、本当に求めるものは何なのかを見つけ出すことです。彼ら自身の中からそれを発見することは、簡単なことではありません。多くの学生たちが、自分のアイデンティティも目的も持たないまま大学に来ます。
 

コーチングのプロセスは、学生がコーチとの本当のパートナーシップを育むことのできる、安全でニュートラルな環境を生み出します。学生は自ら議題や話のトピックを選ぶことになります。その中には、大学入学という環境の変化、メジャーやキャリアのこと、ストレスのマネジメント、学業のこと、サークルや人間関係、意思の決定や、(学内の自治会などの)執行部への参加などが含まれます。

トゥーレーン大学でのサクセス・コーチング・プログラムの立ち上げは、教職員、学内スタッフ、そして保護者たちの観察から生まれました。以前から、学生たちは情報を集め、明確なプランを造り、それに力を注ぐことができました。しかし、それを実行する段階で失敗していました。何かが欠けていたのです。そう、学生たち自身の視点が。ですので、当初からこのプログラムは人間をまるごとプロセスと融合し、「処理する」というより「変わる」ということに重点をおいています。

「コーチングのプロセスの中で、学生たちが成長し、自分自身が何者なのか/何ができるのかに確信を持てる姿を私は見てきました。」と、サクセス・コーチのカレン・ホッカイザー(ACC)は言っています。これは特に、自身のアイデンティティを発達させ、世界の中に自分の居場所を見つける段階の学生に顕著です。コーチングは、様々なこと、何か違うことに挑戦できる安全な場所をつくりだします。それは、クライアントとコーチの両方にとって、変化とエネルギーをもたらします。
 

試験的に始めた2012年から、このプログラムを通して、私たちのオフィスは圧倒的にポジティブな反応を経験してきました。学内からの紹介も学期ごとに増えています。試験時の学期には、69人の学生が256回のミーティングを行いました。4年後の2016年春学期には、638回のミーティングが行われてます。2015~16年度を通しては、1363人の学生が5817回のミーティングを行っています。この成功は、「強み」に注目したメッセージ方法のおかげでもあります。例えば、学内の同僚や保護者には、学生を「紹介」するのではなく(有望だと思える学生を)「ノミネート」してもらっています。

私たちのゴールは「数」ではありません。代わりに、交流の「質」に重きを置いています。このアプローチにより学生とコーチはラポールを築き、信用できる関係を作り上げ、学生のゴールを成し遂げるために動くことができます。結果として、学生にとっての成果、感情の制御や、学業的なパフォーマンスの向上、属する団体の強化、時間のマネジメントスキルの獲得、自己効力感の向上、そしてキャンパス内でも「信用できる人物」としてのアイデンティティの確立などが起きます。更に言えば、2016年春学期には、99%の学生がコーチングを「役に立つ」もしくは「非常に役に立つ」と評価しています。

私たちは、学生のニューロダイバーシティ(脳の多様性)へのサポートも必要だと考えています。そのために、コーチたちはICFの専門トレーニングプログラムの中でもADHDと根拠に基づいたメソッドにフォーカスしたプログラムで学び、認定資格を取得しています。(この知識とトレーニングは、ニューロティピカル(定型発達=いわゆる健常者)の学生とのワークにも役立てられることが分かっています。)

科学というレンズを通したコーチングは、途方もない価値を持っています。脳のメカニズム、プロセスのスタイル、ポジティブ/ネガティブ両方の感情の力を知ることで、学生たちが熱心な学習者になっていく姿を見てきました。恥や不安といったものがどこから来るのか、それを説明できる要素を、労を厭わず見つけ出そうとする姿勢も観察してきました。神経生物学的な要素への気づきにより、学生はそれまで制限や限界だと認識していたものに気づき、そこから開放されていきました。

コーチングの感想を公表することに同意してくれたとある学生がこんなことを言っています。

「私はいつも乗り越えられないタイムマネジメントの問題をかかえていたんです。それは私の人生にずっとついてまわる重荷だと思っていました。あなたが今、水の中に囚われていて、足首には鎖が繋がれ、その先には大きな重りが付いている状況を想像してみてください。あなたの人生は、ずっとその重りを外そうとしながら、時々水面に顔を出してやっと息継ぎをしているような状態なんです。それがようやく、鎖を外すだけの力を得ることが出来て、水の上に頭を出し、肺いっぱいの酸素を吸うことができた。この安心感。まるで命が助かったというような感じ。それが私がコーチングを体験して味わった感情なんです。」


著者情報
ミシェル・エルキング
ミシェルはテューレーン大学で学生たちへの学習のサポートサービスを包括的に提供する、アカデミック・サクセス・センターのディレクター。また彼女は同時にライフコーチ、ADHDコーチでもあり、テューレーン大学のサクセス・コーチング・プログラムの創設者でもある。ADDコーチ・アカデミー卒。ニューオーリンズにあるサザン・ユニバーシティの社会福祉課程で修士号を取得。2012年12月には、学生の進学率とサクセスについての業績が認められ、テューレーン大学の学長によるスタッフ・エクセレンス・アワードを受賞。彼女自身のビジネス、Souljourn Coachingでは、個人、組織双方の成長についてのプログラムとサービスを自ら提供している。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Michele Oelking, PCC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p31-32 Supporting the “Who:” Coaching and College Student Development
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】成功のためにソーシャルメディアを使うシンプルな方法

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『成功のためにソーシャルメディアを使うシンプルな方法』の記事を御紹介します。


成功のためにソーシャルメディアを使うシンプルな方法
成功のためにソーシャルメディアを使うシンプルな方法ソーシャルネットワークが数多くある今日、それら全てを使いこなしたり、どれが今最も人気のメディアなのかを知るのは簡単ではありません。特に、コーチとして上手く行っていれば、尚更です。ですので、シンプルに考えて見ましょう。あなたのコーチングビジネスの成功のために、ソーシャルメディア戦略にはキーとなる2つの要素、「一貫性」と「ブランディング」に気を配りましょう。



一貫性
自分が対処できる以上のことをしようとしてはいけません。薄く広くいくつものソーシャルネットワークに一貫性のないメッセージをたくさん投げるより、一つだけ選んだソーシャルネットワークに一貫性のあるメッセージを投稿していく方が良いのです。

選択するネットワークは、あなたのブランドや分野にあったものにしましょう。例えば、もしあなたが人生のビジョンと向上に関するコーチングを行い、素早く細かなやりとりによってモチベーションをあげて欲しいと願うクライアントを相手にしているなら、フェイスブックやリンクトインよりも、ツイッターの方が適したオプションと云えるでしょう。もしあなたがエグゼクティブ、もしくはキャリアコーチなら、プロフェッショナルのネットワーク、リンクトインなどが合うかもしれません(※)。インスタグラムは、あなたのコーチングがビジュアル的に見栄えがするものを持っていれば素晴らしい選択になることでしょう。また、フェイスブックは今でも(※)ビジネス=消費者間を繋ぐ最も人気がありますので、どんなケースでも有益なプラットフォームなはずです。
(※訳者注:2017年1月現在、アメリカでは仕事のためのネットワークとしてリンクトインが、友人間のためのネットワークとしてフェイスブックが使われ、ツイッターは比較的あまり使われない傾向にある。日本では仕事のためおよび知人間にフェイスブックが使われ、よりくだけた友人間や趣味のやりとりとしてツイッターが使われる傾向にあると思われる。)

あなたとあなたのクライアントにとって合うソーシャルメディアネットワークを選択したら、次はコンテンツを常に発信し続ける必要があります(おすすめの投稿頻度については、下記“どれぐらいの頻度で投稿すれば良いのか?”を参考にしてください)。ソーシャルメディアのマネジメントツール、HootSuiteやTweetDeckなどを使うことも考えましょう。これらのツールは、メッセージの投稿を予約することが出来、あなたの定期的な投稿を手助けしてくれます。これによって、毎週細かな時間の節約をすることが出来、その分の時間を使ってコンテンツを探したり書いたりすることができるようになるでしょう。そしてそれを週に一度、まとめてアップロードし、投稿予約しておけば良いのです。

ソーシャルマネジメントツールを使って、アカウントにアクセスすることも出来ます。そこで、一日に一度はメッセージやコメントをチェックするようにしましょう。「ありがとう」の一言でも良いので、返信も忘れずに。ビジネスでソーシャルメディアを使う人は、一方通行でないやりとりを期待しています。また、もし可能であれば、あなたのフォロワーのコメントやコンテンツをシェアしてあげましょう。こうしたアクションは、フォロワーとあなたの関係性を構築することを助けてくれます。

ブランディング
ソーシャルメディア上で、あなたのコーチングビジネスのプロフィール情報をあなたのブランドに合わせることはとても大事なことです。あなたのビジネスロゴ、ビジネスネームを使い、未来のクライアントにとって分かりやすくしておきましょう。出来るだけ、ビジネス用のプロフィールと、パーソナルなプロフィールは分けるのが望ましいです(プロフィールが一つしか作れないリンクトインは例外)。コーチとしてのプロフィール、リンクトインのプロフィールは、完全にプロフェッショナルなものにしてください。
プロフェッショナルとパーソナル、両方に同じプロフィールを使ってしまうと、現在と未来のクライアント両方に混乱を生じさせ、信用を失うことになります。
もし一つのプロフィールをプロフェッショナル、パーソナル、両方の用途に使いたい場合は、全てのコンテンツをプロフェッショナルにするようにしてください。
政治関連の話などの言い争いの種になるようなトピックの投稿や、ネットワークをグチの場にするのは止めましょう。将来の、あるいは現在のクライアントはこうした投稿からは逃げてしまいます。一つのソーシャルネットワークで、頻度、ブランディング共に無理なく投稿出来るようになったら、別のソーシャルネットワークの活用も考えていきましょう。成功のためには、シンプルさが大切です。

どれぐらいの頻度で投稿すれば良いのか?
下記の回数だけ投稿することをプレッシャーに感じる必要はありません。フォロワーにとって価値があるコンテンツだけを投稿しましょう。下記の推奨に合わない場合は、どんなことでも一貫性だけは保つようにしてください。また、ビジネスですので、週末にも投稿しなくてはいけないと考えないこと。

フェイスブック 1~2投稿/日

1日に2回投稿する場合、投稿の間隔は5時間ほど空けるのが望ましい。

ツイッター 4~12投稿/日

2時間ごとにツイートすることが推奨されている。

リンクトイン 1投稿/日

Google+ 1~4投稿/日

インスタグラム 1投稿/日


著者情報
リサ・カニンガム
リサはICFのソーシャルメディアスペシャリストであり、フリーのライター、ソーシャルメディアコンサルタントでもある。チャタム・ユニバーシティでウェブのコンテンツの発展についてのプロフェッショナル・ライティングで修士号を取得、ユニバーシティ・オブ・ピッツバーグでイングリッシュ・ライティング&コミュニケーションで学士号を取得している。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, Issue 20 November 2016 p8-9 Simplify Your Social Media Strategy for Success
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】マインドフルネスの時代へ

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『マインドフルネスの時代へ』の記事を御紹介します。


マインドフルネスの時代へ
マインドフルネスの時代へ

優れたリーダーには欠かせないのがマインドフルネスだ。しかしながら、大勢の人々がその流行のあおりを受けマインドフルネスを誤って解釈しているのも事実だ。瞑想のテクニックを教える流行りがそのいい例だ。
“マインドフル”という言葉自体が誤解を招いているともいえる。本来、マインドフルネスとはマインドフルの状態の解明を意味する。しかしながら、言葉だけをとらえるとマインドフルとは常に頭がいっぱいで集中できない状態を指す。このためその状態を解決することに焦点があてられている。また、マインドフルとは頭を空っぽにすることではない。それではマインドレスネスになってしまう。

マインドフルネス、とは気づく力である。身の回りで何が起こっているのか、あるいは起こっていないことは何か。自分の生理的・情動的・知的な感覚に深く気づくことだ。人は認識力が高まるとよりよい決断をするものだ。他者への共感が増し、そして自分の価値観や信条に沿った行動を起こすことができる。自分の中で起こっていることと身の周りで起こっていることを結びつけ易くなり、状況を探求し理解に至る。よって、マインドフルネスには洞察力と知力を喚起するための時間と場所のスペースが必要である。
他者がよりマインドフル(より深く認識している状態)になるよう支援する際のポイントは:

  • マインドフルになれる環境をつくること
  • より深く自己を認識する力を磨くこと
  • より深く観察する力と聴く力を磨くこと
  • 直観を使い推理すること

マインドフルになれる環境
オフィスで仕事をしていると、集中して考える時間を確保することは簡単ではない。静かに考える場所を確保できたとしても電話やメールに邪魔される。また、具体的な課題を解決するために静かに考える時間を確保するということはあっても、より広い視野をもつためにそのような時間をもつことはない。
このように、意識することなく過ごしていると自ら探求し注意をはらうことで得られる情報を得る機会はなく、目の前の情報だけにとらわれ決断をすることになる。
もっとマインドフルになるためには、先ず習慣的に思考する時間を確保することだ。そうすることで沸き起こる強い感情や、優先すべき重要事項、そして新たな気づきをあらためて観察することができる。ただ、最初から多くのことをやろうとし過ぎると、得られる気づきは限定されてしまう。よって、先ずは仕事中に2回以上の“マインドフルネス・シンキングタイム”をもつことで観察が可能となり効果を得られるであろう。
コーチが使える質問としては:

  • 一日に何回立ち止まって、自分の言動とその瞬間に感じていることに目をむけているか?
  • 忙しい時に、静かに内省できる場所(実際に身をおける場所)はどこか?
  • マインドフルネスの時間をしっかり確保するにあたり、周りの協力を得るためにはどうすればよいか?

自己認識力を向上させるために
自己認識力をつけはじめる段階で心理測定テストというものは役に立つが、知らず知らずにマインドフルネスを損ねることもある。
このようなテストにおいて、自分の行動・態度・特性・優先事項などを示されると、脳はそれを“認識・終了”する傾向にある。しかしながら、人の態度や行動は状況や環境にも影響されるため、心理測定テスト結果ほど単純なものではない。より高い自己認識力を実現するための概要にすぎない。心理測定テストはあくまでも自己の態度や行動、そして私たちをとりまく世の中の動きと互いの関わり合いを観察する基本部分においてのみ役立つからだ。
心理分析テストを何度も受けその結果をたくさんもっていたとしても、その多くのマネージャーやリーダーは、自己認識力に欠ける幸せ者、と揶揄されることがある。
自己認識力磨きには時間がかかり、また内省する高度なスキルが必要である。その三つのスキルを段階的に紹介する:

  • 行動へうつす前に内省するスキル(動く前に自らの言動を考える)
  • 行動をしながら内省するスキル(自ら起こしている言動を自覚し、それが自分と周囲にどのような影響を及ぼしているか、言動しながら認識する)
  • 行動後に内省するスキル(起こった出来事を振り返り次のことを意識すること:思考・行動のクセ・相関関係・原因と結果・コモンコーズ[2つのものごとが同じ原因で生じている状態。それら自体が原因と結果として結びついているようにも見えるが実際にはそうでない状態]・学習)

コーチは、クライアントがそれぞれの段階においてしっかりと振り返ることを支援することができる。どのようなスペース(空間・時間)をつくっているのか?沸き起こる強い感情や身体的に感じるもの、思い込みや意志をどのようにして気づいているのか?どのようにして周囲で起きていることや他者の内面で起きていることに気づいているか?ねらいは、クライアントがよりマインドフルネスを習慣化できるよう、クライアント自身の認識力に対する意識づけをすることだ。
自分のトリガーポイント(自己の気づきを高めるあるいは低下させる刺激)を知ることも必要なことだ。気づくことを意識的にするのと思慮深く考えた結果の気づきには違いがある。
瞬時に内省できる(In-the-moment reflection)ようになるには先ず思慮深く考え気づくこと。そうすると、立ち止まり一歩引く、という感覚を認知することができそれに反応することができる。
この段階で、クライアントが自問できることは:

  • 今、私は何を感じているのか?
  • どのような強い感情やモヤモヤをかくそうとしているか?また、何が私にそうさせているのか?
  • 今の私にとって本当に重要なものとただの阻害要因となっているものは何か?

クライアントの気づきを促す、コーチからできる質問:

  • 仕事において、最も手応えがあり力を発揮できている時とそうでない時はどのような時ですか?
  • 自分の行動で、意義のあることをしていると感じる時とそうでない時はどのような時ですか?
  • どのような時に八方ふさがりと感じますか?またそのような状態から解き放され自由を感じる時はどのような時ですか?

観察と傾聴
傾聴には少なくとも五つの聴き方がある。その中で最もマインドフルネスに関連する聴き方をあげる:

  • 聴き手が話し手の内容をどのように聴いているかを理解する聴き方
  • 話し手が話すのと同時にその内容の意味をどのように聴いているかを理解する聴き方
  • 話し手の言葉や文脈を超えてその真意に耳を傾け、広くとらえる聴き方
    ここであげた聴き方は、話し手のボディーランゲージや声のトーン、そして会話では表面化していない非言語的要素を聴きとるのだ。

注意すべきことは、自分の思考や瞬時に沸き起こった感情に流されるような聴き方にならないことだ。そうならないように、このように自問してみよう:

  • 無意味に関連付けや比較をしていないか?
  • 個人的な見解や基準で判断していないか?
  • 話し手にとって大切なことよりも自分が重要だと思っていることを優先して聴いていないか?

相手のものの見方やその人がその意味を見出すことに配慮することは、更なる気づきを促し、共感が高まる。そしてそこにはホンモノの対話が実現される可能性が生まれる。
くり返すが、クライアントは思考する時間を設け、環境を変えてみることで(例えば散歩をしてみる)このようなスキルを身につけることができるようになる。
次のようなルールをつくるのもいいだろう:“自分の考えを共有した時には相手の意見も求める”
あるいは、好奇心を湧き立てるようなこのような問い:“この人は自分にはないどのようなユニークな考えや知識をもっているのだろう?”
物事を広く観察するには全ての感覚を研ぎ澄ましている必要がある。このような能力を鍛えるマインドフルネスのトレーニング方法はたくさんある。マネージャーが比較的取り組みやすいものとしては、普段は流してしまうようなことに意図的に気づくよう促すことだ。すなわち、馴染みのあることをあたかも初めてのことのように探求すること。“今まで見落としていたことであらためて気づいたことは何?”と自問することで自分自身と身の周りの物事に対し洞察する力が芽生えるのだ。
コーチとして使える質問は:

  • 会議の中で、いつ・どのように一歩引いて観察する間をつくりますか?
  • 静かに立ち止まるために何ができますか?

直観と推理
直観の捉え方には大きく分けて二つある。その一つは、過去の経験に基づくもので本来、無意識あるいは本能的に瞬間的に理屈抜きに理解しそれに反応する思考行動。もう一方は、特別な経験を共有した相手と脳波がシンクロし、同じような思考から得る直観だ。
多くの人がこのような体験をしたことがあるであろう。
合理的な考えや決断をする上で情動的に良し悪しを判断していることは神経科学的でも証明されている。直観力を鍛えるには次のようなことも効果的だ:

  • 日頃から直観を使っていることを理解する。(例えば最近の出来事を例にとり、どのようにして難しい場面において決断したかを振り返る)
  • 直観力を試してみる。例えば“私は・・・・を感じ取れている?”と自問してみる。“私は今ここで起こっていること以上のことを感じている”と言葉に出してみる。
  • 純粋に直観がはたらいた時と、その反対に自分の中の恐怖や願望がはたらいた時の経験を振り返る。

人は自分の直観を認知し試すことで軽率、あるいは無謀な決断をあらためることができるようになる。
直観力はもはや闇雲に反応する力ではなく、意識的につくりあげるものだから。

結論
言うまでもなくこの記事に書かれていることはコーチにもいえることだ。マインドフルネスになると、自己認識が高まりクライアントとの関わり合いが深まるのだ。コーチがマインドフルネスの手本となることでクライアントがマインドフルを学ぶのである。


著者情報
デイビッド・クラッターバック
デイビッドはデベロップメンタルコーチング及びメンタリングのパイオニアであり、ヨーロピアンメンタリングアンドコーチングカウンセルの創設者の一人でもある。
コーチングカルチャーやチームコーチングに関する書物の第一人者であり、60以上の著書を執筆している。3つのビジネススクールで教鞭をとり、またアッシュリッジの職員であり、メンタリングやコーチングのグローバルネットワークであるコーチングアンドメンタリングインターナショナルの責任者を務める。

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by David Clutterbuck
Coaching World, Issue 19 August 2016 p22-24 Moving Towards Mindfulness
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチング空間の難しさ:倫理を超えて

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『コーチング空間の難しさ:倫理を超えて』の記事を御紹介します。


コーチング空間の難しさ:倫理を超えて
コーチング空間の難しさ:倫理を超えて

シチュエーションはこうだ:とあるエグセクティブ・クライアントとのコーチングの対話である。クライアントは既婚者、男性、最高責任者レベルの経営幹部。コーチとのコーチングを9ヶ月行った頃、”別のテーマについて”対話をしたいと申し出てきた。現在とてもストレスがかかっているシチュエーションであり、それは彼曰く”時間のマネジメントに関する”ことだと言う。そして彼は、男性の同僚と性的関係を持ったと告白した。今日はそれについてのセッションを望んでいるというのだ。

私は、上記のようなシナリオを”実際に自分に起きたこと”として、数々の倫理のトレーニングセッションで提示して来た。これに対して皆、コーチングの方向性や、将来的に生じるかもしれない問題やそれによりコーチング関係が終わってしまう可能性について思案し、いくつもの懸念を口にする人もいれば、肩をすくめるのがやっとな人もいた。どうしてそうなるのだろうか?

私たちが同じ倫理観の中でコーチングを行うとき、異なる価値観、信念、人生経験が、文化や法規と混ざり合って、無限のパターンの結果を生み出している。このコラムでは、3つの変数の相互作用について考えてみたい。

倫理:我々が守るべきいくつかの規範の一つ
まずは、コーチング空間における、倫理、モラル(道義)、法の違いと概要に注目してみよう。

  • 倫理は、”人間、またはそのグループの行動を司るモラルの原則”と定義されている。倫理は多くの場合、合意によって形成される。人のグループはそれぞれ、自らを律するために自分たちで倫理的な基準を作り出す。(例えば、コーチ、公認会計士、セラピスト、弁護士たちはそれぞれの倫理的基準を作っている)
  • モラル(道義)は”行いが、正しいか間違っているか、良いか悪いか、を区別する原理”、もしくは”特定の価値体系…特に、特定の人、あるいは社会が持つもの”であると定義される。モラルは、価値を基準としている。言い換えれば、モラルは我々に”何が私/我々にとって本当か/正しいか/良いものであるか?”を問うことを要求する。私の信じることは、宗教的なトレーニング、もしくは個人的な経験から生じている。
  • 法は、”法と調和する状態、あるいは質であるかどうか”である。法は社会的な合意である。我々にとって何が禁止されており、何が罰されるかである。

気をつけておくべきことは、多くの意思決定や行動が、ある規範では問題なく受けいられたり、別の規範では受けいられないことがあるということだ。更に、文化的な概念によるこれら3つの規範は、それが正しく見えるか見えないかなどによっても変わってくる。例えば:

  • ビジネス上、契約のクロージングのために賄賂や物を贈ることはある場所では違法であり、また別の場所では習慣として行われている。良いこと、人のために行われたことであれば倫理的であると見なされることもあれば、当たり前の慣習となっている行いでもモラルに反すると見られてしまうこともある。
  • 同僚とのデートは、法的、モラル的には何の問題もないが、会社の倫理ポリシーに違反することがある。また、もしそのデートの相手が、同じ命令系統に属する相手とのものであれば、法的な含みも出てくる。あなたが既婚者でありながら同僚とデートしていた場合には、倫理的、あるいはモラル的に物議をかもすことになるだろう。

同じ行動、違う視点
ICFの倫理規定は、差別(第1節、4項)についても言及している。ならば、もし私がゲイのクライアントとのコーチング関係を終了したら、それは差別ではないだろうか?
しかし、もし私がモラル的に同性の性的関係に反対であった場合はどうだろう? そこでコーチングを続けたなら、私は利益相反(第1節、8項/第2節、13項)の状況を作り出していないだろうか? 自己または他人に危険が差し迫っているかそれに近い状況(第4節、26項)について配慮する義務については? 彼自身が職を失う可能性が”危険”であるとするなら、私はそれをクライアントに伝えるべきだろうか? 彼の婚姻に関しては? 信頼関係の喪失? そしてそれは誰にとっての危険性だろう?-私のものか、クライアントのものか?

このシチュエーションにあった時、私はクライアントと彼自身の望む結果にフォーカスすることにした:彼の個人的な時間を、もっと彼の恋人と使えるようにするためにどうバランスをとっていくか。彼自身と、他の人たちの安全性についての倫理的な懸念から、法的な問題がないか聞いていった(その結果、可能性のある問題点はなかった)。私の価値観は世の中のひとつのものの見方でしかないが、その私のモラル感覚がコーチングを続けることを選択できたことに満足していた。後に、彼が自分自身の性的自認や能力について悩んでいたこと、コーチングでの安全性は彼にとってきわめて価値のあるものであったことを知った。

あなたには、このシナリオで”正しい”か”間違っているか”でものごとを判断する以上のことを学んで欲しい。私がこのシチュエーションを好んでいるのは、我々の倫理的実践についてのアプローチが十分であるのかに挑戦するものであるからだ。モラルや法の視点は我々の周りで常に変化していくが、それでも私たちは新しいシチュエーション、新しい挑戦に挑んでいかなくてはならないのだから。


著者情報
ジム・スミス、PCC
ジムはアメリカ合衆国をメインに活躍する、エグゼクティブ、ライフビジョン、およびエンハンスメントコーチであり、国際的なスピーカー、 著者、チェンジ・ストラテジストでもある。国際コーチ連盟のクリーブランド支部の創設者である彼は、現在は支部の倫理関連の連絡調整役を担っている。彼については、jim@theexecutivehappinesscoach.comへ。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Jim Smith, PCC
Coaching World, Issue 19 Augst 2016 p14-15 Complexity in the Coaching Space: It’s Far More Than Ethics
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】アウトドアでのウォーキングと会話

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『アウトドアでのウォーキングと会話』の記事を御紹介します。


アウトドアでのウォーキングと会話

「歩くことは人にとって最大の薬である」
ヒポクラテス

アウトドアでのウォーキングと会話

自然の中での運動を、コーチングの科学と技術に組み合わせることで、人に変化を起こす力が生まれます。ウォーキングと会話によるコーチング・セッションには、川の傍を流れに沿って歩くことや街中の探索、目的地を決めてのウォーキングから、山の頂上を目指すことや未知の場所を求めて海外へ遠征することまで、様々なものがあります。こうした機会は、いつもの職場を離れ、日々のルーチンを破壊することで、豊かなテーラーメードのコーチング体験を創り出してくれるのです。

エクスペリエンシャル・コーチングはこれまでにも、創造力を産み、生産性を高め、ストレスを減らし、頭をクリアにし、異なる視点への感謝をもたらすなど、たくさんの効果が確認されています。こうした効果はドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェによって「全ての真に偉大な思想は、歩くことから得られている」とまとめられてもいます。ウォーキングと会話によるコーチングは、初めは家族や友人同士での個人的なアウトドア体験から始まり、次に軍や探検などから、その後プロフェッショナル・コーチングの開発によってより洗練されてきました。

基本に立ち返る

この狂ったような21世紀の人々の生活の速度は、エスカレートする一方です。仕事、テクノロジー、ファイナンス、社会的な義務、政治、環境への配慮などなど、リストは続きます。その一つひとつのどれもが私たちに時間とエネルギーを要求しています。
これら仕事へのコミットメントや社会との関わりは、主に私たちに座っての作業を求め、世界中のメディアが「座ることで生じる病」として報道するような不健康や、肥満を引き起こす原因にもなっています。西洋社会では、人が1日に座って過ごす時間は8~10時間とも言われ、今もまだ増え続けています。しかし、進化の観点から見ると、人類は毎日12マイル(約19km)歩くようにデザインされています。
自然、そして狩猟・採集者としての遺伝生理学的な傾向に立ち返ることで、身体に生化学的な変化がもたらされます。より多くの血液と酸素が脳を巡り、脳細胞間や海馬(感情、記憶、自律神経をつかさどる)で新たな繋がりが形成されていきます。要するに、アウトドアでのウォーキングと会話は、生来の神経的、生物学的、遺伝的な要素をサポートすることで、人の認識機能を高めてくれる、ということです。

ウォーキングの素晴らしい働き

ウォーキングと会話のもたらす無数の恩恵は、全体的な健康と、メンタルと身体を繋ぎ合わせる手助けをしてくれます。下記のリストは、その一部です。
・認識力を高める
・記憶、論理的な思考、学習をサポートする
・生産性とエナジーレベルを上げる
・自己肯定感を高め、幸福度を上げる
・不安を和らげる
・ストレスや憂鬱な気持ちを和らげる
・脳細胞を健康に保ち、ニューロン形成を助ける
・BDNF(脳由来神経栄養因子)のレベルを高める
・体内のリズムや、体内時計を整える
・ビタミンDの吸収を助ける
・食欲増進
・心臓病、アルツハイマー、脳こうそく、糖尿病の可能性を減らす
・筋肉と骨を強くする
・力とバランス力を鍛える
・血液の流れを良くし、細胞に酸素、糖分、代謝産物を届ける
・血液の流れを良くし、細胞の毒素排出を助ける

コーチングセッションでのウォーキング

コーチングの効果を高めるために、アウトドアでのウォーキングと会話は様々な形で取り入れることが可能です。
・いつものコーチングの効果を高めるために、ウォーキングと会話だけで構成するセッションを行う
・時間(半日、一日、複数日)、場所、距離、アプローチを変えて、ウォーキングと会話のセッションを専用にデザインする
・コーチングの合間に、アウトドア環境を利用してコーチングをベースとしたエクササイズを利用する(例: 個人での振り返り、マインドフル・ウォーキング/シッティング、呼吸法、対話により関係性を深める)
・スカイプなどのオンラインツールを使い、あなたの「グリーンオフィス」(アウトドア)からバーチャル・コーチング・セッションを行う

注意点

アウトドアはコーチングをサポートし、あるいは深めるための素晴らしい手段です。高いクオリティーのコーチングを提供するために、次のことに注意してください。

実験。もしウォーキングと会話を行うのが初めてであれば、仲間や希望するクライアントに試してもらってからにしましょう。近場の公園やオープン・スペースで試し、学びながら調整しましょう。

クライアント目線で。誰もがアウトドアを楽しめる訳ではありません! クライアントと話し合ってアウトドアのことは決めましょう。契約書も確認すべきでしょう。

荒天時のプランを。クライアントによっては防水のジャケットとブーツで、雨傘を差すことを喜んでくれる人もいます。しかし一方で、濡れない、もっと快適な場所を希望する人もいます。

1に場所、2に場所、3に場所。場所と距離、あくっせすのし易さ、フィットネス・レベル、信頼性や健康に合わせて、会場とルートを考えましょう。

健康と安全への配慮。ファーストエイド、一般賠償、専門職業責任保険がカバーされることを確認しましょう。初めてのクライアントの場合は、あなた自身の安全にも配慮を。

クライアントの医療情報の開示。通常のコーチングパートナーシップではあまり必要がありませんが、アウトドアでのウォーキングを行う際には、クライアントの健康状態(医療的なコンディション)を明らかにしておきましょう。

「仕事での難題、時間のかかる趣味での気晴らし、家族間のデリケートな話題について、現代社会の装飾物に埋められていない場所で話すことが私の思考を整理してくれる」
ソフィー、プロジェクト・マネージャー

「私はいつも、外で歩いている時に、一番ものごとを深く考えられると思っています。新鮮な空気を吸いながら身体を動かしている時が、頭の中にあるものについて考えをめぐらすのに丁度良いのです。」
ピート、エンジニア


著者情報
アンナ=マリー ワトソン、ACC
アンナ=マリーはパフォーマンスコーチで、セッションの前、最中、後にクライアントとアウトドアで過ごすことを好む。彼女のコーチング哲学と精神は、彼女のコンサルタントビジネス、Reach and Moreにも反映されている。彼女はまた、アナリティック・ネットワーク、mBrainingコーチ、eDISCとiWAMサイコメトリック・プロファイル・ツールズの認定者でもある。
アンナ=マリーは、マウンテンリーダーの資格、ワイルダーネス・ファースト・エイドの認定資格を持ち、10年以上の国際的な大会での経験を持つブリティッシュ・マウンテニアリング・カウンシルのメンバーでもある。現在はFresh Air Learning Companyとパートナーシップを組み、チームのアウトドアでの体験型学習のファシリテートなどを行っている。詳しくはrfmcoaching.comを参照のこと。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Anna-Marie Watson
Coaching World, Issue 19 August 2016 p16-18 Walking and Talking in the Great Outdoors
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】気づきのためのS.T.A.R.T. 方程式 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『気づきのためのS.T.A.R.T. 方程式 ~道具箱から~』の記事を御紹介します。


コア・コンピテンシー#8
気づきの創造

複数の情報を統合し、正確に評価して、クライアントの気づきを助ける解釈をし、それによってお互いに合意した結果を実現する能力

気づきのためのS.T.A.R.T. 方程式 ~道具箱から~
気づきのためのS.T.A.R.T. 方程式 ~道具箱から~気づきのためのS.T.A.R.T. 方程式
コーチングの実践において、私たちはスタートしたい重要なプロジェクトを一つかそれ以上持ったクライアントに出会うことがあります。しかし、彼らはそれを「スタート」するのとはあべこべに、自ら「ストップ」してしまうことが多くあります。もし、彼らがそのプロジェクトをスタートするために、気づきについての評価基準を提供することが出来るとしたら、あるいはスタートさせるために必要なことを教えることができるとしたらどうなるでしょうか?

ここでは、人間の関心の4つのクアドラントにヒントを得た、S.T.A.R.T.と呼ばれる実践的なマトリックスを紹介します。「スタート」することは、この方程式の頭文字に則った行動を開始することになります。

ワークシート:気づきの方程式
S.T.A.R.T.©の準備状況を評価する

プロジェクト名
項目 質問例
(その時々に合わせて改変する)
共鳴サイン
(プロジェクトに向かって動いているか)
不協和サイン
(プロジェクトから離れる動きか)
掛け合わせ
(1) (0) スコア
Specify
特定
あなたの焦点は?
どんなフィールドやエリアでやりたいですか?
Today
今日
あなたの都合は?
時間枠は?
最初の一歩を踏み出すのに良い日はいつですか?
Achievable
達成可能
あなたの本当の才能は?
あなたの能力は?
達成の可能性を0から10で答えると何になりますか?
Relevant
重要性
あなたが情熱を注げるのはどこですか?
何故大事なのですか?
あなたのコア・バリューは?
Target
ターゲット
そのプロジェクトであなたは何を得たいですか?
その次に価値のあるターゲットは?
トータルスコア

判断項目
S.T.A.R.T.の文字は、それぞれ一つの判断項目を表します。
S—Specify/特定
(クライアントの焦点がどこにあるか)
T—Today/今日
(クライアントの都合、時間枠)
A—Achievable/達成可能
(クライアントの能力、才能)
R—Relevant/重要性
(クライアントにとって本当は何が重要か)
T—Target/ターゲット
(クライアントのゴール)

方程式
誰でも簡単に出来る、式が正か負かを元にしたこの簡単な組み合わせにより、クライアント自身のプロジェクトへの準備状況がS.T.A.R.T.なのかS.T.O.P.なのかを判断することができます。

S.T.A.R.T.の各項目には、1か0の点数を付け、全体を掛け合わせます。式が正となるためには、全ての項目が1で埋められている必要があります(1x1x1x1x1=1)。この場合、クライアントはプロジェクトに向けて動く準備ができていると判断されます。逆に、1つ以上の項目が欠けている場合、全体の積は0となります(1x0x1x1x1= 0)。この場合、式は正とはならず、コーチはクライアントをS.T.O.P.(プロジェクトの成果に向けた解決策=Solutions Toward Outcome of Project)に向けてサポートする必要があることでしょう。

まずはクライアントに準備状況を判断したいプロジェクトを選んでもらうことから始めましょう。ワークシートの一番上の欄に、そのプロジェクトの名前を入れてもらいます。次に、書かれた質問をクライアントにしていきます。最初と最後の質問(SpecifyとTarget)以外は、順番を変えても構いません。また、質問も書かれたものを例文として、クライアントに合わせて変えていただいて結構です。

答え毎に、クライアントにそれを共鳴サイン(プロジェクトに向かって動いているか)か、不協和サイン(プロジェクトから離れる動きか)か判断してもらいましょう。共鳴サインならスコア欄に1を、不協和サインならスコア欄に0を記入します。全ての項目が採点されたら、点数を掛け合わせてください(1=S.T.A.R.T.、0=S.T.O.P.なのを思い出してください)。結果が出たら、クライアントにこれについてどう思うかを聞き、次のステップを見つけ出す機会を与えるように質問していきましょう。

S.T.A.R.T.方程式はコーチにとって、(クライアントの気づきを創造する他の手段と同じ様に)目に見えないクライアント自身の考えや気持ちを可視化することが出来、彼らの知識や気持ちが物事をスタートさせる力になるのを手助けできる価値あるツールです。


著者情報
シルヴィア・ヴィオラ、PCC
シルヴィアはエグゼクティブコーチにして、コーチトレイナー、法律家。世界中での二十年以上の経験、トレーニング、コーチングは、多様な文化を持つエグゼクティブやビジネスピープル達を成功に導いてきた。複雑な中のシンプルさや、貢献の評価、誠実と自由などを好んでいる。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Silvia Viola, PCC
Coaching World, Issue 19 August 2016 p10-13 S.T.A.R.T. Formula for Awareness
http://icfcoachingworld.com