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【CoachingWorld】システム神経科学から学ぶ苦言を呈する“直観型”(Disruptive)リーダーシップの在り方

苦言を呈する“直観型”リーダーシップは核心に触れ、本質に迫ることに長けています。但し、そのやり方は正しく行う必要があります。“裸の王様”の物語を思い出してください。パレードをしている王様の姿を見た子供は、王様が裸であることを叫びました。観衆が集まるパレードの場であり、叫んだのが子供であったこと。真実を知らしめる絶好のタイミングであり、また子供はそれに相応しい立場にありました。民衆が、幻想の世界から現実に引き戻された瞬間です。

この物語から学べることは、“直観型”リーダーシップにはただ単に真実を口にするということ以上の能力が必要だということです。適切なタイミング、穏やかで気さくな雰囲気、微妙なニュアンスが保たれているチームとの関係性がそれにあたります。

人は、神経系統の働きがある状態になると、“夢想的な思考”とその反対の“機械的な思考”との解離を認識できる、とトラウマの専門家は言います。コーチは、コーチ自身またはクライアントがその解離している状態を察知すると、コーチとしてはつい口を挟みたくなる衝動にかられるでしょう。しかし、既にショック状態にあるクライアントに、新たなショック(刺激)を与えることで更に深いショック状態に陥ることも考えなくてはなりません。

“闘争”か“逃走”か

今、辿っている道が誤りであるという真実を知ることは誰にとっても不快なものです。例えば、ナビに従い進んだ末、何やら間違った方向へ向かっているようだと気づいた時には、神経系統に影響を及ぼす物質が分泌され、いわゆる“闘争する”又は“逃走する”といった反応が起きるものです。真の“直観型”リーダーシップは、このような反応に注意深く意識を向けています。

“闘争”や”逃走“のような反射的な行動は、身体の反応から引き起る行動の一つです。危機的状況に陥ると、極度の疲労を体感し感情が高揚するのです。激しく起こるその反応は瞬間的である一方で、その影響は長期に及びます。

私たちの動物的身体は、“闘争”や“逃走”の感情を奔出することでシャットダウン状態(停止状態)から覚醒するように作られています。例えば、ポッサム(フクロネズミ)の行動で考えてみましょう。家の庭に犬が放されたとします。それを察知したポッサムは、一瞬死んだふりをして静止します。そして犬が他の事に気をとられた瞬間に猛スピードで一目散に逃げ、犬に襲われる危険から逃れるのです。逃れたポッサムは、体をブルブルっとさせ、体内に残る“闘争”や“逃走”のエネルギーを振り払います。

私たち人間も、他の動物と同じように“闘争するか、逃走するか”の反応が起こりシャットダウン状態から目覚め、その後余分な“闘争”又は“逃走”の化学反応を放出しています。車で事故を起こした場合、事故直後は何とか気持ちを落ち着かせ、電話を手に助けを求めることが出来ますが、徐々に冷静さを取り戻すに従い震えが来るのがそれに当たります。

かつて人々は、生命が脅かされるような出来事があると、太鼓を叩いたり踊ったり、その出来事を演技で再現したり洞窟に絵を描くことで、余分な“闘争”や“逃走”のエネルギーを放出していました。真の“直観型”リーダーシップは、真実を目の当たりにした相手が目を覚ました時に引き起こされるショックに対応できるよう手を差し伸べるものです。

プロセス共有

真の“直観型”リーダーシップは、“闘争”や“逃走”の反応から回復するために習慣的に手を差し伸べることの重要性を心得ています。人はこのような化学反応をはねのけ、“いつもの日常”に戻るためには時間が必要ですが、残念ながら現代ビジネスの文化ではその必要とする時間そのものが蔑ろにされています。

“裸の王様”に登場する民衆を思い出してください。誤った思い込みは、王様を騙した仕立屋によってもたされました。「この布は自分にふさわしい仕事をしている人にしか見えない」と言われた住民は、布が見えないことにより“闘争・逃走”感覚に陥り恐怖を覚えたのでした。

見えないことに絶望的になり、何としても見たいという感情が人々を硬直させポッサムのように身体がシャットダウン状態になったのです。そして、死んだふりをしたポッサムが逃走したのと同様、私たち人間が備え持つ“機械的な思考”が働き、「ええ、なんて素敵な布でしょう」と答えたのです。

物語の子供が真実を叫んだことによって民衆は目を覚まし、王様が裸の状態であることに気づいたのです。物語ではその後民衆がどうしたからは語られていませんが想像してみましょう。おそらく、その後何週間何カ月の時が流れ、何年もの間この出来事は語り継がれたでしょう。また、パレードでの雰囲気、子供が叫んだ瞬間や仕立屋に対する感情などが細かく歌になったかもしれません。集会ではその歌に合わせフォークダンスを踊り、集会場にはこの出来事から人々が学んだことを誇らしげに展示し、視覚的なアートとして残したでしょう。

真の“直観型”リーダーシップ:
・できるだけ相手に負担をかけずに目覚めさせます。
・目覚めた後のフォローを行い、悪い目覚めに伴う化学反応を放出するための支援をします。
・ビジネス文化における誤った方向性を軌道修正し、より有意義な考えを広げる努力をします。
例えば、解雇等でチームが精神的ダメージを受けている場合には、週末の息抜き程度では結束力を回復することができないからです。
・目覚めた後のショックから回復できるよう休息とリチャージすることを促します。
・新たな真実を受け止められるよう工夫のある取り組みを助成します。
・新たな気づきから啓発された神経系統が、“いつもの日常”の状態へ回復できるよう励まします。

“末永く続く幸せ”だからといって山や谷がないわけではありません。良き時間を過ごしている時には満たされますし、苦難な時期を共にすることによって別の意味での幸福感を得ることもあります。危ない道に迷い込んだ時に正してもらえる事はありがたい事です。但し、真実からのショックを消化してからにはなりますが。長い年月をかけ修正を幾重にも重ねることで私たちは開花するのです。私たちの旅は、目覚めるたびに歌や踊り、芸術や愛によって豊かになるのです。


著者情報
ディー・ワグナー
ディー・ワグナー(LPC, BC-DMT)はカウンセラー、米国アトランタにてダンス・ムーブメント・セラピストとして25年の経験を持つ。2017年ICFコンバージでは神経系機能をテーマに発表し、ICFブログでもお馴染みの存在。その他記事は以下に掲載されている:American Journal of Dance Therapy; Body, Movement and Dance in Psychotherapy; Voices: the Art and Science of Psychotherapy (American Academy of Psychotherapists); Elephant Journal and Asana International Yoga Journal.
ディー・ワグナーは、ワークブックNaked Online: A DoZen Ways to Grow from Internet Datingの共同制作者でもある。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Dee Wagner
Coaching World, October 09, 2018, How Nervous System Science Helps Coaches Understand Disruptive Leadership
https://coachfederation.org/blog/disruptive-leadership

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】武道によるプレゼンスの具現化

合気道、それはたびたび「平和の芸術」と称される、パートナーとの繋がりや融合を育む稽古です。私は、パートナーと物理的に組む前からそれをしようと努力しています。そこには物理的なふれあいを続けるためのエネルギッシュな関係があります。その関係や触れ合いを通じ、技をもって相手を導きます。私たちは物理的に技をかけ、完了した時にエネルギッシュな関係を体感します。

私は相手をリードしたり引っ張ったりはしません。代わりに、今現在に心をにむける稽古をし、それからまず自分自身と、次に相手と繋がる稽古をし、「私たち」を信じる稽古をします。

トレーニングの前に、私はいつもその夜の意図の確認をします。稽古のメリットと価値は、意図にありますー私の成長の役に立つものは何だろう? ある夜、私はその日早くに受けたコーチングセッションを思い返していました。私が合気道で稽古をしていることは私がクライアントにもたらそうとしていることープレゼンス、繋がり、需要、そして一体感ーと同じ、と気がつきました。

フェルトセンス(内的感覚)の具現化

コーチとして私が広がりを持って繋がり、私のクライアントが自分自身を探求することが可能であるとき、クライアントは認められ、受け入れらる内的感覚を持ちます。彼らは、自分が誰であり、何を経験したかについて尊厳を持つようになります。

この連携は深いリラクゼーションや自分とクライアントの信頼をもたらすことが確認されています。 これは、それだけでクライアントにとって特別な経験となり得ます。

稽古の時の体の感覚で認識できるような呼吸が、私たちの筋肉、臓器、内分泌系、神経系ーつまり私たちの神経系全体の緊張を解くことに結びつく、ということが神経科学により数多く証明されています。私たちは体に心が宿っているのではなく、統合された一つのシステムなのです。

リラックスした体は柔らかく、他者を受け入れやすくなります。
人と人とのコミュニケーションの97パーセントは、心ではなく体を通してであると示唆されています。リラックスして開いた体は安心と共感を伝え、他者を前へと誘い、そして受け止めます。より深いパートナーシップが生まれるのです。

どのようにして私たちはそのセッションを通して深いパートナーシップを築き、創り続ける可能性を培えるのでしょうか?明らかに、それは今ここにいることです。プレゼンスは心の状態ではありません。具体的に示されている練習です。

練習の方法と繋がり

私たちは誰かと真にコネクトしようとする前に、体温、冷たさ、硬さ、振動など、自分の感覚とコネクトすべきです。この生きているサインはいつもそこにあります。
全ての生きものにおいて、生きるとは、脈を打つことを強いることなのです。

さて、あなたを簡単な練習に招待しましょう。椅子に座って足は床につけてください。
深い呼吸をして、椅子に体を預けてください。椅子によってホールドされたあなたの重さを感じる時間を取りましょう。

もう少し深く、ゆっくり呼吸をし、胸郭が横方向に伸び縮みするのを感じましょう。
1分ほど呼吸とともにいて、あなたの体の感覚や、そのゆるやかに、リラックスしていく自然な反応を感じましょう。

次に、前方向に開く呼吸を感じますが、同様に後ろへの感覚も大切です。度々、私たちは体に”後ろ”があるのを忘れます。
あなたの呼吸が、ゆっくりと肩に、それからあなたの中心、後ろの下の方向に流れていくことに意識を持ってきましょう。あなたの体の感覚を感じ、共にいましょう。

あなたの足元まで意識を持ってこられるようになるまで続けましょう。

靴の中の靴底に意識を向けた時、あなたの呼吸は自然とどうなりましたか?床の上の靴底では?床に流れ込むあなたのエネルギーをイメージしましょう。あなたの体に、足元にあったあなたの意識を新しい場所に移動する時間を取りましょう。呼吸パターンの変化、体のリラックス状態にも意識を向けましょう。

合気道の本質とコーチング

合気道と同様、この具現化したプレゼンスはまず自分自身と、それからクライアントとより深く同調し、傾聴する能力を高めます。 クライアントが望むものに対するあなたの好奇心は、鋭くなります。この体でいることはクライアントのリソースや才能、スキル、ギフトを呼び出し、望んだ結果の実現をもたらします。

あなたはクライアントの響きを高める質問ができ、深い恐れや欲望にもっと気づくことができるようになります。あなたはクライアントに起きたわずかなエネルギーの変化を観察することができ、クライアントの体は新しい真実を認知していることがわかるでしょう。

それらのエネルギーにより、あなたはセッション中に何が起きているのかを明らかにするための質問することができます。あなたはクライアントが自分たち自身とあなたの信頼性を信じ始めるような、深く観察されるという体験を創り出します。
ここから、合気道で経験するような美しいパートナーシップ が生み出されるでしょう。


著者情報
メール・マッキンリー
メール・マッキンリー(MCC)は、コーチングの経験を積むための身体と言語の専門知識を合わせ持ち、洞察力があり、啓発的で思いやりがある。
メールのキャリアー栄養士、ビジネスコンサルタント、コーチのどれもーを通して、彼女の深い願いは人々が自分たちの思い描く人生を歩むということである。 メールは経営コンサルタントとして25年過ごし、その間プロセスの再設計と実施を担当するチームに従事する。米国と欧州の両方で数多くのチームとエグゼクティブをコーチした。1992年にMaster Somatic Coachの認定を受けた。
彼女は合気道(初段ー黒帯の最初の段階)の稽古を通して身体の啓発を続けている。メールについて詳しくはhttps://merlemckinley.com


【翻訳 栂村雅美】
Originally written in English by Merle McKinley
Coaching World, October 3, 2018, Embodying Presence through a Martial Art
https://coachfederation.org/blog/presence-through-martial-arts

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】コーチングの対話をより豊かにする「遊び」の力

「一生をかけて対話をするよりも一時間遊ぶ方が、その人についてより多くを知ることができる」プラトン

コーチングの対話は組織のカルチャーの中で、才能を育て、維持するための手段として採用されるようになりました。研究によれば、人に対してこのような対話を持つことは、信頼やパフォーマンスを上げ、関係性を良くすることに役立ちます。しかし、クライアントが言葉に詰まり、上手く表現が出来ない時、従来のように言葉と言語的なものがコミュニケーションの手法として機能しない時はどうしたら良いのでしょうか?

通常、幼少期にしか重要視されない「遊び」の持つ力は、大人にとっても重要です。研究では、遊びという手段は、人のイマジネーション、イノベーションや、創造性を年齢に関わらず刺激します。コーチングプロセスの中でもクリエイティブな手段で自らを表現するようにしてもらうことは、クライアントにとっても自分や周囲を取り巻く世界のことを深く理解する手助けになり得ます。

もし遊びを採り入れることにより私達のコーチングプラクティスがより豊かになるのであれば、プロフェッショナルのコーチとしてどうすれば良いでしょうか? 内省的思考と同様に、クライアントのビジュアルシンキング(視覚的に考えること)を刺激することが、コーチングでの関係性を深め、個人の複雑な内面をより速く理解することに役立つのだとしたらどうでしょうか?

カラフルなねんど遊びを導入した私のプラクティスは、意味を見つけ、課題を解決し、決定をすることにおいて非常に価値があることを証明してくれました。その柔軟性に富んだ性質は、探求の可能性が無限大であることを示しています。カラフルなねんどで作られた造形物は、複雑な思考の集まり、感情や行動に囚われることと違い、自由をもたらしてくれます。新しいレベルの洞察や、ノウハウがそこでは明らかになります。

「ここにあるもの」ではなく「あそこにあるもの」にフォーカスすることが出来るので、抑制による壁からも開放されます。ものごとが外面化され、客観化されるので、クライアントも個人的で困難なことであると感じることなく話やすくなります。それに対して言葉は、もっと露骨で露出的です。同様に、明確にすることが難しい課題も、遊んだりものを作り上げることはコミュニケーションの解決策として有効です。クライアントとこの様にワークを行うことは、Jenny BirdとSarah Gornallの言葉にも通じます:「コミュニケーションに全ての感覚を使うことで、より深い絆を築き、よりパワフルに働くことができるのだ。」

コーチとして、クライアントとねんどを使う時に起きることは非常に興味深いものです。穏やかな観察と、パワフルな質問を使いながら、私たちはクライアントのビジュアル世界の中にどんなメッセージが隠れているのかを探って行きます。同じやり方で、非言語的なシンボルに込められた意味とメタファーを、クライアントとの対話やクライアントが柔らかな物体をどう扱うかなどから探ります。出来上がった形や、選択された色はどんなものでしょうか。もしかしたら、その意味はストーリーや、いくつもの可能性のあるシナリオから来ているかもしれません。出来上がったものはもちろん、そのまわりのねんどの欠片をを注意深く見ることも、そこに直感的なシンボルが含まれていることがあるので重要になります。

例えば、つい先日クライアントが小さなねんどの欠片を手の中でくり返し玩びながら、いつまでも下に置いたり、造形物にくっつけたりしないのに気付きました。その後の観察で、クライアントはこの小さな、サイコロ状の欠片を自分のアイデンティティだと認識していることが分かりました。そのアイデンティティは、机の上に置かれるのを、文字通りにも比喩的にも恐れていたのです。

このようなブレイクスルーの瞬間は、言葉では失敗するような場面を遊びが解決する可能性を示してくれています。ねんどは視覚、聴覚、運動感覚のスキルを使うことで、理解し、洞察力を深め、思考のロックを外します。ねんどは複雑なものを切り崩し、自己認識や自信を育てます。ですので、頭で考えることを止めて、少し手を動かしてみてはどうでしょうか。コーチングの対話を窮屈なものにするのではなく、もっと豊かなものにしてみませんか? 時にはおもちゃで遊ぶことから始めてみようではありませんか。


著者情報
ケイティ・デンヤー
ケイティ・デンヤーはハイ・パフォーミング・リーダーシップ・デブロップメント・コーチであり、ものごとを違う目で見ることを大事にしている。ケイティは、クライアントが彼ら自身について何が本当の動機、信念、価値や望みとなっているのかなどを考えるための場所を提供し、彼らが確かさや自信、インパクトやプレゼンスを見つけられるように、他の誰もがしなかった質問をしている。ケイティと繋がるには、インスタグラムのアカウント@pj_coachingへ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Katie Denyer
Coaching World, July 3 2017, The Power of Play
https://coachfederation.org/blog/the-power-of-play

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【CoachingWorld】支援せよ、従業員エンゲージメントを発展させる自主性を

Human Capital Institute(ヒューマン・キャピタル・インスティテュート)と実施した調査結果から、組織におけるマネジメントスタイルは二分しているという事と、最も効果的なマネジメントスタイルの内容は何かという事が明らかになりました。「権威的」または「指示的」なマネジメントスタイルは、ある特定の時点までは重要であると答えながらも、最も効果的なマネジメントスタイルは「コーチング的」あるいは「支援的」と調査対象者は述べています。メルボルン大学のギャビン・R・スレンプ氏(Gavin R. Slemp)ララ・H・モスマン氏(Lara H. Mossman)が行った世界中の3万人を超える働く人を対象とした調査のメタ分析でも同様の結果が見られました。

二分するマネジメントスタイルにおける対照的なリーダーシップは、それぞれ「支配型リーダー」と「自主性支援型リーダー」に区別されており、スレンプ氏とモスマン氏はこの結果を次のように説明しています。「支配型リーダーシップは、抑制的で息苦しいもの。それに対し、自主性支援型リーダーシップは、従業員が自ら考え行動できる自立した個人として扱い、任せることで力がつきます。常に一つのスタイルを貫くことはできないかもしれませんが、リーダーが従業員の自主性を支援すればするほど彼らの成果は上がると言えるでしょう。」

自主性支援型リーダーシップをなんらかの形で受けた経験がある、と答えた対象者のデータを分析した結果、スレンプ氏とモスマン氏は、このようなリーダーシップは下記を大きく後押ししていると言います:

  • 内発的動機づけ
  • 職場でのウェルビーイング(心身が健康な状態)
  • 仕事に対する満足度
  • 業務に対する固い決意や忠誠心
  • 業務上のエンゲージメント向上

更には、このようなリーダーシップ下で働く従業員は、バーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しむ可能性が低いことがわかりました。また、これら結果は国民文化に関わらず同様であることが分かりました。

従業員が高いエンゲージメント(一体感)を感じ満足度が高まると、組織自体に恩恵をもたらす可能性が高まります。では、組織あるいはリーダーはどのようにすれば従業員の自主性を支援できるのでしょうか?

この研究から言えることは、従業員の働くことへのモチベーション、パフォーマンス、心理機能にポジティブな影響を与えることに重点的に取り組まなければならないということです。できることは、次のようにいくつもあります:

  • 従業員が自ら選択する機会を与え、より重要な決断事項に発言権を与える。
  • 自発的な言動を促しながら必要に応じて助言や線引きをする。
  • 従業員の持つ観点に興味関心をもち、懸念点には共感的に関わる。
  • プロジェクトの取り組みにおいてはその意義や重要性を明確に伝え、そのプロジェクトや目標達成に向け責任をもって取り組めるよう支援する。
  • マイクロマネジメントや行き過ぎた制裁を課す、あるいは報酬を与え望ましい言動や結果を引き出す等、自主性を抑制するような言動は避ける。

著者情報
リサ・カニングハム
リサ・カニングハムはICFのソーシャルメディアスペシャリストを担うフリーランスのライターでありソーシャルメディアコンサルタント。チャタム大学(米国ペンシルバニア州)にてプロフェショナル・ライティングの修士号を取得、WEBコンテンツの開発に尽力している。また、ピッツバーグ大学(米国ペンシルバニア州)にて英文学の博士号も取得している。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, September 11, 2018, Support, Autonomy can Foster Better Employee Management.
https://coachfederation.org/blog/autonomy-fosters-engagement

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【CoachingWorld】コーチは「問題」の根幹を捕える必要があるか?

クライアントは、しばしば自らに変化をもたらすことを期待してコーチングを求めます。その時、ある領域を「問題」であると自らラベリングし、それに対する解決策をコーチング的なアプローチから得ようとすることがあります。これはコーチに対してカギとなる問題を提示しています:彼らが前に進むために、現在抱えている「問題」をどれだけ掘り起こす必要があるのでしょうか? 別の言い方をすれば、ある人が本当の意味で視野を変え、行動に移していくために、我々コーチは「問題」の根幹を捕える必要があるのでしょうか?

私の体験では、コーチングのクライアントというのはある程度、現在の状況についての掘り起こしを期待していると思います。彼らにとってこの内省的なプロセスは、問題とされる領域の原因となる部分に対して、自らの世界の中で今何が起きているのかを理解し、その根幹を捕えたり、そこに迫ることが出来るものです。間違いなく、コーチの役割の一つはアクティブリスニング的にクライアントに耳を傾けることであり、それにより信頼関係や親密な関係が生まれます。そして、彼らが現在抱えている「問題」をなんとかしようと考える限り、非生産的で堂々巡りな思考に囚われてしまう可能性があるという事実にも、コーチは常に注意していなければなりません。

例えば、あなたの行うコーチング・セッションについて考えてみてください。セッションの中で「問題」の領域についての話を一番大きくとりあげたことはありますか? そこでした質問や質問の順序は、クライアントを上手くサポートし、解決策を見出すことを手助けするどころか、問題をよりもつれさせてはいなかったでしょうか? コーチ・トレーナーとして、私はこうした情景をしばしば見てきました。新人コーチの多くは、人の心を動かすような未来を描くことよりも、問題を特定し解決することにフォーカスしがちなのです。

もちろん人が成長していくために、問題の原因を理解することが必要であるという考えには、理論的な魅力があります。しかし、コーチングでの対話に「問題について話す」というマインドセットで臨むことは、クライアント(そして私たち自身)がストーリーの網に絡め取られてしまう危険性があります。とるにたらない細かなことばかり質問してしまい、問題が何故起きたのか、どうしてこうなってしまったのかということにばかりフォーカスしてしまうという罠に陥ってしまいかねません。こうした話し方は、クライアントをネガティブで不安な状態にさせてしまい、彼らが問題を超えて未来のゴールに向けて視野を広げることを妨げてしまうことを避けられません。

クライアントがポジティブな感情を抱き、カタルシスを開放することも選べる中で、入り組んだ問題についてフォーカスし思索することは、その人が前に進むことを阻んでしまうことにもなり得ます。多くのクライアントは自身が直面している問題についてはすでによく知っているため、問題のみにフォーカスした対話は、彼らの視野を広くすることには繋がりません。逆に、コーチによって投げかけられた質問が挑戦的で、未来の状態を見つけるためのものである程、クライアントが新しいアイデアを創り出す助けになるものです。このプロセスは、彼らにとって自分を変えるきっかけ、あるいは変えずにはいられない動機を作り出すことにも繋がります。

私達はこのような「解決」にフォーカスしたスタイルを用いることにより、クライアントが未来のビジョンを描くのを助け、望む状態と現在の状態との違いを明らかにすることにも役立つことが出来ます。これにより、より高いレベルの当事者意識を感じてもらい、それにより彼らが変化し前に進むためのモチベーションを上げることが出来ます。

とはいえ、問題の根幹を掘り起こす質問を全くしてはいけないということではありません。この質問は、例えば認知行動的なコンテキストでのコーチングにおいて、とても重要になってきます。このアプローチでは、クライアントが物事に適切に対処していくために、現在の状況を理解することが必要です。他にも、過去の挑戦をどう解決したかを明らかにし、次の成功のために活かしたい時などにも有効でしょう。

コーチがこのパラダイムで仕事を出来るようになるためには、いくつかのポイントがあります。一つ目にして最も重要なものとして、優れたコーチは、クライアントがしている話が、前に進むためではない、「問題」についての話なのかどうかを見極めることが出来なくてはいけません。2つ目に、一連の質問を行っていく際、問題について聞く質問が、クライアントのためではなくコーチの好奇心によるものではないかをよく認識しておくことが重要になります。

最後の、そして決定的かもしれないものとして、コーチは、クライアントのサポートのために必要な情報としての問題への理解を手放す必要があります。これを受け入れ、相手の込み入った問題について知らないままクライアントに向き合うことは、最初は非常に勇気のいることでしょう。しかし、そうすることにより、コーチはクライアントの劇的な変化を起こすサポートが行える、よりレベルの高い存在となることが出来るのです。

(c)Smarter Learning Ltd.


著者情報
ジョセフ・グレッチ, ACC
ジョセフ・グレッチは、各国の企業や個人に対してエグゼクティブ、キャリア、ライフ・コーチングを行い、人の可能性を強く信じ、育てている。彼の、一人ひとりを全体的に見ていく手法は彼のコンサルタント会社、Smarter Learning Ltdを支えている。コーチとして、リーダーたちが信頼を勝ち取り、成長し、自身のポテンシャルを使えるようになることを傍で支えている。ジョセフはまた、コーチング業界を育てることにも情熱を注ぎ、ICF認定プログラムのコーチ・トレーナーをすると共に、CIPDやILMの資格も有している。ジョセフについては詳しくは、www.smarter-learning.netへ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Joseph Grech, ACC
Coaching World, June 12, 2018, Should We Get to the Root of a Problem?
https://coachfederation.org/blog/root-of-problem

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】コーチのためのエモーショナル・インテリジェンス(こころの知性)活用法

コーチである皆さんは、エモーショナル・インテリジェンス(EI、こころの知性)の話を長年にわたり耳にしてきたことだと思います。世の中には複数のEIモデルがありますが、私が開発したモデルでは自他の感情に気づくことや情動を管理し行動すること、そして周囲の人と上手に対話をすることを提唱しています。EI能力の高い人は、日常はもとより厳しい状況下でさえも感情のバランスを保つことができます。このような人は、人とのやり取りにおいて言葉では表現されていない感情の動きや様々な力関係を汲み取ることができ、仕事やプライベートな関係でポジティブな人間関係を培うことができます。このような能力は、優れたリーダーやチームメンバーには欠かせない要素です。そういう意味では、親としてあるいは配偶者としても同じことがいえるでしょう。

一方で、EIの乏しい人は人生や仕事において苦労することになります。目標達成を難しくさせることはもちろんのこと、他者を効果的に導くことは困難になるでしょう。具体的には、感情の自己管理能力に欠けた人は、直ぐにカッとなり、特にストレスがかかっている時には相手に向かって暴言を吐くことでしょう。また、共感力に乏しいリーダーは、部下と良い関係性を築くことはできません。すなわち、共感力に欠ける人は、誰しも有意義な人間関係を構築できず悪戦苦闘することになります。

下図は、 ケース・ウェスタン・リザーブ大学ウェザーヘッド・スクール・オブ・マネジメントのリチャード・ボヤツィス教授(米国Case Western Reserve University’s Weatherhead School of Management・Richard Boyatzis)と共に開発したEIのフレームワーク、「The Emotional and Social Intelligence Leadership Competencies(リーダーに必要なコンピテンシー:情動知性と社会的知性)」です。このモデルには、4つの領域に則し12のコンピテンシー(能力)が含まれています。これは誰にでも身につけることのできる能力です。この12のコンピテンシー(能力)こそが、優れたリーダーとそうでないリーダーの違いを生み出します。

また、EIはIQ(知能指数)とは異なり簡単に点数で表せるものではありません。包括的なEIプロフアイルを作成するために12のコンピテンシーを横断的に評価しますが、EIを把握するには360度評価の実施が最も適した方法です。本人の自己像とその人と共に働く人々がもつイメージの両面を捉えた360度評価は、多面性のあるEIの評価に適しています。仕事以外にも、時に家族や友人の評価が重要な役割を果たすこともあります。

コーチを職業としていれば、よく知る人からのフィードバックこそが自己の認識と他者から見た自分のギャップを埋めてくれることは理解できるはずです。フィードバックをもらうことによって、自分の強みを特定すると同時に自分の能力や活動の限界を知ることができます。そうすることで、EIを更に鍛えるためにできる事が見えてくるでしょう。自分の強みや限界を正確に理解することは、EIを開発する原動力になります。要するにEIは、不変なものではなく、開発できる能力なのです。

先ずは自分から

先ずは自分のコンピテンシーを育むことから始めることで、クライアントのEIを高めるコーチングが上手くいでしょう。優れたコーチは、自らのEI能力を常に発揮しています。具体的には、難しい状況でも感情のバランスをとり平常心を保っています。また、共感力を用いクライアントの意見や見解を理解し、その人に相応しい的を得たフィードバックをします。優れたコーチは、クライアントが自身の成長につながる可能性に気づけるよう心から支援します。これこそが上図のコンピテンシーにある「コーチとメンター」に欠かせない能力です。

EIの開発に役立つ、簡単にできる練習があります。それは、内省をすることです。ジャーナリング等により内省することで、自分の情動やそれが自分に与える影響に更に気づくことができるようになります。このことは、自己認識や自己管理を含む複数のコンピテンシーにわたり極めて重要です。また、マインドフル瞑想で脳を鍛えることもできます。マインドフル瞑想は、全てのコンピテンシーの基盤となる集中力を養い思考や心の乱れを軽減し、いずれのコンピテンシーを高めるための貴重な資源にもなります。その場、その瞬間にしっかり意識を向けることで、もっと“その場に存在する”ことができ、より良いリーダー、あるいは聴き手になれるでしょう。

コーチングにEIを取り入れ探求する

360度評価やEIを測定するツールは沢山あります。私のお薦めは、360度評価の中でも私とリチャード・ボヤツィス教授がコーン・フェリー社(Korn Ferry Hay Group)と共同開発したESCI-360(Emotional and Social Competency Inventory)です。ESCI-360は、リーダーに必要なEIコンピテンシーの全てを評価できるように開発されたものです。評価結果で出た自己像と他者からのイメージのギャップは、「活用できる情報」として扱い、クライアント自身がどのような成長を望むのかを探求することに役立てることができます。クライアントの目標達成のために役立つコンピテンシーを培うきっかけになることが理想です。

例をあげて見ていきましょう。リーダーの役割を担うにあたり、「セルフアウェアネス(自己認識)」と「セルフマネジメント(自己管理)」の領域は優れているが、「ソーシャルアウェアネス(社会認識)」と「リレーションシップマネジメント(人間関係の管理)」の能力を課題とするクライアントがいるとします。このようなケースは、チームや部下をもたない一般社員として優秀だった人が、チームや部署を任される立場に昇進した場合に多く見られます。それまでうまくいっていた個人の強みは、新しいリーダーの役割では全く通用せず四苦八苦するのです。ソフトウェア開発者として常にトップを走っていた人であっても、優れたチームリーダーになるには「インフルエンス(影響力)」や「コンフリクトマネジメント(衝突・対立の管理)」といったコンピテンシーを身につけることが必要となります。

コーチとしては、アドバイスをするよりも、クライアントが自己認識力を培い、自分の情動、習慣や癖、原動力に気づけるよう支援しましょう。クライアントの思考や行動のパターンに気づいたら、それを共有し親身になって何がそうさせているのか理解できるよう支援してください。いつもの悪い習慣に戻ってしまい、うまく行かない時に失敗してしまったと捉えているクライアントに対し、その出来事を成長のきっかけに転換しクライアントが再び軌道に乗れるよう支援するのです。

EIの基盤である「エモーショナル・セルフアウェアネス(情動の自己認識)」から取り組んでみてください。クライアントは、自分の原動力となる情動と逆に失速させる情動に気づくことでしょう。それによって情動と自分の価値観やビジョンを調和させることができるようになります。クライアントが成長の元となるモチベーションを保ち続けられるかどうかは、自身が意義目的や価値観を発見または再認識できるよう支援するコーチの能力にかかっています。優れたコーチと相手構わずワンパターンのコーチングをするコーチとの違いはここにあります。優秀なコーチは、クライアントと協同し信頼関係を築き、クライアントが目標を実現するために必要なコンピテンシーを習得できるよう支援します。そうすれば、クライアントは自ずと一層の努力をすることでしょう。

EIを開発する上で、有能なコーチが関わることほど効果的な方法はないと思います。目標設定だけではなく、クライアントへ質の高い適切なフィードバックをし、支援できるコーチの能力は、クライアントが長期的な変化を起こし続ける上で根本的な違いを生むことでしょう。優れたコーチからコーチングを受けたクライアントは、たとえコーチング関係が終了した後もEIを活用し、セルフコーチング力にアクセスし自らの道を選択して行くことでしょう。


著者情報
ダニエル・ゴールマン
ダニエル・ゴールマン
心理学者、ベストセラー作家
代表著書『EQ こころの知能指数』(Emotional Intelligence: Why it Can Matter More than IQ
最新の活動:EIの基礎能力に焦点をおいたプログラムをリリース、EIコーチ認定(Emotional Intelligence Coaching Certification)の発行をしている。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Daniel Goleman
Coaching World, September 10, 2018, How a Coach Works with Emotional Intelligence
https://coachfederation.org/blog/work-with-emotional-intelligence

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】座りっぱなしは脳に悪影響を与える

もしあなたが一日の大半を座って過ごしているなら、もっとイスやソファーから離れることを習慣にしたいと思うこともあるのではないでしょうか。UCLAの研究者達は、記憶に大きく関係する脳の部位と、座っている時間の関係性をつきとめました。

研究者は45歳~75歳の35名の被験者に、ここ1週間でどれだけ身体を使った行動をしていたかと、毎日何時間程度座って過ごしているかを質問しました。同時に、高解像度MRIで、脳の内側側頭葉(medial temporal lobe)、新しい情報を記憶する部位を調べました。

研究者はこの被験者たちの情報から、長く座っている人ほど、部位が細くなっていることに気が付きました。内側側頭葉のやせ細りは、中年期から老年期において、認識の衰えと痴呆の前兆となりえます。

この研究では、被験者に週どれだけの休息を得ているかを聞いてはいませんが、研究者達は座っている時間を減らすことが、アルツハイマーのリスクを抱える人にとって脳の健康増進に繋がると指摘しています。

これまでも長時間座っていることは、心臓病や糖尿病、うつ病、肥満などのリスクを上げることが報告されてきました。心と身体両方のために、1時間毎に5分程度、立ち上がって少し歩きましょう。もし机で仕事をしているなら、立って作業が出来るスタンディング・デスクの導入を検討しても良いでしょう。もしあなたが電話やオンラインでコーチングをしているなら、セッション中に(クライアントの気が散らない程度に)歩くのもありかもしれません。小さくてもこうした変化は、あなたの心と健康のメンテナンスに役立つことでしょう。


著者情報
リサ・カニンガム
リサ・カニンガムはICFのソーシャルメディアの専門家。フリーランスのライターや、ソーシャルメディアのコンサルタントとしても活動している。チャタム・ユニバーシティでのウェブ・コンテンツ・デブロプメントにフォーカスしたプロフェッショナルライティングの修士号と、ピッツバーグ・ユニバーシティでのイングリッシュライティングとコミュニケーションでの学士号を持つ。


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, June 12 2018, Too Much Sitting is Bad for Your Brain
https://coachfederation.org/blog/too-much-sitting-is-bad-for-your-brain

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【CoachingWorld】アサーションと協力で利害対立を解決に導く5つのTKIモデル

TKI(トーマス – キルマン コンフリクト・モード検査)は、過去40年以上に渡って活用されている「コンフリクト・マネジメント」のツールで、他人との衝突や対立(コンフリクト)の建設的な解決を目指すクライアントをサポートするのに最適なツールです。
ケネス・W・トーマス博士およびラルフ・H・キルマン博士が考案したこのTKIは、「アサーション(自分の主張をどれだけ通すか)」と「協調(相手の意向にどれだけ配慮したか)」という2つの軸から課題解決の行動を分類するツールです。
TKIは、この2つの行動軸から、利害対立を解決する5つのモードを以下のように定義しています。

  • 強制 (相手に協力せず、自分の意見を主張する):議論や討論に勝つことを優先して、自分の意見を押し通す
  • 協調 (自己主張をしつつ、相手の意向も尊重する): win-winの関係構築を目指し、協力して課題解決を行う
  • 妥協(双方が納得できる意見を取り入れる):双方が譲歩して妥協点を見つけ、協力して課題解決を行う
  • 回避 (自己主張もしないが、相手の意向にも同意しない):衝突・対立そのものに関わらない
  • 服従 (自己主張せず、相手の意向に従う):相手の怒りを鎮めたり、屈服する

すべての人が、この5つの利害対立の解決モードを使い分ける能力を持っているはずですが、現実には、多くの人が自分が使いやすい1~3つのモードに偏り、効果的な使い分けを行っていないように思えます。コンフリクト・マネジメントのコーチングでは、クライアントが自身の行動の悪循環を断ち切って、これまでに使ったことがないモードに挑戦したり、状況に即した効果的なモード選択を行えるようにサポートします。具体的には、クライアントがいつも選択しがちな(または使ったことがない)TKIモードについて自己認識を高めるところから始めます。一旦立ち止まって冷静になったり、状況を分析し、最適なモードを意識的に選択する方法について考えることなどが、コーチングの主なテーマとなります。コーチングを通じてクライアントがワンパターンな条件反射的行動を脱し、より効果的な課題解決力を身に着けることにつながるでしょう。
コーチングセッションでは、TKIの5つの課題解決モードが、利害対立のどの場面において効果的(または逆効果)かクライアントとディスカッションを行います。これは個人セッション、グループセッションを問わず使えます。職場や家庭での実例を取り上げつつ、以下の基本的な質問を使ってクライアントの気づきをうながしていきましょう。

TKI 効果的なコーチングの質問「5つのモードは、利害対立解決のどのような場面で役立ちましたか?またはどんな場合に役立ちそうですか?」 効果的なコーチングの質問「過去にいずれかのモードを使った時、どのようなリスクを感じましたか?またはどんなリスクが想定できるでしょうか?」
強制 結果を左右するような極めて重要、かつ緊急性の高い決断を行う時、またはその決断を短期間に行う必要がある場合 時間に余裕がある時や重要性がそれほど高くない決断にこのモードを使うと、他人からは独裁的なマネージャー/支配的なチームメンバーだと思われ、関係性が悪化する恐れがある
協調 ある状況について詳細なディスカッションを行う時間的な余裕があり、かつ関係者全員がwin-winの関係の構築をする意志がある場合 時間に制約がある場合、または関係者の一部に協調する意志がない場合にうまくいかない恐れがある
妥協 ある状況についてのディスカッションにある程度時間をかけることができ、かつ関係者全員が双方が納得できる解決方法を見出す意志がある場合 時間に制約がある場合、または関係者の一部に妥協する意志がない場合にうまくいかない恐れがある
回避 膠着状態が続き、議論を回避して小休止することが望ましい時。または精神的・身体的な幸福などが脅かされている場合 個人の幸福が脅かされているような状況ではなく、時間に制約がある中で重要な決断を行う必要がある場合にうまくいかない恐れがある
服従 衝突・対立や自己主張を通じて得られる成果に、それほど大きな重要性や意義がない場合 このモードのみを繰り返し使うと、他者に利用される恐れがある

通常、「協調」や「妥協」が最適なモードだと思われがちですが、TKIコーチングでは、それぞれのモードを状況に応じて適切に使い分けることこそが大切だという気づきが生まれます。
クライアントは、一つのモードだけを繰り返し使っていても、様々なタイプの衝突や対立を解決することはできないことや、これまでに使ったことがないモードに挑戦することが自己成長につながることに気づき、感謝します。
また、5つのモードを使い分け、状況に応じた適切なアサーションや協力的な行動を行うことの価値やメリット、そしてクライアント自身の現在の能力に気づくでしょう。
すべての人々がTKIを活用して衝突や対立を建設的に解決することができたとしたら、素晴らしい世の中になると思いませんか?


著者情報
キャロリン・ハミルトン・クービーCEC, PCC
キャロリン・ハミルトン・クービーCEC, PCCは、企業研修のトレーナーおよび講演家で、エネルギッシュかつ穏やかな人柄で知られる。カナダ・オンタリオ州のキングストンで、エグゼクティブ・コーチング「Morningstar Centre for Engagement」を運営する。ロイヤル・ローズ大学でエグゼクティブ・コーチングの認定資格、聖フランシスコ・ザビエル大学で成人教育の認定資格、セント・ローレンス・カレッジで人事管理の資格を取得。神経言語プログラミング(NLP)とMBTIの認定プラクティショナー、「Coaching Out of the Box」認定トレーナー、「World Business Executive Coach Summit」オフィシャル・パートナー、ICFのメンターコーチ、コーチング・コンピテンシーの第一人者など、多彩な顔を持つ。詳細は、公式ホームページ(http://mstar.ca)またはLinkedInをご覧ください。


【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Carolyn Hamilton-Kuby, CEC, PCC
Coaching World, March 5 2018, 5 Ways to Leverage Assertiveness and Cooperativeness in Conflict Situations Using TKI
https://coachfederation.org/conflict-situations

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【CoachingWorld】リーダーの気づき:あなたのユーモアは従業員に影響を与える

職場でリーダーが何を言い、何をするかは、従業員に影響を与える可能性があります。

たとえば、職場でのユーモアは、従業員へのモチベーションアップや勇気づけの手段となり得ますが、セントルイスのワシントン大学の調査によると、上司のユーモアはルールを破ってもかまわない、という風潮を作り出す可能性があります。

「良性の違反理論」に則ったジョークは、事務用品を盗んだり、仲間を侮辱したり、報告書を誇張したりするなど、他の違反(侵害)もやってよいことだと、その意に反して、従業員に伝わってしまうことがあります。

アカデミーオブマネジメントジャーナルに掲載された彼らの論文では、研究者は「良性の違反理論」の例として、次のようなジョークをあげています。
「恐竜とまともな弁護士の共通点は何か?。 それは両方とも絶滅している、ということです。」

あるタイプのユーモアは、この理論によれば、「規範への違反」を引き起こします。

この場合の違反は、まともな弁護士は絶滅している、ということです。

まともな弁護士がもう一人もいない、とは誰も本当には思っていないので、この違反は良性と言えます。

つまり、この理論では、違反と良性であることが同時に起こる必要があるのです。

セントルイスのワシントン大学のオリン・ビジネススクール、組織行動学部のポスドク研究員である、Zhenyu Liaoは「あなたは従業員に何らかの規範を違反して良いと暗に伝えるシグナルを送っている」と言っています。

「リーダーがユーモアを使ってはならない、と言っているわけではありません。

ただ、リーダーは自分のユーモアにもっと注意を払うべきです。

あなたの役割、立場(行動のすべて)は、ここではどんな行動が許容されるのか、ということについてのとても強いシグナルを発信しています。」

また彼らは、200人以上の中国のMBA学生と、200人以上のアメリカの主に銀行員、営業職、技術職の従業員に対する一連の調査から、ある結論を導き出しました。

応用心理学のジャーナルに掲載される別の論文で、Liaoと同僚たちはリーダーが怒りを爆発させたときに何が起こるかを調べました。

ある一定期間、99人のリーダーと140人の部下を対象に、悪罵を受けたり、言ったりした後の行動についての調査を行いました。

研究者たちは「道徳的な勇気」をもつ注意深いリーダーは、憮然としている部下に対し、面白い仕事のわりあてや、キャリア構築の助言を行ったり、より個人的に気にかけたり、仕事のリソースを提供することによって、後で自分の罪悪感を拭い去ろうとしている、と結論づけました。

「あなたがこの種の行動をしていると自分でわかったとき、それはすべきでないことだ、と気づくかもしれません。
それに対し何らかの罪滅ぼしをしたいと思うかもしれません。」とLiaoは言います。

このタイプの行動は、その日の出来事にあるように、リーダーシップスタイルにそれほど根ざしていない、とLiaoは述べています。

上司にとっては良くない一日であったかもしれません。

上司が部下との行動に意識的に注意深くあれば、怒りの爆発を避けることができるし、それゆえ罪滅ぼしの行動をとることもないでしょう。


著者情報
Lisa Cunningham
Lisa Cunninghamは、ICFのソーシャルメディアスペシャリストであり、フリーランスの作家、ソーシャルメディアのコンサルタントです。
彼女はチャタム大学で、Webコンテンツ開発に関する執筆で修士号を、ピッツバーグ大学では英語ライティングとコミュニケーションで学士号を得ています。


【翻訳 畑さち子】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, July 3 2017, Leaders Be Aware:Your Humor Influences Employees
https://coachfederation.org/blog/leaders-be-aware-your-humor-influences-employees

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】神経科学からモチベーションを理解する:クライアントは恐れているのか、またはシャットダウンしているのか?

人が恐れを感じ、励ましを必要としている状態なのか、または事実上シャットダウン状態(神経学的には限界の状態)に陥っているのか。神経学はこの両者の違いを認識するために役立ちます。クライアントが無力と感じる時、それは選択肢がほとんど無い状態でしょうか?あるいは追い詰められた状態でしょうか?

トラウマの専門家であり、“Waking the Tiger, Trauma and Memory and In an Unspoken Voice”の著者であるピーター・レバイン(Peter Levine)氏は、動物が生命の危機にさらされるあらゆる場面での動物的反応を長年研究してきました。全ての哺乳類は、生命の危険を察知すると生理的な反応を起こすものですが、動物は私たち人間よりもそれに対応する力に優れています。私たちは、思考する能力に優れているが故に必要以上に考え過ぎ、やがてバーンアウトしてしまうのです。

追いつめられると、闘うことや逃げることの術を失います。つまり、神経学でいうとシャットダウンの状態です。身体がシャットダウンするこの状態は、生物学的にはトカゲから進化する過程で引き継がれたもの(なごり)です。トカゲは、身をシャットダウンすることで酸素の無駄な消費をおさえています。哺乳類にとって、酸素がなければ血液がつくられません。よって、生命の危機に直面した時を踏まえ、シャットダウン機能を備えておく必要があるのです。

クライアントが“狸寝入り”をしている可能性は?

哺乳動物でシャットダウンの名人といえば、フクロネズミです。その他哺乳動物同様、フクロネズミは捕食者を察知するとシャットダウンし死んだふりをします。捕食者は、“死んだふり”をしているフクロネズミには興味を失い他の獲物を探すでしょう。分からない振りをすることを、私たちは“狸寝入りする”と表現することがあります。

人間がシャットダウンの状態に陥ると、頭が真っ白になり自分のことを「愚か」に思うかもしれません。「私には太刀打ちする力はない」「これ以上やっても意味がない」「私は愚かだな」のような否定的な独り言で更にシャットダウンすることもあるでしょう。

クライアントは、このような独り言を心に秘めているかもしれません。
クライアントがなかなか繋がりを感じられず、コーチングの関係性から距離を置く場合、否定的な独り言、またはシャットダウンしている可能性があります。シャットダウンの状態を察知する力とそれに対応する力がないと、コーチ自身がフラストレーションや限界を感じ始めるでしょう。

コーチは、どうしたらシャットダウン状態と、リスクに対し臆病になっていて励ましを必要としている状態を見分けることができるのか?

見分けるためには、モチベーションの低いクライアントとのやり取りの中でコーチは自らの身体反応に気づくことが大切です。この身体反応を認識する力は、ニュアンスをくみ取る際に役立ちます。

通常、クライアントに自信が不足している場合、コーチは支援したいと願うものです。クライアントの求めに応じ励ますことができると、コーチは恐れを抱いているクライアントの役に立ったと感じるでしょう。
一方で、クライアントのシャットダウン状態に対し、コーチ自身が不安になる、または攻撃的な感情を抱くこともあるでしょう。しかしながら、コーチ自身がこのような自らの感情を注意深く意識せずにいると、押し寄せる自らのシャットダウン状態に気づくこともないでしょう。
コーチのシャットダウンは、混乱やバーンアウトという形で現れる可能性があります。

コーチの辛抱する力に影響を及ぼすクライアント

クライアントがシャットダウン状態に陥ると、コーチは不安になり辛抱することが難しくなることがあります。シャットダウンした状態は、危険のサインであり、コーチがクライアントの切羽詰まった状態に巻き込まれることもあります。それにより、クライアントに対し気が短くなり辛抱強く接することができなくなります。

生命の危機にさらされた時に起こる、“闘争または逃走”反応はシャットダウンよりも良い選択肢なのです。闘争または逃走できれば、シャットダウンするよりも生き延びる可能性が高まるのです。シャットダウンはやがて死に至るのです。コーチがシャットダウン状態にあるクライアントと関わる場合に、悩みのあるクライアントをその状態から無意識に救い出そうとして、自らが闘争または逃走モードに陥ってしまうかもしれません。

シャットダウン状態にあるクライアントは、自分自身だけではなく私たちコーチにさえも攻撃的になることもあります。レバイン氏は、人は闘争または逃走モードになることでシャットダウンの状態から抜け出す術として身体が覚えていることを教えてくれています。悶々とした状態からひとたび目覚める時、私たちは“勢いよく”その状態から抜け出します。フクロネズミが死んだふりをして捕食者から身を守るように、闘争または逃走することは素早く身を守る術といえます。
コーチがモチベーションのなかなか上がらないクライアントの中で起こっていることを理解し、クライアント自身の神経系反応について気づかせることは、クライアントが無力さから抜け出すための大きな一歩です。クライアントのシャットダウン状態に気づくことが私たちコーチの“闘争・逃走・シャットダウン”モードに陥ることの防止になるでしょう。

教育が啓発をもたらす

クライアントの神経系が柔軟に機能している場合、クライアントを励ますことは恐れの克服に役立ちます。コーチが、クライアントのシャットダウン状態に気づくことができれば、励ますことだけに頼る以上にクライアントを教育出来る事となるのです。

全ての哺乳類共通に機能する神経系の働きについてクライアントを教育することは、霧を晴らし悶々とした状態から抜け出した時の興奮を静めることに役立ちます。生命の危機を感じるほどの出来事に対し、身体で起こることを説明することで、クライアントはそれが普通であることを知り安心するでしょう。再びクライアントが道筋を立て、成功に向け歩み出す自由をみつける助けになるコーチが、理解のあるコーチと言えるでしょう。


著者情報
ディー・ワグナー
ディー・ワグナー(LPC, BC-DMT)はカウンセラーであり、米国アトランタにてダンス・ムーブメント・セラピストとして25年の経験があります。2017年ICFコンバージでは神経系機能をテーマに発表し、ICFブログでもお馴染みの存在です。その他記事を以下に掲載しています:American Journal of Dance Therapy; Body, Movement and Dance in Psychotherapy; Voices: the Art and Science of Psychotherapy (American Academy of Psychotherapists); Elephant Journal and Asana International Yoga Journal.
ディー・ワグナーは、ワークブックNaked Online: A DoZen Ways to Grow from Internet Datingの共同制作者でもあります。


【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Dee Wagner
Coaching World, April 16, 2018, Using Nervous System Science to Understand Motivation: Are Clients Fearful or Shutdown?
https://coachfederation.org/blog/using-nervous-system-science-understand-motivation-clients-fearful-shutdown

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください