カテゴリー別アーカイブ: 国際コーチ連盟(ICF)について What is ICF?

【CoachingWorld】最適なコーチング料金システム設定のコツ

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年8月号から、田中チズ氏に翻訳いただきました『最適なコーチング料金システム設定のコツ』の記事を御紹介します。


最適なコーチング料金システム設定のコツ
最適なコーチング料金システム設定のコツコーチングの料金システムは、前払いか後払いのどちらかが基本です。両者の長所と短所を理解し、皆さんのスタイルに最適な料金支払い体系を選びましょう。

世界各国にクライアントを持つ私は、通常、前金制のコーチングを提供しています。達成したい目標やテーマに応じて、クライアントが適切なセッション時間やメニューを選択できるよう、ホームページのデザインはとてもわかりやすく構成しています。全タイプ別の料金を明示し、シンプルな決済画面を採用しています。とはいえ、クライアントがそのシンプルさに惹かれ、海外のコーチングサイト上にクレジットカード情報や個人情報を入力し、簡単に料金を支払ってくれるだろうと予想するのは早合点です。返金保証制度はクライアントの安心につながるため、キャンセル料や返金の方針はホームページ上に明確に表示しておくことが大切です。

コーチング業界でよく使われているもう一つの手法が、初回のみの無料セッションを提供することです。コーチングのテーマや目標の発見をサポートする「ディスカバリー・セッション」などのセッションや会話は、潜在クライアントおよびコーチがお互いを理解し合うのにとても役立ちます。潜在クライアントが特に希望する場合には、「ディスカバリー・セッション」の一環として、15分間で一つのテーマを掘り下げる「レーザーコーチング・セッション」を行えば、クライアントがあなたのコーチングスタイルを知るきっかけになるとともに、コーチ側にとってもセッションを始める前段階としてクライアントを評価する助けとなるでしょう。

明確や料金システムや無料トライアルを提供しても、前金制がクライアントにとってリスクを感じるものであることに変わりはありません。割引制度やセッションの進捗に応じて追加料金を支払っていく追加課金制度など、支払い方法の選択肢についても準備しておくことが必要です。前金制度を維持しながらも柔軟性があることがこの方法の長所で、固定クライアントの確保が難しくなる可能性がある点、クライアントによるクレジットカードの支払い取り消しの可能性が高まる点などが短所として挙げられます。

なぜそのようなリスクを冒す必要性があるのか、疑問に感じる読者もいるのではないでしょうか。クライアントが支払いを拒否する可能性ももちろんあるでしょう。その場合、第三者機関に売掛金の回収を委託したり、裁判を検討することがリスク回避の手段となります。また、国によって違いますが、回収不能分を不良債権として書き換えることも検討できます。しかしながら、コーチングのようなサービスにおいては泣き寝入りするしかないケースも現実的には多く存在します。

一方、後払い制度の長所は、新規クライアントの獲得が比較的容易である点にありますが、当然ながら、支払い漏れや延滞が起こる可能性が高くなることが短所となります。いずれにしても、法的な回収手続きや第三者による代行回収はコストも時間もかかるということを肝に銘じておきましょう。

現在の料金システムを継続するのか、いくつかのオプションを組み合わせるのか、あるいは新システムを導入するのか – いずれの場合にも、弁護士や会計士のサポートを受けながら、皆さんのスタイルに最適な料金システムを導入してください。きちんとしたコーチングの契約書を作成し、事業内容の変更に応じてそれを改訂することも重要です。この機会に十分なリサーチを行い、皆さんが作成した契約書の全貌をしっかりと理解してください。また、コーチになって数年以上経過している場合には、新料金システムを導入する前に、会計士に相談して、必要に応じて会計処理を行ってください。いずれの料金システムを採用している場合にも、賠償責任保険などの保証制度は検討の余地があるでしょう。


著者情報
ドミトリー・コンドラティエフ
20年間に及ぶ銀行業界での経験を通じ、事業主の性格や特徴が外的環境と同じくらい影響力を持つことを実感しているドミトリー・コンドラティエフ氏。同業者や金融クライアントとの長年の関わりを通じて、心理的な要素が及ぼす個人的な決断や事業判断への影響についての深い洞察を有する。ポジティブ・コーチング合同会社の創設者で個人事業主。15カ国の個人クライアントに、よりよいビジネス、キャリア、ライフスタイルをもたらすエンハンスメント・コーチング、およびビジョン形成を通じたサポートを行っている。

【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Dmitry Kondratyev
Coaching World, Issue 19, August 2016 p8 Science of Coaching
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~』の記事を御紹介します。


勇気あるコーチングによる次の時代
~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~あなたは解雇に直面したクライアントをコーチングしたことがあるかもしれません。しかし、もしそれが知能を持った機械のせいで働いていた産業自体が消滅したことによるものだとしたらどうでしょうか?

まるでSFのようですが、それは現実になってきています。私達は「雇用」そのものの変化に直面しているのです。でも、コーチである私達は、その対策を提示することができるのではないでしょうか?

人工頭脳学について追いかけてでもいない限り、人工知能(AI=Artificial Intelligence)の目覚しい進歩に、あなたはすぐに置き去りにされてしまうことでしょう。コンピューターによる実行の複合体、もしくは不可解な推論として大まかに定義される「AI」は、長らく会話の認識や、言語の理解、顔の認識といった期待された役割を果たすことなく、あざ笑われる存在であり続けていました。しかし近年、これらの目的は果たされてきています。スマートフォンに特定の友人が写った写真を表示するように話しかけると、AIはあなたの言葉を解析し、要求を理解し、人物を認識して画像を探してくれます。

この進歩のスピードは、いくつもの分野を混乱させるに足る程になっています。まだほとんどの人が自動運転の車を見た事がないというのに、モルガン・スタンレーは10年ほどで長距離トラックの仕事は自動操縦車に取られてしまうと予見しています(自動運転のトラックは、ネバダ州ですでに稼動し出していることが考慮されてのことです)。実現すれば、アメリカで300万人の仕事がなくなることになります。

しかし、あなたのクライアントはホワイトカラーであり、車の変わりに机に座り、頭を使うことで対価を得ているとしましょう。例えば年間に35万ドルを稼ぐウォール街のアナリストのようにです。それでもAIはその仕事も自動化しています。AIアナリティクスカンパニーの創立者ダニエル・ナドラーは2026年には33~55%のファイナンス関連従業員の仕事はソフトウェアに置き換えられてしまうと考えています。彼は、クライアントが人間によって仕事が成される必要性や欲求をもはや感じなくなってきていると指摘しています。

他にも、倉庫の荷造り人(二足歩行のロボットに置き換えられた)、受付係(マイクロソフトは人口のプロトタイプを3年前から配置)、警備員(ドローンはテロリストから違法駐車までを狩っている)など、多くの弱い産業が倒されてきました。これらは全て長い時間をかけて起きたのではなく、10年~20年程度の間に起きています。もしこれでもなおあなたにとって遠い世界の話のように感じるなら、ガートナーのダリル・プラマーはこれから1年か2年でこんな変化が起きると予言しています。

  • 現在の全てのビジネスの20%(レポートの記述、法的な書類など)は自動化される
  • 300万人以上の従業員が「ロボット上司」によって管理される
  • 45%の急成長企業では、スマート・マシンより従業員の数の方が少なくなる

バンク・オブ・アメリカは業界全体が自動化に直面している産業として、農業や、ヘルスケア、教育、エンタテイメントを挙げています。コンピューター科学者のモシェ・ヴァルディ(Moshe Vardi)は2045年にはほとんどの仕事が自動化されると指摘しています。

もしあなたがマネージャーをコーチしていて、その人たちがマネージするべき人間が居なくなってしまうのだとしたら・・・?

一度、深呼吸してみましょう。

コーチは今すぐにコンピューターに置き換えられてしまう危険性はありません(下記コラム、「どの仕事が一番安全か?」を参照のこと)。安全性の高い仕事は、人間の肉体的、あるいは精神的な部分に直接関わっているものになります。
ホワイトカラーのクライアントたちは、彼らの仕事が不要になるという説を聞いても、鼻で笑うかもしれません。彼らの多くは働きすぎて、山が消えていっていることをイメージすることが出来ないのです。しかし、ワーナー社のアニメで有名な、ロード・ランナーを追いかけるワイリー・コヨーテ(訳者注:トム&ジェリーのトムのように、俊足の鳥を追いかけては、毎回崖から落ちたり岩につぶされたりしてコミカルに失敗するキャラクター)が崖から落ちる時のように、その瞬間まで本人は全て上手くいっていると思っているものです。崩壊は、もし皆が事前に訪れることを知っていれば、そこまで崩壊的にはならないはずなのですが。

コラム:一番安全な仕事は何か?

2013年のオックスフォード大学の研究で、賃金と職業のサイズごとに仕事が自動化される可能性が示されました。

最もリスクが高いのは、レジ係、小売業の販売員、外食産業の労働者でした。在庫管理者から石工まで多くの物理的な仕事も、最近進化が特に顕著なロボティクスなども含めた自動化によって、2013年以降もリスクが高いとされています。ボストン・ダイナミクスのアトラス・ロボットは、荷物を持ったまましっかりと二足歩行が出来るようになっています。

同様にリスクが高いのは、テクニカル・ライター、から保険の販売者、核施設の技術者、事務補佐官などの知的労働者になります。

コーチについては特別には言及されていませんが、心理学者、教師、セラピストはリスクが低いとされています。看護師や科学者も同様です。

しかしながら、研究の結論からこのような問題をとりあげておきたいと思います。私が安全だと考えた経営責任者と弁護士は、短期的には正しいが、究極的には先見の明がないようです。やがては企業内での役員の意思決定も、十分な速度を持って事態にあたるためにAIにとって代わられることになります。

 

知識人にとっての自明の通説として、自動化は、人間をもっと報酬の高い、繰り返し作業の少ない仕事に移行させてくれるものだという考えがあります。馬車の製作者は、自動車のデザイナーとなることでより満たされます。流れ作業の労働者は、会計管理者となることでより幸せになるでしょう。従って、自動化は常に、究極的には全員の状況を改善することになるという考えです。

しかし、今はその通りになっていません。コンピューターは知的なタスクもこなせるよう学んでいます。クリエイティブで知的なレベルの労働者は、その仕事まで自動化されたらどこへ行けば良いのでしょうか? 近代最後の砦、ジョン・ヘンリー(19世紀末、機械化が進み多くの労働者が解雇されそうになった時、機械と勝負して勝ったら解雇を取り消してくれと持ちかけ、戦いに勝つもそのまま亡くなった英雄)となるのは、我々の魂に語りかける仕事になるでしょう。すなわち、芸術家、治療師、そしてコーチです。

多くの人が近いうちに自動化のプレッシャーを感じることになるでしょう。産業全体が消失することによって失業してしまうリスクが高いクライアントを、あなたはどうやって助けることができるでしょうか? 彼らの能力が、より安全な仕事に使えそうか評価しましょう。それが誰もが知る共通のニュースとなる前に、社会的な大変動のために備えようと考える先進的なクライアントは居るでしょうか?

この待ち受ける大変動の裏側に、更に大きな変動もあります。ある日、AIたちは意識を持ち、人間のようにクリエイティブで独立した思考と感情を持つようになるでしょう。それがいつ、どのようにして起きるかはまだ誰も知りません。しかし、ほんの一部の専門家はそれが起きるのではないかと疑っています。ステファン・ホーキング、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク―この惑星で最も頭の良い人間の内の3名です―は、賢くなりすぎたAIは、人類の生存を脅かす可能性を現に有していると言っています。

チャールズ・アイゼンシュタインは著書『The More Beautiful World Our Hearts Know is Possible(我々のハートが知っている「より美しい世界」は実現可能である)』の中でこう述べています。「もしあなたがいくつかのストーリーの間にある神聖な場に居るなら、それを認めよう。古い安全な体制を失うのは恐ろしいだろうが、自分が失うことがないと思っていたものを無くしても、大丈夫であることに気づくはずだ。」 2030年に起きるであろう激震に比べれば、今日の比較的穏やかな状況はこの神聖な場、状況を反映し充電する場のような状態にあります。ただし、人間性、あるいは人類愛といったものはこの場にはありません。

これからは、人間のこの状況を深く理解し、AIたちに人間を受け入れ決して我々を殲滅しないよう教える人々が必要になります。それはコンピューター技術者ではなく、心理学者であり、セラピストであり、コーチであるでしょう。

あなたは将来、この世界を救うかもしれないのです。


著者情報
ピーター・スコット、ACC
ピーターは情報技術と人間開発、両方の分野で30年以上の経験を持つ。『コントロールの危機:人口超知能は人類をどう破壊し、あるいは救うのか(Crisis of Control: How Artificial SuperIntelligences May Destroy or Save the Human Race)』の著者。詳細についてはHumanCusp.comを参照のこと。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Peter Scott, ACC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p26-28 Brave New Coaching World

http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、田中チズに翻訳いただきました『社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進』の記事を御紹介します。


社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進

グラクソ・スミスクライン(GSK)社は、イギリスに拠点を置く世界有数のヘルスケア企業で、150カ国以上で営業活動を行い、医療用医薬品、ワクチン、コンシューマー・ヘルスケア製品の3領域で事業を展開しています。GSKが導入している社内コーチング制度は、職種や等級を問わず各国の社員に広く認知され、2010年度の開始以来、現最高経営責任者(CEO)や次期CEOを始めとする経営陣からも大きな支持を得ています。さらに、このコーチング制度の導入により、6,600万米ドルの投資利益率(ROI)を生み出したという事実は驚きに値します。

持続可能なコーチングモデルを構築

2010年頃のGSKでは、コーチングに費用を投じつつも、利用は受動的で責任の所在も不明確でした。その一方で、変化を巻き起こし現状を打破できるような人材を惹きつけ、育成し、保持するための具体的な制度導入の必要性を経営陣は強く感じていました。このような背景から同社では、事業に変革と成功をもたらす戦略的なツールとして、コーチング制度の再構築を行いました。現在では、GSKの人材育成、リーダーシップ、組織開発戦略にコーチングが不可欠な存在となっています。
GSKは、全世界でのプログラム導入を推進するために、一貫した水準と倫理規定を有する国際コーチ連盟(ICF)に支援を求めました。まず、高水準の社内コーチング制度を全世界に導入することを目指し、「ザ・コーチング・センター・オブ・エクセレンス (CoE)」を発足しました。この組織の役割は、より容易なコーチングへのアクセス、高品質かつ効率的なコーチングの維持、コスト面を抑える創造的なアプローチなどの領域から、各国で実施されるコーチング制度を標準化することです。GSKからの予算はなく、各ビジネス・ユニットからの資金調達でこの組織を支援しています。各組織のリーダーシップやコーチ達は、「CoE」を持続可能な組織だと考えています。2016年度「ICF 国際プリズム・アワード」にノミネートしたエイドリアン・マションPCC(GSKの社外コーチ)は、「CoEは高品質なコーチングによってビジネスを支援する制度で、効率化、厳格さ、規模、創造性などでコスト面を管理していくモデルを採用しています」と語ります。
アジア・太平洋および新興市場担当のロジェリオ・リベイロ シニアヴァイスプレジデントはこのモデルについて次のように述べています。
「もし本社が予算を負担していたら、私自身を含む経営陣はROIの測定に躍起になることでしょう。コーチング制度とは、本社から予算が出ているから利用するのではなく、必要性があるからこそ使うべきもの。コーチングが次世代リーダーの育成につながると心から信じることが大切です。」
GSKのコーチング制度は、200人以上の外部コーチ、1,000人以上の社内コーチの他、コーチングスキルを持つ約1万6,000人のマネージャーやリーダーが支えています。外部および社内のエグゼクティブ・コーチはすべて有資格者で、そのほとんどがICFの認定コーチです。また「ジョブ・プラス・コーチ(JPC)」と呼ばれる社員コーチもボランティアでコーチングを行っていることが特徴です。これらの「JPC」は研修を受講し、その後、同僚へのコーチング・セッションを講師が審査する資格試験にパスしています。また、四半期毎の指導やコーチング・セッションの定期的な評価などを通じて水準を維持しています。GSKのリーダーシップは「JPC」を組織や社員にとって有益なものだと考えています。このボランティア制度によって、大多数のコーチングを勤務時間中に行うことができます。またJPCメンバーにとっても、他のコーチやマネージャー、リーダーと同様の自己開発の機会を得ることができます。GSKは「JPC」の価値について公にも語っており、それに倣って同様のコーチングモデルを導入する企業も増えてきています。

次世代リーダーを社内で育てる

リーダーシップもコーチング制度を強力にサポートしており、6割を超える経営陣が定期的にコーチング・セッションを受けています。コーチング部門シニアヴァイスプレジデントのサリー・ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「コーチングはリーダーシップも多いに支援しており、この制度について彼らもオープンに意見を交わしています。彼らはコーチング制度を、事業の成功のためだけでなく、最高の自分になりたい社員を支援するためのものだと考えています。治療や矯正ではなく、社員のさらなる成功をいかに支援できるかという位置づけです。」
リーダーシップ達はコーチングの価値を確信しており、エグゼクティブ・コーチング・プログラムも推進しています。アンドリュー・ウィッティ CEOは、最高責任者級の次世代リーダー育成強化プログラム「エンタープライズ・リーダーシップ」を導入しました。これは、将来的に最高責任者に就任する可能性を持つリーダーを対象とし、1年半のエグゼクティブ・コーチングが含まれたプログラムです。過去に同研修に参加したリベイロ氏は次のように述べています。
「シニア級の社員自身が、よりよいリーダーになるという自己実現のためにコーチングを行っています、と宣言することには強いメッセージ性があります。この取り組みは当社の組織開発に大きな影響を与えていると思います。」
次期CEOに指名されているエマ・ウォルムズリー氏は、2017年3月にGSK社初の女性CEOとして就任予定(2016年11月時点)。彼女は、コーチング、スポンサーシップや対話を通じて女性管理職の割合を増加することを目的として発足した女性活躍推進プログラム「アクセラレーティング・ディファレンス(AD)」の出資者3名の1人でもあります。ウォルムズリー氏は次のように述べています。
「組織のあらゆる階層で女性が活躍することは、社内で模範的な女性社員と関わる機会が増えるということです。キャリア形成の将来像も描きやすくなるでしょう。また、コーチングやメンター制度に触れる機会が増えるほか、職業人、個人としての人生の中で多くの女性社員が直面する課題について、実践的なガイダンスを提供することができる取り組みだと考えています。」
今年度は220人が参加する「AD」には、12回のコーチング・セッション、6日間の半日グループコーチング・セッション、シニアリーダーによるスポンサーシップが含まれています。マションPCCはプログラムの内容について次のように述べています。
「ADプログラムでは、自信、存在感、遂行力、影響力、課題への取り組みなど様々な領域のスキルを学んだ後、それらすべてを融合して実践する実力を習得することができます。」
GSK全体の昇進率は女性社員26%、男性社員27%である一方で、2013年度に「AD」を受講した約46%の社員が最低でも一ランク上への昇進を果たしています。また従業員定着率は、同プログラムを受講していない女性社員が69%、男性社員が71%である一方で、同プログラムの受講者の定着率は76%となり、離職を防ぐ効果も証明されました。さらに「AD」を受講した管理職の効率性は、対照群の管理職グループの2.1%と比較して3倍以上も高い(7.7%)という結果が出ています。プログラムを受講したあるコマーシャル・シニアヴァイスプレジデントは、次のように述べています。
「コーチングのおかげで、自分自身のポテンシャルを最大限に発揮する方法がより明確になり、私の人生が変わりました。キャリアの中盤でコーチングを知ったので、もっと早く知っていればと感じています。」

各国に広がるコーチング制度

文化的背景も異なる様々な地域へコーチング・プログラムを導入することには課題も伴いますが、GSKは、組織内の全社員がコーチングを体験する機会を享受できるように取り組みを続けています。ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「コーチングで構築されるのは上下関係ではなく平等な関係。私達は、事業目標を達成するという目的に、コーチングがどれほど大きな影響を与えるかということを体感してもらうサポートをしているのです。時間と労力をかければそれなりの効果はすぐに現れます。ただ、メンター制度やコンサルティングとの違いや、長期的かつ持続的な成長というコーチングが持つ高い効果が腑に落ちるまでには、相当の時間がかかるものです。」
新しい職責に就いた外国人社員が文化的な問題に直面することもあり、GSKはコーチング制度による課題解決のサポートも提供しています。前述のリベイロ シニアヴァイスプレジデントが現職に就任した際、ブラジルからイギリスへと赴任した頃の課題が実例です。新しい役割や職責に慣れようとする一方で、文化の違いを感じていました。そして、異文化の中で新たな業務を遂行するためにコーチングを活用して発想の転換を行うことにしました。当時の体験についてリベイロ氏は次のように述べています。
「それは素晴らしい体験でした。異なる文化的背景を持つ私ですが、現在ではグローバル戦略に貢献することができていると感じています。」
リベイロ氏のようなリーダーを支援していくため、GSKのコーチング・プログラムは躍進を続けています。全組織に体系的にコーチングが浸透し、コーチングの活用率はなんと2,900%も増加し、社員のやる気はますます高まっています。ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「リーダーシップの効率性という本来の趣旨に加え、社員のやる気や満足度にも非常に高い波及効果が出ています。ICFのガイドライン『ICFコア・コンピテンシー』を活用する、認定コーチを使う、コーチングの水準を維持するなどの注意点を守れば、コーチングは全社員におすすめできる有用なプログラムです。シニアリーダーからの応援も不可欠なので、シニアリーダーや経営陣からのスポンサーシップも非常に重要です。」


高い効果を持つコーチング制度を表彰
グラクソ・スミスクライン(GSK)社は、2016年度「ICF 国際プリズム・アワード」の受賞企業。国際コーチ連盟(ICF)は、キャリアコーチング分野で先進的な企業を表彰していたICFトロント支部の取り組みを発想に、2005年に同アワードを開始した。プリズム・アワードは、企業規模や業種を問わず、キャリアコーチングへの様々な貢献を称えて授与される。2016年度の受賞候補企業は48社。世界中のICF会員と認定コーチで構成された審査委員会が、以下の評価基準から厳正に審査した:測定可能な影響度/厳格な水準の維持/ 主要な戦略的目標の達成度/ 企業文化への貢献度

【翻訳 田中チズ】
Coaching World, Issue 20 16, November 2016 p20-22 Creating a Coaching Culture for Better Talent, 2016 Prism Award Case Study
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】未来の仕事のためのコーチング

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『未来の仕事のためのコーチング』の記事を御紹介します。


未来の仕事のためのコーチング未来の仕事のためのコーチング
コーチとして私たちは、「今の彼ら」としてのクライアントと会う必要があります。しかし、クライアントが自分自身の現状や今の目標に集中しすぎるあまり、未来を見ることが出来なくなっていることに気づくこともままあります。そんな時コーチとして私たちは、自分のクライアントが未来のトレンドに目を向け、仕事と私生活の双方において適切で満ち足りた状態を保つための戦略を発展させられるように、サポートすることができます。

11項目あるICFのコア・コンピテンシー(国際コーチ連盟が定める核となる能力水準)は、私たちがコーチングにおいて一貫性のある体系立てられたアプローチをする助けになってくれます。人口統計的、経済社会的、地政学的、あるいはテクノロジー的なトレンドが急激に変化し、変わり続ける現状に直面する中で、将来の仕事に向けて適切な舵取りをしようとするクライアントをコーチングする時には尚更です。

下記のコア・コンピテンシーは、こうした課題に対して特に有効です。

  • 積極的傾聴(Active Listening)
  • 人を動かす質問(Powerful Questioning)
  • 気づきの創造(Creating Awareness)
  • 行動のデザイン(Designing Actions)
  • 計画とゴール設定(Planning and Goal Setting)

これらのコンピテンシーを念頭に置きながら、メガ(大きな)トレンドと未来の仕事について近年発表された解説を見て行きましょう。

世界経済フォーラムの「仕事の未来」
2016年1月スイスにあるダボスで行われた世界経済フォーラム(World Economic Forum/WEF)では、いわゆる“第四次産業革命”と、未来の仕事とスキルについて大きくとりあげられました。WEFは2つの大きなカテゴリー、「人口統計/社会経済」および「テクノロジー」に分けて、時代の変化の要因となる様々なことがらを挙げました。それぞれ5つずつ、特に大きな要因となるものを挙げると、

人口統計/社会経済:

  • 「仕事」の性質の変化、柔軟化
  • 新興市場でのミドルクラスの出現
  • 気候変動、天然資源
  • 地政学の不安定さ
  • 消費者の心理、プライバシー問題

テクノロジー:

  • モバイルインターネット、クラウド技術
  • 処理能力の向上、ビッグデータ
  • 新たなエネルギー供給とその技術
  • IoT(モノのインターネット)
  • シェアリング・エコノミー、クラウドソーシング

テクノロジーは時代の変化の重要な要因ですので、コーチである私たちはクライアントとの対話にオールラウンドに対応していくため、上記のトレンドなどを押さえておく必要があることでしょう。

メガトレンド
WEFと同様に、いくつもの利益団体やシンクタンク、プロフェッショナルの協会などが特定の国、産業、プロフェッショナルに関連するメガトレンド(5年~20年に渡るトレンド)にアプローチしています。2016年オーストラリアのCommonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO).による、「Tomorrow’s Digitally Enabled Workforce」もその一例です。

CSIROのレポートは労働者に影響がある6つのメガトレンドを挙げています:

  1. 急激な技術の変化
  2. デジタル技術とプラットフォーム・エコノミーの登場による境界のあいまい化
  3. 労働者間での起業家的なマインドセットの必要性の向上
  4. 仕事場での文化と世代の多様性
  5. スキルの障害の増加
  6. サービス業で続く成長

これらのメガトレンドの意味は、個人、企業、コミュニティー、そして政府にとって重要です。CSIROのレポートは、新しいスキルとマインドセットは未来のために必要であることを明確にしています。そのためには、教育や生涯学習、デジタルに関するリテラシー、STEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)スキルが重要になります。私が見たところでは、人によってはArt(芸術)の大切さを反映し、SETMに“A”を足してSTEAMにするべきだという人もいるようです。

これらのメガトレンドは、変化し続ける労働市場に機敏に対応していくために、コーチたち、そしてそのクライアントにも心構えとマインドセットの変化を求めています。CSIROは焦点を当てるべき分野として以下の様なものを挙げています:

  • 人口統計と消費者のニーズや好みの変化など、様々な仕事への認識の変化
  • 新しいビジネス、雇用のモデル
  • シェアリング・エコノミー、フリーランスなどの増加

クライアントに問うべき質問を問えるようになるために、コーチとして私たちはこれらのトレンドとその意味を知って置くべきでしょう。

未来のコンピテンシー
2014年、コーン・フェリーは38のコンピテンシーから成る、世界中の仕事で求められるリーダーシップの新たな構造モデルをリリースしました。これらのコンピテンシーはあらゆる団体において、入門レベルの貢献者から、幹部レベルのエグゼクティブまで、その雇用の役割をデザインするのに用いることができます。
コーン・フェリーはポジション・レベルごとに、コンピテンシーとプロモート力の相関性を特定するリサーチを行いました。コーン・フェリーによると、最高幹部レベルでは、コンピテンシーのトップ6は:

  • 革新を育む
  • 素早い学習
  • ネットワークの構築
  • たくさんのリソースを持つこと
  • 決断のクオリティ
  • 複雑なもののマネージ

コーン・フェリーは学習の素早さが未来のポテンシャル、プロモート力、パフォーマンスを予測するカギとなると特定したいくつかの組織に属しています。私たちはこれらを念頭に置きながら、コーチング・プログラムをデザインしていく必要があります。

変化の範囲とメガトレンドは、組織と個人のどちらにも影響を与えます。クライアントのために、私たちはこれらの変化に置いていかれないように併走していかなければなりません。これらの知識をICFのコア・コンピテンシーのフレームワークと組み合わせることで、私たちはクライアントの将来と現在のプロフェッショナル、そしてパーソナルな成功をサポートしていくことができるのです。


著者情報
ピーター・ブラック
ピーターはオーストラリアのシドニーで個人、組織向けの転職、エグゼクティブコーチング、Wellness@Work ™、チェンジ・マネジメント・プログラムをサポートするコーチとビジネス・サイコロジストの企業、ALCHEMY Career Managementのエグゼクティブコーチングパートナー。最高幹部から新規リーダーまで、対面、遠隔両方でコーチング・プログラムを多数請け負っている。詳しくは、www.alchemycm.com.au まで。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Peter Black
Coaching World, Issue 20 November 2016 p17-19 Coaching for the Future of Work
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】組織内でコーチング文化を築くには

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『組織内でコーチング文化を築くには』の記事を御紹介します。


組織内でコーチング文化を築くには
組織内でコーチング文化を築くには私が働いている組織、Tech CUではコアバリューである“培う”(Cultivate)をとても大切にしています。当社は、大きな組織ではありませんが、従業員の育成プログラムを豊富にそろえており、特に新人マネージャー向けのプログラムには力を入れています。また、執行部役員やシニアバイスプレジデントへは、外部のコーチによるエグゼクティブコーチングを実施したこともあり、その効果も見てきました。しかしながら、数ある育成プログラムを見直したところ、改良できるものがあることに気づきました。

それは、中間層のマネージャー向けのプログラムです。このプログラムは、シニアバイスプレジデント以上のポジションへ昇格するために必要な、リーダーシップ・コンピテンシーを養うことを目的としていますが、その内容は個々人にオーダーメイドされています。現在、私たちは、このプログラムに目をつけ、個々人のキャリアにおけるニーズに応じて社内コーチングプログラムの設計に取り組んでいるところです。この取り組みを進める中で、大きな学びがありました。その内容をここで共有することで、同じように自組織において社内コーチングプログラムを価値あるものとして広げ、その対象者を増やしたいと考える方々の参考になることを願います。

先ず、コーチングそのものの価値を理解してもらう必要がありましたが、幸いエグゼクティブチームの中にはコーチングが効果的であると考えている者が数名おりました。オペレーションチーフのジニー・ジェイコブソンは、「しっかり構成されたコーチングプログラムの導入による人材への投資は、リーダー育成の主軸となります。受けた本人がコーチングの効果を感じ、次第にどのようにすれば自らがコーチングを行えるか、ということを少しずつしみ込ませることができるからです。」
彼女のこの考えがヒントとなり、私たちはいわゆるストリーム・バリュー・マッピングの現状マップと将来マップを用いることにしました。それを用いることにより、中間層のマネージャーからシニアバイスプレジデント/エグゼクティブバイスプレジデントへのサクセッションプラン(後継者育成計画)を見てみると、現状マップと将来マップが連動していませんでした。このことから、重要な課題は技術的なスキル向上ではなく、エグゼクティブとしての自信、あるいは信頼を得るためのソフトスキルであることに気づきました。このようなソフトスキルの習得は、マイクロソフトのエクセルクラスを受講すれば済むというような簡単なものではありません。このため、私たちは課題を明確にするため自組織のコアバリューである“培う”(Cultivate)に焦点を絞り、シニアマネジメントへ次のように働きかけました。「想像してみてください。私たちの提案を受け入れてくだされば、将来、ご自身のサクセッションプラン(後継者育成計画)をご覧になった際、変革する力と強い意志を持ち、それを行動で示しいるリーダーの顔が浮かぶことでしょう。その人こそが、コーチングを受けることにより、自らの可能性を伸ばしリーダーへと成長する人です。」明確な根拠を必要とする人には、ICFが発表しているコーチング文化の構築に関する研究結果(https://coachfederation.org/coachingculture)を参照してもらいます。

進める過程では、コーチングに期待できることとできないことを説明しました。例えば、業務のパフォーマンス向上計画の一環ではないということ。また、コーチングは日常業務の改善やもっと働くことを“指導”するものではないということ。更に、シニアマネジメントの期待と相違が生じぬよう、コンサルティングやカウンセリングとの違いも明確にしました。これにより、「その人の行いを正すにはどうすべきか」という考え方よりも「その人の成長を促すために何ができるか」という考え方の方が、より前向きに捉えられるポイントだと、私たちは気づきます。
その上で、コーチングセッションとは、毎回行動へ移すことが求められ、本人がその責任を負うものであり、決して軽い思いつきで提案するものではないという事を強調します。

社内コーチ育成プログラムの実現化に向け、更なる理解と新たな見解を得る目的で、ベテランのマネージャーを集い、一人一人と時間をかけ話し合いました。その中で、私たちが提案するプログラムの位置づけや運用の流れを図で示しました。また、彼らの持つ素朴な疑問に答えた上で、私たちからは二つのお願いをしました。一つは、話の内容を消化した後、一か月程の後に再び話し合いの場をもつことと、二つ目は、彼らのチームからこのプログラムの先駆けとなるメンバーを検討してもらうことです。
その願い通り、次の話し合いの場では、彼らから調整事項と参加候補者リストの提示がありました。調整事項には、万一のバックアップと持続性を担保するために1名ではなく、2名以上の社内コーチを育成することとありました。これに併せ、特に守秘義務を重んじる事、そしてコーチング同意書にはクライアント・コーチ・クライアントの上司三者の同意を必ず得ること、が含まれていました。この頃になると、組織全体でコーチング文化を築く兆しがみえてきました。組織のコアバリューとニーズを基に積み上げた提案と、最初の段階から現職リーダーの意見を取り入れて進めたことにより、しっかりとしたプログラムを作ることができたと考えています。このプログラムを進めることにより、今後社内コーチングの価値が更に高まることでしょう。プログラムは始まったばかりですが、今年の後半には次期コーチ要員が、ICF認定プロバイダーの研修を正式に受ける予定です。私たちは、組織のコアバリューである”培う“ということを、このプログラムの中で実現することができることに期待を膨らませています。そして、引き続き次世代リーダーの育成の根幹に関われることを楽しみにしています。


著者情報
ジョシュア・レイミーレンク
Tech CU社(米国カリフォルニア州サンタフェ)でTalent and Organizational Development (組織及び人材開発)のバイスプレジデントを務め、同僚チームと同社のコアバリューである促進・培う・革新・協働に日々取り組んでいる。
ミドルベリー国際大学院モントレー校(カリフォルニア州)国際マネジメントMBA取得。
現在、Coaches Training Institute(CTI)でコーチングを学んでいる。

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Joshua Ramey-Renk
Coaching World, Issue 21 February 2017 p14-15 Building an Internal Coaching Pilot
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、田中チズ氏に翻訳いただきました『心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス』の記事を御紹介します。


心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス
心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス管理職や起業、スピリチュアル・ヒーラーの他、コーチとしての独立など様々なキャリアを経験してきた私が感じるのは、マーケットへの理解だけでなく、情熱や目的意識が起業家としての成功を左右するということです。今この記事を読んでいるあなたも、コーチの仕事に情熱を注ぎ、クライアントのサポートに大きなやりがいを見出しているのではないでしょうか。コーチングとは、理論で勝負する単なるビジネスではなく、いわば心を使って経験を積んでいく使命のようなものです。また、多くのコーチにとって、コーチングとは心のあり方の模索でもあります。金銭的な報酬は目標達成にもちろん必要ですが、情熱的なサポートで意識改革を促し、パートナーとしてクライアントに自信や力を与えることこそがコーチングの本来の目的なのです。

情熱の持ち方を、ビジネススクールで習得することはできません。ソニー創業者の盛田昭夫がもしビジネススクールに行っていたら、ウォークマンの発明はなかったでしょうし、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが大卒だったら、マイクロソフトやアップルはこの世に存在しなかったでしょう。成功している起業家は数学的な市場分析ではなく、ひらめきや情熱、不屈の精神、自分の創造力を信じる力を持っています。彼らには、失敗を繰り返し、挫折から立ち直る強さがあります。それらはすべて自分を信じる強さからくるものです。成功者は、自分を駆り立てる情熱に突き動かされて進むことが圧倒的な成功につながることを知っています。そもそもの動機がお金や権力だったとしても、数々の失敗や成功を経て、彼らはやがて、社会に還元できる確かな何かを手にしていきます。つまり、情熱を心に秘めているかどうかが成長や成功を大きく左右するのです。

コーチとして生きることを選択したあなたは、彼らと同じ成功への変革を遂げつつあります。あなたには人をサポートする情熱があります。あとは、チャンスを活かす長所や強みを、情熱や目的意識と結びつけ、クライアントをサポートする独自のシステムを構築したら、コーチとしての成功はすぐそこにあります。この記事では、私がスピリチュアル・ヒーラーとして活動していた頃、数千名のクライアントと実践した6つのプロセスを紹介します。これは「マインドレス」と呼ばれる瞑想を活用したプロセスで、禅やヨガの概念にもとづいています。結果ではなく過程を重視するテクニックで、意識に働きかけるマインドフルネス法をはるかに超える気づきや行動、発想の変革を促します。まずは自分自身がマスターして、クライアントと実践してみましょう。

ここでは6つのプロセスのうち主要な4つを紹介しています。残りの2つは瞑想を用いた対面でのフォローアップとなるため割愛します。

1. 成功につながるポイント「スイートスポット」を発見する

下図に示す第一のステップは、長所やチャンス、リソースなどを情熱と結びつけ、未来の成功を強く思い描く基盤を作るための4つの要素です。

喜びとワクワク感をリスト化:何かをやり遂げた場面、うれしかった評価、人間関係、人をサポートした時など、大きな喜びが満ち溢れる瞬間を1つめの円にリストアップしましょう。そのリストから、あなたの情熱と目的意識の傾向が浮かびあがってきます。

自分の長所を見つける:2つ目の円には、上記の「喜びが満ち溢れた瞬間」を得るために活かした自分の長所や強みをリストアップしてみましょう。円1と円2が重なる部分は、叶えたい夢と強みとが重なり合う場所です。

どんなチャンスがあるか:情熱と長所の接点にある夢を叶えるために捉えるべきチャンスは何でしょうか。思いつくチャンスを円3にリストアップしてみましょう。

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活用できるリソースは何か:上記で発見したチャンスを成功に結びつけるために必要な学びや研修機会、身につけたいスキル、ビジネス上や個人の人間関係などを円3に整理しておきましょう。

CW201702_bringyourb02

この4つの円の中心点に「スイートスポット」が浮かび上がってきます。それはあなたの情熱や長所が、訪れたチャンスの中で最高の形で活かされ、さらにリソースで補完することによって成功へとつなげることができる最強のポイントとなるでしょう。

2. 「65バック・ビジョン」で25年後の未来像を描く

「65バック・ビジョン」とは、キャリアと私生活両面における充実を目指した統合プロセスです。過去の経験にもとづいて重要だと信じているものなどの制約を時間・空間的に解き放ち、本来あるべき未来像を描くことを可能にしています。私がコーチングを行っているエグゼクティブの多くは、目標設定を富や地位を得るためのものと考えており、ビジョン設定も3~5年間の短期間で設定しています。その先の将来は、自分の影響力が及ばない曖昧な領域だと考えているのです。それは、言い換えれば未知に対する恐れとも言えます。私自身も富や地位にこだわっていた頃はまさに同じように感じていました。

未来像を描くこのプロセスでは、例えば現在40歳のエグゼクティブに、25年後の自分を想像してもらいます。富や地位だけでなく、健康、家族・パートナーとの関係、学び、奉仕、精神の充実など、人生の主要な領域を満たすビジョン設定を行うのです。すると、そのビジョンを達成するために必要な情熱や目的意識がまったく違ってくることに気づくことでしょう。

この全方向性の長期ビジョンを描く方法は、65歳の未来像を描いた「人生の輪」を作成することです(少なくとも20年以上先の未来像を描くのが望ましいでしょう)。この人生の輪では、前述の「スイートスポット」を参照して達成できる可能性を考慮しつつ、富や地位をはじめとする各領域における具体的かつポジティブな目標をリストアップしていきます。

完成したら、現在の自分の年齢に向かって5歳ずつ遡りながら同様に「人生の輪」を作っていきます。例えば、もしあなたが今40代前半なら、まず初めに60歳の輪を作り、その後、55歳、50歳、45歳と遡って作成していきます。この5年毎の目標は、最終的な20年後の未来像を実現することを念頭においた目標にすることがポイントです。これらの5ヵ年目標が、短期目標の進捗管理のサポートをしてくれます。

3. 行動を喚起する計画を立てる

図式などを用いたビジネスプランを作成し、現在の自分から一歩ずつ前進するための短期計画を立てましょう。課題を洗い出し、それを克服するための選択肢を見つけます。今使えるリソースを探し、行動計画を練り、見つけた選択肢をもとに課題を克服していきます。このプロセスは認知的なプロセスで、アクション重視のコーチングを活用してビジネスプランを作成するのに似ています。5ヵ年計画用の雛形として、上の図をご参照ください。

4. 視覚化し、落とし込む

夢が叶った時、あなたは何を達成して、どんな自分でありたいですか?ここまでのプロセスを進めたあなたなら、数年後のありたい姿を感覚的に視覚化できるようになっているのではないでしょうか。いろいろなことに思いを巡らせたら、夢を知覚で認識し、心に落とし込みましょう。最後のステップとして、夢を信じて描くことができたあなたのエネルギーに感謝し、目標達成についての執着心を意識的にすべて手放します。心の力を活用してビジネス目標を設定し、心にしたがって実践することが、成功への一番の近道なのです。


著者情報
ラム・S・ラマナサン, MCC
リーダーシップ・コーチおよびトレーナーで、スピリチュアル・ヒーラーとしても活躍。東洋の精神論を心理学や神経学と融合させたマインドレス・アウェアネスを専門分野とする。
ウェブサイトはこちらから coacharya.com
Eメールはこちらから ram@coacharya.com

【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Ram S.
Coaching World, Issue 21 February 2017 p16-19 Brings Your Business With Your Heard
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチが投げかける質問を考える ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『コーチが投げかける質問を考える』の記事を御紹介します。


コーチが投げかける質問を考える
コーチが投げかける質問を考える

コアコンピテンシー6
パワフルな質問

コーチングにおける関係性を向上させ、クライアントに与える利点を最大化するために必要な情報を引き出す質問を投げかける能力

時として質問はフクザツだが答えはシンプルだったりする」-ドクター・スース (米国・児童文学作家)

さて、投げかける質問が複雑過ぎることはありませんか?あるいは、投げかける質問をシンプルにするにはどうすればよいのでしょう?

私たち、プロコーチは投げかける質問が効果的であるよう確実にしなければなりません。なぜならば、それに対するクライアントの反応が、前進または変化へとつながるからです。曖昧、あるいはとりとめのない問いかけが、クライアントの持つ内省・続行・変化する力にどれだけの効果があると言えるでしょうか?私の意見はこうです。「質問がパワフルであれば、答えははっきりみえてきます」

コーチングの初心者の多くは、ひな形にそってパワフルな質問を学びます。しかし、変革的であるためには、前記の引用のように「ドクター・スース的」に疑問を抱き、好奇心を持ち、じっくり聴き、そして直観する力を際立たせさる必要があります。

質問の質を高める5つの秘訣を下記に述べます。簡潔に記していますが、実はとても重要な内容です。

1.質問は短く、簡潔に

私は、以前一緒に仕事をしていたメンターコーチに、質問の単語数を短く7語以内にすることに挑戦するよう指摘されました。コアコンピテンシー6条「パワフルな質問」に力を注いできた私にとって、この指摘は意外なものでしたし、行ってみるとコーチングをしている自分の出来具合に意識が向いていました-そう、コーチングを習い始めた頃のように。
この訓練のおかげで、質問が複雑で分かりにくくなればなるほど、それに応えるのが難しくなるということを習得することができました。長い質問は、クライアントの思考をフリーズさせるのです。ちょうど、コンピューターのキーボードで連打した時と同じように。クライアントの思考は止まり、コンピューターでいえば強制終了状態になります。
短くシンプルな質問を意識できるよう、下記の“KISS”を参考にしてください。中でも私のお気に入りは、「What else? (他には?)」です。
是非、7語以内の質問(短くシンプルな質問)にチャレンジし、そのような質問があなたのコーチングにどのような影響を与えているのか、またその理由を考えてみてください。

“KISS” = Keep It Short and Simple (短く簡潔に)

パワフルな質問は、明確さ、行動、発見、洞察力、コミットする力を喚起します。パワフルな質問は、可能性を広げ、新しい学び、あるいはより明確なビジョンをもたらします。
質問を効果的にするためには、長く、複雑にする必要はありません。
(2語)
What else? 他には?
Who else? 他には誰?
By when? いつまでに?
Like what? 例えば?
How else? 他にはどんな?

(3語)
What is that? それは何?
What stands out? (その中で)際立ってことは?
What is next? 次はなに?
What is working? うまくいっていることは?
What will change? 何が変わる?
What drains you? ストレスになっていることは?
How could you? どうすればできる?
What is possible? できることは何?

(4語)
What are you tolerating? 我慢していることは?
What is not working? うまくいっていないことは?
What is it like? どんな感じ?
What do you want? 何が欲しいですか?
What are you discovering? 気づいたことは?
Who are you becoming? どんな風になりたいですか?
What are you resisting? 抵抗を感じるものは?
What do you mean? どういう意味ですか?
What is stopping you? 何が妨げになっていますか?

(5語)
Where will that get you? それをすると何につながる?
What about this excites you? ワクワクするのはどんなところ?
What is this costing you? その代償は?
What will be different now? これから何が変わると思う?
What would that give you? それによって何が手に入る?
What is new about this? 今までと違うところは?
What could you stop doing? 止めることがあるとしたら何?
What will you do next? 次、何をしますか?
How would you do it? どのようにしますか?

(6語)
What are you learning from this? 学びは何ですか?
How do you feel about this? どう感じていますか?
What do you love about this? 中でもすごく好きなことは?
What is standing in your way? 障害は何?
What is your back up plan? バックアッププランはなんですか?

2.指令のような質問をしないこと

「Tell me (教えて)」「Show me(やってみせて)」「Help me understand(理解できるように聞かせて)」。
このような問いかけは、オープンクエスチョンではありません。心を開きたくないクライアントは、このような問いかけにそっけなく「yes 又は no」と応えることができます。
このような光景を、マネージャーやリーダーにコーチングスキル習得の研修やコーチングをする中で日常的に目にします。コーチにそのことについて訊いてみると、その「指令的質問」をオープンクエスチョンと捉えており、当然のごとくオープンクエスチョンとして使っているのです。
この指令的質問を抑える訓練は、コーチングの練習セッションの中でできます。指令的質問をしてしまったら、その都度自分にそっと×印をつけてみてください。こうすることで、自分の癖に対する意識が高まり、言い方を替えることにつながるでしょう。

3.2次的・3次的質問をすること
私たちコーチは、クライアントが抱く点と点を結び、あらゆる視点を持ちながら試し、そして見えていない盲点への気づきを促す努力をしています。
私たちは、クライアントの気づきを深めるためのサポートをします。
このことを、エグゼクティブコーチであり、人類学者のジュディスE.グレーサーは、“ダブルクリック”と呼んでいます。2011年に彼女は自身のブログの中で、このように説明しています:
“ダブルクリック”と名付けたのは、コーチングのプロセスがコンピューター内のフォルダーを開ける時のダブルクリックに似ていると思ったからです。私はこのように“ダブルクリック”を引用します。「チーム内において、個々人の考えを互いに比較したり、またはそれに対する理解や受け取り方を共有するために個々の頭の中を“ダブルクリック“してみてください。」これは、探究してみてください、という意味です。同じ言葉や言い回しでも個々人によってその意味や受け取り方が異なるということを発見し、探求し、理解するために”ダブルクリック“します。このダブルクリックを練習する際には、コンピューターでいうならば、クライアントのキーワードにハイパーリンクが貼ってるかの如く想像してみてください。
クライアントの発している言葉の裏にある真の意味をくみ取れるために、ダブルクリックをし、2次的・3次的質問をしてください。

4.視点を変える

私たちコーチは、クライアントの視野を広げる手助けをしています。クライアントの視点を変えるために次のようなことを試してください:
・時間軸を未来へシフトし、予測する… 「来年はどのようになっていますか?」
・仮定する… 「もし~」
・建物の1階から屋上へ移動してみる… 「もし上からその情景を見たならば…」
・アプローチする部分を変える… 「あなたの心はなんと言っていますか?頭は?脳は?子供の自分は?歳をとった自分は?」
ドクター・スースは、次のような豊かな表現で視点を変えることを促しています。 「右を考え左を考え、それから下のことも上のことも考えよう。ああ、トライしさえすれば、どれだけの考えを見つけ出すことができるか」

5.永遠に好奇心を持ち続けること

ドクター・スース曰く、「大人というものは、退化した子供にすぎない」
子供は生まれながらにして好奇心を持っています。
コミュニケーションミスや期待通りにいかなかったことに対し腹を立て、人生は複雑だと嘆くクライアントの話に私たちコーチは耳を傾けますが、こんな時、腹を立てる代わりに好奇心を持つよう励ましましょう。好奇心を持つと、「できることは何か?」と考えます。ドクター・スースが言うように、結局のところ「大切なのは、何がどうあるかではなく、どうなれる可能性があるか」なのです。

このようなヒントを基に練習し質問力をつけてください。そして忘れないでください。
簡潔な質問は、クライアントの思考を妨げることなく、彼らが探し求めている答へと導くということを。


著者情報
バーブ・ガーソン(ACC)
研修・コーチング・ビジネスコンサルティング・ファシリテーションにおいて20年以上の経験を持つ。提供する研修やエグゼクティブコーチングは、企業・チーム・個人事業主に自信を与え、行動へ移し成長を促している。
ICFコロンブス(米国オハイオ州)代表
Worldwide Association of Business Coaches 会員
バーブについて詳しくはこちら; www.mysalestactics.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Barb Girson
Coaching World, Issue 20 November 2016 p10-11 Oh, the Questions We Ask
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチングにおけるパーソナルブランド

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『コーチングにおけるパーソナルブランド』の記事を御紹介します。


コーチングにおけるパーソナルブランド
コーチングにおけるパーソナルブランドコーチングとは、この上なくパーソナルなサービスです。クライアントがコーチに対して、(恐らくは他のプロフェッショナルに対してよりも)「雇う」という意識よりも、「知っている」「好みに合う」「信頼できる」といった感覚を大事にしたいと思うのはそのためです。

残念なことに、多くのコーチはウェブサイトや名刺を作る際、単に自分のビジネスの構築に必要なTo-Doリストの一項目として考えています。見栄えの良いロゴや顔写真をテンプレート的なウェブサイトに載せて、クライアントがドアまで歩いてきてくれるのを期待するのです。でも、分かりやすく確かなパーソナルブランドを構築し、それをマーケティングやコミュニケーションを通じ、一貫性を持って発信することに投資していなければ、彼らが望むような展望は中々開けないことでしょう。もっと悪いことには、見込み客と初めて顔を合わせた際に、「あれっ、あなたは私が求めていたのと違うね」と言われてしまう(もしくは、思われてしまう)ことになり、売り上げ損失に繋がってしまいます。

あなたのパーソナルブランドは?
Entrepreneur magazineへの寄稿で、LogoYes.comの創設者ジョン・ウィリアムスはパーソナルブランドをこのように定義しています:
「シンプルに、あなたのブランドとは、あなたの顧客への約束だと考えると良い。彼らがあなたやあなたの商品に何を期待して良いのか、他社とどんな点で違うのかを、ブランドは語るのだ。」
もしくは、Amazon.comの創設者ジェフ・ベゾスはこう言っています。「あなたのブランドとは、あなたについて、みんながあなたが居ない場所で語ることのことだ。」
本質的に、コーチとしてのパーソナルブランドはあなた自身の評判-あなたを知る人、出会った人が、他の人にあなたのことをどう説明するか-になります。
あなたの経験、専門性、価値、強み、魅力-あなたをあなたたらしめる全て-は、あなたならではのパーソナルブランドを構築する重要なスタート地点になりますが、ブランドとはあなたの全てとイコールではないことにも注意が必要です。
他人の頭の中には、あなたについての(もしくは他の誰かの、でも構いません)情報を入れる場所はほんの少ししかありません。つまり、あなたのブランドは、あなたがクライアントにしたい相手にとって魅力的で覚えやすくなるようなあなたの特質の一部を、深めすぎず、戦略的に抽出して構築することが大切になります。

どうやってあなたのパーソナルブランドを広めるか?
一口に言えば、あなたが言うこと、成すこと、作るもの全てが、あなたのパーソナルブランドの信頼を上げたり下げたりします。
あなたの、コミュニケーション(文章、言葉、非言語を問わず)、スタイル、フォント、ウェブサイトやドキュメントで使う色や画像、ロゴ、キャッチコピー、推薦、資格、料金-これら全ての要素や、それ以外の様々なものが、あなたのパーソナルブランドを広めるための手法であり、これらは全体を通して一貫性のあるブランドストーリーを貫かなくてはなりません。

あなた自身のパーソナルブランドが何故大切なのか?
あなたのパーソナルブランドは、潜在的な顧客がクライアントへと変わるために、とても重要な役割を果たします。
何故なら、コーチングサービスの性質として、潜在的顧客は、そのコーチのことを好みに合い信頼できる相手だと、コンタクトする前に知っておきたいからです。これらに合う相手を探すのに、今の人々はどんな方法を使っているでしょうか? それは2つあります:オンライン上のリサーチと、人からの紹介(これもオンライン上でのリサーチを伴う場合が多いでしょう)です。

オンライン上でのリサーチ
ビジネスの成功において、オンラインで上での露出はいまだかつてない程に重要になっています。GoogleとMilward Brown Digitalによる2014年度の調査では、B2B取引の89%がインターネットでの情報を元に購入の決定を行っていると示しています。
潜在的顧客があなたについて検索した時、何が出てきますか? あなたのオンライン上での露出は、信頼できるパーソナルブランドに繋がるものですか? そこにはクライアントがあなたを知り、好きになり、信頼できるような情報があるでしょうか?

人からの紹介
どうすれば、あなたがもっと紹介してもらえるでしょうか?ヒンジの『Referral Marketing Study』によれば、最も重要なことは、その人が目に見える専門性を提示していることです。すなわち、その人が提供するサービスについて、手に入れやすく高い品質を持った事例、例えば講演、記事、本、ウェブサイトなどです。あなたは、他のコーチよりもあなたの方が信頼できると潜在的顧客が思えるようなオンライン上のプレゼンスを発揮していますか?

有効なパーソナルブランドは何が違うのか?
あなたがパーソナルブランドに投資する効果をイメージするために、こんなケーススタディがあります。
ある電気製品の小売業者が、ポテンシャルの高い女性のためのリーダーシップ開発プログラムを創り、25名の参加者に対して外部コーチによる1対1のコーチングを行いました。人材開発部門のマネージャーにより9人のICF認定資格取得者が選ばれ、それぞれ2pずつのプロフィールを参加者に配り、コーチングを受けたい相手を選んでもらいます。その結果、互いに面識が全くない状態にも関わらず、2名のコーチ(22%)が16人の参加者(64%)から選ばれました。
何がこの2名のコーチを魅力的に見せたのでしょうか?
それが明確で信頼に足りるパーソナルブランドでした。
書かれたプロフィールを受け取ったにも関わらず、参加者の多くはそのコーチについてオンラインで調べました。大多数から選ばれた2名のコーチは、信頼できるブランドストリーを語るオンラインでのプレゼンスやウェブサイト(ブランドに合わせた写真、キャッチコピー、デザインなどが整っているもの)に投資していました。
この強力な第一印象は、多くの参加者にとって自分たちがすでにコーチのことを知り、好み、信頼できてきているという気を起こさせ、そのコーチを選ぶことに安心感を持たせました。
明確に定義され、一貫性を持って発信されるユニークで信頼感のあるパーソナルブランドは、(マーケティングで重要とされる)より多くの人にあなたのサービスを知ってもらうためには役立たないかもしれません。しかし、潜在的な顧客があなたを知った時に、「この人が、私の求めていた人だ!」と思ってもらうために大いに役に立つことでしょう。


著者情報
エーンスリー・タンナー, ACC
エーンスリーはリーダーシップコーチにして、パーソナル・ブランド・エージェンシーの創設者。詳しくはAensleeTanner.comへ。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Aenslee Tanner
Coaching World, Issue 21 February 2017 p12-13 It’s Personal
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】効果的な手法“チェックイン”の有用性 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『効果的な手法“チェックイン”の有用性』の記事を御紹介します。


効果的な手法“チェックイン”の有用性
効果的な手法“チェックイン”の有用性

コアコンピテンシー11
進捗と説明責任の管理

クライアントにとって何が重要であるかに着目し続け、行動を起こす責任をクライアントに委ねる能力


18年前、私が初めて受けたコーチングのトレーニングプログラムでは、毎回セッションの最後にこう訊かれました。「セッションで得られた成果は何ですか?」そしてこの問いかけは、私たちがクライアントに対しコーチングセッションの最後に訊く習慣となったのです。

それから5年ほど経ったある日、この習慣を考え直すきっかけとなった衝撃的な出来事が起こりました。いつもの問いかけに、クライアントは次のように応えました。「得たものは何点かあって、とても良い会話でした。このセッションで期待していたものは得られませんでしたが、話した内容はとても良かったです。」
「え?!今のはどういうこと?どういう意味?私が気づけなかった、クライアントが本当に話したかったことって何だったの?彼の期待に応えられなかったなんてコーチとして失格だわ!」電話を切りながらこう思ったのを覚えています。

その日から、私はそれまで以上にクライアントの希望を明確に確認するように努めました。セッションの中では、クライアントが望む方向へ向かっているのか確認しながら進めました。
このような経験から、私が今回お勧めするのはコーチングの中でも最も効果的な手法の一つ、“チェックイン”(方向性の確認)です。

クライアントからみてセッションが希望通りの方向へ進んでいるのかを確認するには、先ずクライアントの向かいたい方向・着地点を知る必要があります。そのために、私はエグゼクティブコーチとして、コーチングのトレーナーとして、そしてICF資格認定メンターコーチとしてICFのPCCマーカー(認定資格PCC取得の評価基準)日本語翻訳版)を常時利用しています。このPCCマーカーを活用することによって、コーチングスキルを極め、より効果的なセッションを行うことができるのです。

PCCマーカーのコアコンピテンシー2:【コーチングに関する同意の取り交わし】の1番目には次のように記されています:「コーチはセッションでクライアントが達成したいことを特定または再確認できるよう手助けしている」。この意味するところは、クライアントが望む方向へ進むにはクライアントが話したいトピックを理解するだけではなく、クライアントがそのトピックにまつわる何について探究したいのかを理解する必要があるということです。

例えば、クライアントがこのような発言をしたとしましょう。「同僚達が私よりも高い給料をもらっていることを先ほど知りました。やっている仕事は同じ、しかも彼らが入社した当初、彼らに仕事を教えたのはこの私ですから侮辱された気分です。私の給料が彼らよりも低い理由をマネージャーに訊いてみたいです。」

これを聞いてトピックはわかります。しかしセッションを通し、このトピックについてどのような成果を得たいのでしょう?マネージャーとの話し合いの準備をしたいのかもしれませんし、マネージャーと理路整然と話すために先ず自分の感情を整理したいのかもしれません。あるいはまったく別のことかもしれません。

ここで仮にクライアントが、セッションの直前に給料に関する情報を得たとして、「先ずは感情の整理をしたい。」、「その後、マネージャーとの話し合いの準備をしたい。」と言ったとしたならば、ここではじめて感情の整理と話し合いの準備の2点に焦点をあてたセッションの方向性が定まります。

PCCマーカーのコンピテンシー2【コーチングに関する同意の取り交わし】の5番目に挙げられているのは、「コーチは、クライアントから指摘されない限り、クライアントが望む成果の方向へ会話を続けている。」このポイントを知っておくことで、セッションがクライアントの望む方向に沿っているかどうか、方向性の確認をすることができます。

確認の問いかけは、例えばこのようにします:
「トピックのどの部分から掘り下げていきましょうか?」
「違うトピックが出てきたようですが、その内容は元々のトピックと関連しているのですか?」

“チェックイン”を行うタイミングは、セッションの半ばで行います。60分~90分のセッションであれば、“チェックイン”の回数を増やしましょう。

“チェックイン”の例をあげましょう:
「セッションの始めと今の感情を比べるとどのような変化がありますか?」
「このセッション中、マネージャーへの良いアプローチ方法が浮かんできているようですが、進み具合はいかがですか?」

“チェックイン”を行うと、ほとんどの場合クライアントの中で次のようなことが起こります:
1.セッションから得た気づきを熟考する
2.アクションポイントが浮かんでくる

このため、クライントから湧き起こる気づきや行動内容について掘り下げる時間を確保できるよう、セッションの終盤まで“チェックイン”のタイミングを遅らせてはいけません。“チェックイン”時の会話は、その他の「深く掘り下げる」「発見する」ことを目的とした会話と同じくらい重要です。“チェックイン”のタイミングを逃すことは、クライアントの損失となります。

コーチングにおいて”チェックイン“は、セッションがクライアントの期待に沿って進んでいるのか、クライアントが他の方向へ切り替えたいのか、または掘り下げて自分の行動について話す準備ができているのかを判断する上でとても有効的な方法なのです。


著者情報
カーリー・アンダーソン(MCC)
ICF認定メンターコーチ。
CCE単位認可プログラムのMentor Coachesを実施。
企業とコーチング契約を結び活動中、代表的なものとしてグーグル社450名の従業員を対象にコミュニケーションやリーダーシップ向上のためコーチングを提供。
カーリーが作成したThe Target Approach: Demystifying the ICF Core CompetenciesではICFコアコンピテンシーを解りやすく紹介している。
カーリーについての詳しい情報:CarlyAnderson.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Carly Anderson
Coaching World, Issue 21 February 2017 p10-11 The Value of Checking In
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長』の記事を御紹介します。


「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長
「自分は何者なのか?」をサポートする:コーチングと学生の成長数週間前、同僚が私のオフィスを尋ねてきました。
「ねえ、今、自分のコーチを探している学生がいるんだけど。」

彼女のいつものコーチが合わなかったため、私は彼女―サムと呼ぶことにする―と会うことしました。サムはかなり焦りを感じているようでした。

「いきなり来てすいません。でも、なんとかしなきゃいけないことがあって、そのためにコーチングが必要なんです。ここは、私が批判されずに話せる数少ない場所だから。」

そして私たちは話しはじめました。彼女の言葉が進むにつれて、私は彼女の変化、エネルギー・シフトを感じました。サムはこのセッションを、コーチにフォローアップしてもらいながら進めるべき、次のステップとプランを見出すことで終えることができました。

サムは、私たちのプログラムでコーチとのワークを行い、エネルギーと自分のゴールに向けた目標への気づきを得た1363人の学生の内の、1人の例に過ぎません。
 

次々とくる学生たちにとって、変化は新しい喜びの発見と自立、同時に無力感や不安を生むものでもあります。学生は日々選択(それは時に重大なものでもあり得る)を迫られますが、それには実行力とそのスキルや、感情の制御といったものが必要となってきます。このプレッシャーは学生に、質問と、すぐに出る「答え」を求めさせます。

すると熱心な学生たちは、教授たちなら「正しい答え」を教えてくれるだろうとキャンパス中を探し始めます。しかし、私の学生への長年のコーチングの経験は、コーチングの鍵となる教義が正しいことに気づかせてくれました:すなわち、このヤングアダルトたちは生まれながらに問題を解決する力も、必要なものも手にしている。大切なのは、彼ら自身が何者なのか、本当に求めるものは何なのかを見つけ出すことです。彼ら自身の中からそれを発見することは、簡単なことではありません。多くの学生たちが、自分のアイデンティティも目的も持たないまま大学に来ます。
 

コーチングのプロセスは、学生がコーチとの本当のパートナーシップを育むことのできる、安全でニュートラルな環境を生み出します。学生は自ら議題や話のトピックを選ぶことになります。その中には、大学入学という環境の変化、メジャーやキャリアのこと、ストレスのマネジメント、学業のこと、サークルや人間関係、意思の決定や、(学内の自治会などの)執行部への参加などが含まれます。

トゥーレーン大学でのサクセス・コーチング・プログラムの立ち上げは、教職員、学内スタッフ、そして保護者たちの観察から生まれました。以前から、学生たちは情報を集め、明確なプランを造り、それに力を注ぐことができました。しかし、それを実行する段階で失敗していました。何かが欠けていたのです。そう、学生たち自身の視点が。ですので、当初からこのプログラムは人間をまるごとプロセスと融合し、「処理する」というより「変わる」ということに重点をおいています。

「コーチングのプロセスの中で、学生たちが成長し、自分自身が何者なのか/何ができるのかに確信を持てる姿を私は見てきました。」と、サクセス・コーチのカレン・ホッカイザー(ACC)は言っています。これは特に、自身のアイデンティティを発達させ、世界の中に自分の居場所を見つける段階の学生に顕著です。コーチングは、様々なこと、何か違うことに挑戦できる安全な場所をつくりだします。それは、クライアントとコーチの両方にとって、変化とエネルギーをもたらします。
 

試験的に始めた2012年から、このプログラムを通して、私たちのオフィスは圧倒的にポジティブな反応を経験してきました。学内からの紹介も学期ごとに増えています。試験時の学期には、69人の学生が256回のミーティングを行いました。4年後の2016年春学期には、638回のミーティングが行われてます。2015~16年度を通しては、1363人の学生が5817回のミーティングを行っています。この成功は、「強み」に注目したメッセージ方法のおかげでもあります。例えば、学内の同僚や保護者には、学生を「紹介」するのではなく(有望だと思える学生を)「ノミネート」してもらっています。

私たちのゴールは「数」ではありません。代わりに、交流の「質」に重きを置いています。このアプローチにより学生とコーチはラポールを築き、信用できる関係を作り上げ、学生のゴールを成し遂げるために動くことができます。結果として、学生にとっての成果、感情の制御や、学業的なパフォーマンスの向上、属する団体の強化、時間のマネジメントスキルの獲得、自己効力感の向上、そしてキャンパス内でも「信用できる人物」としてのアイデンティティの確立などが起きます。更に言えば、2016年春学期には、99%の学生がコーチングを「役に立つ」もしくは「非常に役に立つ」と評価しています。

私たちは、学生のニューロダイバーシティ(脳の多様性)へのサポートも必要だと考えています。そのために、コーチたちはICFの専門トレーニングプログラムの中でもADHDと根拠に基づいたメソッドにフォーカスしたプログラムで学び、認定資格を取得しています。(この知識とトレーニングは、ニューロティピカル(定型発達=いわゆる健常者)の学生とのワークにも役立てられることが分かっています。)

科学というレンズを通したコーチングは、途方もない価値を持っています。脳のメカニズム、プロセスのスタイル、ポジティブ/ネガティブ両方の感情の力を知ることで、学生たちが熱心な学習者になっていく姿を見てきました。恥や不安といったものがどこから来るのか、それを説明できる要素を、労を厭わず見つけ出そうとする姿勢も観察してきました。神経生物学的な要素への気づきにより、学生はそれまで制限や限界だと認識していたものに気づき、そこから開放されていきました。

コーチングの感想を公表することに同意してくれたとある学生がこんなことを言っています。

「私はいつも乗り越えられないタイムマネジメントの問題をかかえていたんです。それは私の人生にずっとついてまわる重荷だと思っていました。あなたが今、水の中に囚われていて、足首には鎖が繋がれ、その先には大きな重りが付いている状況を想像してみてください。あなたの人生は、ずっとその重りを外そうとしながら、時々水面に顔を出してやっと息継ぎをしているような状態なんです。それがようやく、鎖を外すだけの力を得ることが出来て、水の上に頭を出し、肺いっぱいの酸素を吸うことができた。この安心感。まるで命が助かったというような感じ。それが私がコーチングを体験して味わった感情なんです。」


著者情報
ミシェル・エルキング
ミシェルはテューレーン大学で学生たちへの学習のサポートサービスを包括的に提供する、アカデミック・サクセス・センターのディレクター。また彼女は同時にライフコーチ、ADHDコーチでもあり、テューレーン大学のサクセス・コーチング・プログラムの創設者でもある。ADDコーチ・アカデミー卒。ニューオーリンズにあるサザン・ユニバーシティの社会福祉課程で修士号を取得。2012年12月には、学生の進学率とサクセスについての業績が認められ、テューレーン大学の学長によるスタッフ・エクセレンス・アワードを受賞。彼女自身のビジネス、Souljourn Coachingでは、個人、組織双方の成長についてのプログラムとサービスを自ら提供している。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Michele Oelking, PCC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p31-32 Supporting the “Who:” Coaching and College Student Development
http://icfcoachingworld.com