カテゴリー別アーカイブ: CoachingWorld コーチングワールド

【CoachingWorld】健康・幸せ・生産的な自分を手に入れるための7つの方法

クライアントが、自分を労わることの大切さに気づいた瞬間を見守ったことはありますか? または、あなた自身がその大切さに気づいていますか? 自分を大切にすることは、コーチとして、人間としての成長につながるだけでなく、本当の自分自身と対話する方法でもあります。以下の7つの習慣を実践し、時に自分自身を慈しんであげましょう。

1) たまにはNoと言ってみる

みんなを助けたいコーチにとって、Noと言うのは難しいもの。新しいビジネスのチャンスやクライアントの依頼を断るのは、金銭的な損失への恐れにもつながります。それでも、クライアントや他の誰もと同じように、あなた自身のワークライフバランスも大切だということを忘れないでください。忙しくてもう無理!という気持ちになってしまった時は、一週間に一度でもいいのでNoと言ってみてください。初めのうちは難しく感じられるかもしれませんが、次第に心がリフレッシュされるのを感じられるようになるはずです。
まだ確信が持てないあなたは、「成功者と真の成功者の違いは、真の成功者はあらゆることにNoと言っていることです」という、巨額の富を築いたウォーレン・バフェット氏の言葉を胸に刻みましょう。

2) 仕事場をすっきり整頓する

最近、創造性や生産性が失われていると感じるなら、仕事場を片付けて整理してみましょう。達成感やポジティブなエネルギーが心に湧いてくるはずです。ゴミや不要な物を処分することには、あなた自身も気づかないうちに心に溜まっていたストレスや悩み事を軽減する効果があります。どこかにあるはずなのに見つからない情報や、紛失してしまった物も、思いがけず見つかるかもしれません。すっきりと整頓した仕事場からは新しい環境へのポジティブなエネルギーが生まれ、創造性が心に溢れ出すのが感じられるでしょう。

3) “ポジティブ”メモを活用する

心にネガティブな感情が溜まっていると、ポジティブに考えることは難しいもの。ポジティブな気持ちになれる言葉や名言を目につきやすいところに置き、心をよりよい状態に保つ工夫をしましょう。ポジティブな気持ちになれる言葉を書いたメモや、誰かからかけられてうれしかった言葉をオフィスなどの目につくところに飾るなどがその一例です。私自身は、雑誌から切り取ったり、パソコンから印刷したやる気の出る名言などを仕事場に貼っています。付箋に手書きで書きとめたメモなども活用しています。大好きな名言を目につくところにいくつか貼るという簡単な方法を実践するだけで、ポジティブな気持ちが湧いてくるのが感じ取れるでしょう。

4) 癒しグッズを活用する

決まった場所に心が癒されるグッズを準備しておいたら、必要な時にさっと取り出して手軽に癒されることができます。下記の例を参考に、オリジナルの癒しグッズを用意しましょう。

  • ぬいぐるみ
  • クレヨンや色鉛筆、マーカーなどを使った塗り絵セット
  • エッセンシャルオイルなどのアロマグッズ
  • ヨガマット
  • 見ると笑顔になれる写真

5) 外に出かける

アメリカの思想家、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、「ゆっくりと流れる安息の時間や自然の静けさが、すべての悩みや仕事を忘れさせてくれることがある」と言っています。外に出かけ、歩き、自然と触れ合うことは、ストレスや心配事、憂鬱な気持ちを軽減し、生産性や創造性を高め、心身にポジティブな影響を与えるとされています。

6) SNSをお休みしてみる

時に自尊心を傷つけられたり、メンタルにも悪影響があると言われることもあるSNS。Facebookも、よりポジティブな内容のニュースフィードが表示されるアルゴリズムへの変更を先日発表しています。たまにはSNSをお休みし、ポジティブな気持ちになることをしてみませんか? 一日に30分だったとしても、大きな効果をもたらすでしょう。エクササイズをしたり、Netflixで映画を見たり、本記事の7つの方法を実践してみるのもいいですね。心だけでなく、目を休めることにもつながります。

7) 感謝することを習慣化する

時にはうまくいかない日々が続き、やりきれない気持ちになることもあるでしょう。そんな時には、うまくいったことや感謝すべきことを思い出しながら寝る前に一日を振り返り、そのうち最低3つをメモに書き出しておきます。私の友人は、日記代わりに「感謝の缶」を作り、その日に起きたよかった事を毎日最低1つメモに書き、年毎の缶に貯めています。ネガティブな気持ちになったら缶を開けてメモを読み返し、自分の人生がいかに感謝すべき出来事に満ちているか思い出しているのだそうです。また、年末には365枚(またはそれを超えることも)のメモを読み返し、一年を振り返っているそうです。2年前にこれを始めて以来、心身ともに健やかになれたと実感しているそうです。

皆さんは、どんな方法で自分を大切にしていますか? ぜひ、で教えてください!


著者情報
リサ・カニンガム
リサ・カニンガムリサはICFのソーシャルメディアスペシャリストであり、フリーライター、ソーシャルメディアコンサルタントでもある。チャタム・ユニバーシティでウェブのコンテンツの発展についてのプロフェッショナル・ライティングで修士号を取得、ユニバーシティ・オブ・ピッツバーグでイングリッシュ・ライティング&コミュニケーションで学士号を取得している。


【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Lisa Cunningham
Coaching World, July 3 2017, 7 Self-Care Habits that will Improve Your Health, Happiness and Productivity
https://coachfederation.org/blog/7-self-care-habits

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

【CoachingWorld】在ることの作法

クライアントやクライアントになろうとしている人は関心を向けて欲しいし、聴いて欲しいと思っています。そして、クライアントが元々持っている考える力を信じることで、行動へと導かれます。コーチはプレゼンス&コーチング・コミュニケーション(コーチング・スキルを使ってクライアントと共にいること)によるプロセスによってクライアントと共にいます。ICF はコーチングの際にコーチはどうすべきかを示すとても有効なコンピテンシー(能力)のセット(コーチングのコア・コンピテンシー)を作成しました。でもどうすればコーチは、クライアントが内在する自己の力及び創造する能力の可能性を感じることができるような信頼感と一体感の場をファシリテートできるのでしょうか?

コーチとしてのあり方はクライアントにとって人生を描き、設計する白いキャンバスのようなものです。白いキャンバスとしてのあり方を鍛える方法としてリレーショナル・プレゼンスがあります。リレーショナル・プレゼンスは人前で話す恐怖感を解決する為にスピーキング・サークルズ・インターナショナル創始者のリー・グリクステイン氏によって考案されました。リレーショナル・プレゼンスは人前で話す恐怖感の問題を解決するだけでなく、クライアントの思い込みにとらわれることなくクライアントを完全に受け入れ支援する、コーチとして真にクライアントと共にいることができる能力を鍛えることに有効です。

心地よいリレーショナル・プレゼンスの実践は優しい意識とともにゆったり聴く知性の空間における探求活動です。この手法はコーチとして必要な二つのコアになる作法、呼吸法とアイ・ゲイズ(優しい眼差し)を含みます。

呼吸する

呼吸に意識を向ける作法は穏やかで集中した心の状態を得る為に行われる多くの瞑想の真髄です。ところで、人とコミュニケーションする毎に何度位呼吸に意識を向けているでしょうか? 呼吸は直接的に神経系に働きかけ脳幹の活動を落ち着かせることが知られています。呼吸を意識することで、クライアントにも情報を処理する機会を与え、前向きな自己意識への創造を可能にさせます。

オードリー・シーモア(MCC)は、「呼吸は空間を埋めようとするものではなく、クライアントに安心感とひらめきを得る間(ま)を与える。クライアントは呼吸の間を持つことで静寂の空間から何が現れようとしているのかに気づく機会を得る。」と言っています。

倉田隆弘氏(ACC)は、クライアントと向き合った時、呼吸法を次のように使うと言っています。「呼吸と共に訪れる沈黙にとても価値を感じます。深く呼吸をすることでくつろぎと安心を感じ、クライアントに対して心が開いた状態になります。音楽に例えると、コーチングはオーケストラではなくジャズ・セッションのようなもの、それは準備されたシナリオ通りに演奏するのではなく、化学反応のようなものです。コーチングを何年間経験してもセッションの前には不安が訪れます。そんな瞬間に呼吸を意識することで『私は OK、そしてクライアントを受け入れる準備ができている。』と言う状態になることができます。」

呼吸法はクライアントが示す怒り、深い悲しみやシンプルな平穏と言った感情の起伏と共にコーチがいることを支援します。またコーチが呼吸することでクライアントにも呼吸を促し、自分が何を言ってしまったかを受け入れ、そこから動くことができます。

アイ・ゲイズ(優しい眼差し)で繋がる

共にいる事の二つ目の作法はアイ・ゲイズ(優しい眼差し)、視線を合わせることです。コーチングでは対面または、ビデオ会議でアイ・ゲイズが可能です。アイ・ゲイズによって安心感や信頼感を高める作用を持つ社会的結合ホルモンであるオキシトシンが分泌されると言う研究があります。また、ステファン・ポージズ博士は恐怖を与えないアイ・コンタクトによって社会との関わりを持つことを推奨しています。その活動は自然に起きうる攻撃・逃避反応(
戦うか逃げるか反応;火事場の馬鹿力的反応)に対するブレーキの役割を果たし、心拍数を下げ、安心して繋がる気持ちを起こさせます。アイ・ゲイズを使うことでクライアントを招き入れ、クライアントはコーチがありのままの自分を完全に受け入れている状態であることに気づきます。

野田パメラ氏(PCC)は、「私の全身がアイ・ゲイズ(優しい眼差し)になります。それはクライアントへの無条件な受け入れです。全てのクライアントがすることは私に目を向ける事です。そしてクライアントは自分が受け入れられている事を認知することができます。アイ・ゲイズの作法を身に付けることで、たとえ電話を使っていてもあたかもクライアントと対面しているかのようにクライアントを受け入れ続ける事ができるようになりました。」と述べています。

アイ・ゲイズは積極的に繋がろうとすることではありません。むしろ人と人の間の自然な繋がりを受け入れると言うことです。グリクステイン氏は、「我々は脳を再配線することに関与します。私は、幼い頃人に注目される度に萎縮し不安を感じるように脳の神経経路が配線されました。しかし、このリレーショナル・プレゼンスの実践により、人に注目されることで喜びと広がりを感じるようになり、非常にパワフルな神経経路を新たに作ることができました。」と述べています。

リレーショナル・プレゼンスの真髄である呼吸法とアイ・ゲイズの組み合わせはクライアントに抵抗感を持たせる事なく、帰属感と受容感、そして真剣に聴いて貰えたと言う気持ちをもたらします。グリクステイン氏曰く「一人の相手と話していても、部屋全体と話していても、この作法で聴く事に優先順位を置くことができれば、話すペース、考えるペースは聴衆と自然に同期するというシフトが起きる、つまり繋がり、フローを経験するということである。」


著者情報
ティナ・マーテル
ティナ・マーテル氏(M.A.、PCC)は20年以上に渡りクライアント自身や相手とのより良い関係性作りの支援を行ってきました。彼女の書籍「Meaningful Coaching」では、コーチの価値感がICF コア・コンピテンシーを使う時、どう影響するか、そしてコーチの価値感とICF コア・コンピテンシーの相性について焦点が当てられています。マーテル氏はスピーキング・サークルズ®の認定ファシリテーターとして相手と共にいるリレーショナル・プレゼンスを使って人々を支援しています。


【翻訳 倉田 隆弘】
Originally written in English by Tina Mertel
Coaching World, January 5, 2018 A way to be
https://coachfederation.org/a-way-to-be/

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【CoachingWorld】インフォグラフィックで見る「プロのコーチになる」ということ

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

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今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『インフォグラフィックで見る「プロのコーチになる」ということ』の記事を御紹介します。


インフォグラフィックで見る「プロのコーチになる」ということ
2016年度 ICF Global Coaching Studyから

コーチの定義

コーチの専門性

その他のサービス

時間の使い方


【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by 2016 ICF Global Coaching Study
Coaching World, Issue 20, November 2016, p24 What it means to be Professional Coach Practitioner
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】コーチの在り方 ~道具箱から~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

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今回は、2016年5月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『コーチの在り方 ~道具箱から~』の記事を御紹介します。


コーチの在り方 ~道具箱から~
コーチの在り方 ~道具箱から~

コアコンピテンシー4
コーチングを行う際のコーチの在り方

オープンかつ柔軟で自信に溢れる態度をもって、コーチングに対し十分に自覚しクライアントと自然な関係性を築く能力



コーチングの挑戦:コーチの在り方!
コーチングを語るうえで、コーチが「そこに存在している」、とは一体どういうことでしょう?誰かと共にそこに居れば、確かにそこに存在はしています。例えば、学校で先生から出席簿を取られた時、私たちは、「はい。」と返事をし、ちゃんと席に居ることを伝えたものです。しかし、実際そこで先生と繋がっていた、あるいは関わり合っていたでしょうか?
ICFのコアコンピテンシーでは、「コーチとしての在り方」を、「軽やかに存在感があり柔軟であること(dance in the moment)」「直観にアクセスし、内なる感覚を信じる」と表現しています。このことを、もう少し詳しく見ていきましょう。

ここからは、誰かを揶揄するつもりはありませんが、軽やかに気分が高まるよう、少しユーモアを交えてお伝えしましょう。

VisualThesaurus.com(オンラインの類義語集)で”Presence”を調べたところ、「being 在り方」「beingness在る状態」と出てきました。“being”は、「存在している」という意味です。すなわち、「存在している」とは単にそこに居る、とも捉えられるかもしれません。しかし、コーチングで最も重要なのは、クライアントがコーチの存在を感じられることです。これは、対面であろうと音声セッションでも同じです。あなたは、話をしながら気が散るようなことはしていませんか? 例えば、相手から見えないからといってゲームをしたり。当然、私たち「コーチ」はそんなことは間違ってもありませんね。だからこそ、私たちはコーチとして雇われるのです。コーチ以外の人は分かりませんよ。

私たちは、クライアントの話に耳を傾け、問いを投げかけ、少々の困難があっても新しいことにチャレンジできるよう支援します。コアコンピテンシーには、クライアントに対しこうしなさい、あるいは、彼らのすべきことをコーチが決め込むということは一切書いてありません。しかし、コーチがクライアントと「共に居ない」としたら、対話をどの方向へ進めて良いのかわからなくなります。あなたは、その場、その瞬間で「常に」何を言えば良いか、どうすれば良いか分かっていますか? クライアントにどう反応して良いか分からない時、自己批判をしていませんか?私は、あなたがそう感じていないことを願います。確かに、時には他者の事例を挙げ支援することもありますが、基本的にはクライアント自身で答えがみつかるよう支援をするだけで、コーチが答えを持っているわけではありません。

コーチングにあらかじめ用意されたシナリオはありません。コーチングの定義や進め方、あるいはどのような事を期待できるか、を書き記したものがあってもそこには個々のクライアントとの進め方については書いていないはずです。セッション中に唯一起り得ることは、「軽やかに存在感があり柔軟である(dance in the moment)」状況です。私たちは、クライアントがサポートを必要としているところに手を差し伸べます。その支援がいつも正しいとは限りませんが、正しいかどうかは誰にも分りません。私たちは、クライアントが自らの情動の変化や妨げとなっているものを受け止め、リスクに対応できるよう勇気づけます。コーチ以外の人はこのような関わり方をしないでしょう。

ここで情動について考えてみましょう。クライアントが私たちのもとを訪れる時、往々にして彼らはハッピーではありません。気力がなく、どうにかして状況を変えたいと思っているものです。時には、何かによって傷つき、それが原動力となり変化を求めて来ることもあります。このようなテーマには、情動が関わってくるでしょう。あなたは、他者の情動と伸びやかに向き合うことができますか? 平常心を保てますか? その情動を受け止めることができますか? 共感できますか? 相手と「共に在る」ことができますか?

私は、重い病を経験した人と関わることもあります。彼らにとってコーチングは、大きな気づきを与え、残りの人生の送り方を変えるきっかけになることもあります。例えば、全く異なる職への転職、人との関わり方の変容、または引っ越しをする等。このような行動変容は、大きなリスクもあれば恐れもあるでしょう。このような時、私たちは、彼らのコーチとして「共に在る」必要があります。人生の変化や成長に関われることを、個人的には光栄なことだと思います。クライアントは、コーチがコーチらしく彼らと「共に在る」に相応しい(値する)存在です。
 

“どのようなことでも、何かが直接影響を受ければ、それに伴ってすべてが影響を受ける。
私が私であるためには、あなたはあなたであるべきであり、
あなたがあなたであるために、私は私でなければならない。
これこそが、内なる真実の仕組みである。”

~マーティン・ルーサー・キングJr

 


著者情報
アン・フライ Ann Fry, MSW, PCC
コーチ歴20年以上。専門分野は、エグゼクティブコーチングと大胆な変化を望む人向けのプライベートコーチング。重い病を患い、人生のシフトを望む人にも尽力している。
アンのHP: www.annfry.com

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Ann Fry
Coaching World, Issue 18 May 2016 p12-13 From the Toolbox Coaching Presence
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】最適なコーチング料金システム設定のコツ

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

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今回は、2016年8月号から、田中チズ氏に翻訳いただきました『最適なコーチング料金システム設定のコツ』の記事を御紹介します。


最適なコーチング料金システム設定のコツ
最適なコーチング料金システム設定のコツコーチングの料金システムは、前払いか後払いのどちらかが基本です。両者の長所と短所を理解し、皆さんのスタイルに最適な料金支払い体系を選びましょう。

世界各国にクライアントを持つ私は、通常、前金制のコーチングを提供しています。達成したい目標やテーマに応じて、クライアントが適切なセッション時間やメニューを選択できるよう、ホームページのデザインはとてもわかりやすく構成しています。全タイプ別の料金を明示し、シンプルな決済画面を採用しています。とはいえ、クライアントがそのシンプルさに惹かれ、海外のコーチングサイト上にクレジットカード情報や個人情報を入力し、簡単に料金を支払ってくれるだろうと予想するのは早合点です。返金保証制度はクライアントの安心につながるため、キャンセル料や返金の方針はホームページ上に明確に表示しておくことが大切です。

コーチング業界でよく使われているもう一つの手法が、初回のみの無料セッションを提供することです。コーチングのテーマや目標の発見をサポートする「ディスカバリー・セッション」などのセッションや会話は、潜在クライアントおよびコーチがお互いを理解し合うのにとても役立ちます。潜在クライアントが特に希望する場合には、「ディスカバリー・セッション」の一環として、15分間で一つのテーマを掘り下げる「レーザーコーチング・セッション」を行えば、クライアントがあなたのコーチングスタイルを知るきっかけになるとともに、コーチ側にとってもセッションを始める前段階としてクライアントを評価する助けとなるでしょう。

明確や料金システムや無料トライアルを提供しても、前金制がクライアントにとってリスクを感じるものであることに変わりはありません。割引制度やセッションの進捗に応じて追加料金を支払っていく追加課金制度など、支払い方法の選択肢についても準備しておくことが必要です。前金制度を維持しながらも柔軟性があることがこの方法の長所で、固定クライアントの確保が難しくなる可能性がある点、クライアントによるクレジットカードの支払い取り消しの可能性が高まる点などが短所として挙げられます。

なぜそのようなリスクを冒す必要性があるのか、疑問に感じる読者もいるのではないでしょうか。クライアントが支払いを拒否する可能性ももちろんあるでしょう。その場合、第三者機関に売掛金の回収を委託したり、裁判を検討することがリスク回避の手段となります。また、国によって違いますが、回収不能分を不良債権として書き換えることも検討できます。しかしながら、コーチングのようなサービスにおいては泣き寝入りするしかないケースも現実的には多く存在します。

一方、後払い制度の長所は、新規クライアントの獲得が比較的容易である点にありますが、当然ながら、支払い漏れや延滞が起こる可能性が高くなることが短所となります。いずれにしても、法的な回収手続きや第三者による代行回収はコストも時間もかかるということを肝に銘じておきましょう。

現在の料金システムを継続するのか、いくつかのオプションを組み合わせるのか、あるいは新システムを導入するのか – いずれの場合にも、弁護士や会計士のサポートを受けながら、皆さんのスタイルに最適な料金システムを導入してください。きちんとしたコーチングの契約書を作成し、事業内容の変更に応じてそれを改訂することも重要です。この機会に十分なリサーチを行い、皆さんが作成した契約書の全貌をしっかりと理解してください。また、コーチになって数年以上経過している場合には、新料金システムを導入する前に、会計士に相談して、必要に応じて会計処理を行ってください。いずれの料金システムを採用している場合にも、賠償責任保険などの保証制度は検討の余地があるでしょう。


著者情報
ドミトリー・コンドラティエフ
20年間に及ぶ銀行業界での経験を通じ、事業主の性格や特徴が外的環境と同じくらい影響力を持つことを実感しているドミトリー・コンドラティエフ氏。同業者や金融クライアントとの長年の関わりを通じて、心理的な要素が及ぼす個人的な決断や事業判断への影響についての深い洞察を有する。ポジティブ・コーチング合同会社の創設者で個人事業主。15カ国の個人クライアントに、よりよいビジネス、キャリア、ライフスタイルをもたらすエンハンスメント・コーチング、およびビジョン形成を通じたサポートを行っている。

【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Dmitry Kondratyev
Coaching World, Issue 19, August 2016 p8 Science of Coaching
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~』の記事を御紹介します。


勇気あるコーチングによる次の時代
~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~

勇気あるコーチングによる次の時代 ~あなたのクライアントは人工知能(AI)への備えができているか?~あなたは解雇に直面したクライアントをコーチングしたことがあるかもしれません。しかし、もしそれが知能を持った機械のせいで働いていた産業自体が消滅したことによるものだとしたらどうでしょうか?

まるでSFのようですが、それは現実になってきています。私達は「雇用」そのものの変化に直面しているのです。でも、コーチである私達は、その対策を提示することができるのではないでしょうか?

人工頭脳学について追いかけてでもいない限り、人工知能(AI=Artificial Intelligence)の目覚しい進歩に、あなたはすぐに置き去りにされてしまうことでしょう。コンピューターによる実行の複合体、もしくは不可解な推論として大まかに定義される「AI」は、長らく会話の認識や、言語の理解、顔の認識といった期待された役割を果たすことなく、あざ笑われる存在であり続けていました。しかし近年、これらの目的は果たされてきています。スマートフォンに特定の友人が写った写真を表示するように話しかけると、AIはあなたの言葉を解析し、要求を理解し、人物を認識して画像を探してくれます。

この進歩のスピードは、いくつもの分野を混乱させるに足る程になっています。まだほとんどの人が自動運転の車を見た事がないというのに、モルガン・スタンレーは10年ほどで長距離トラックの仕事は自動操縦車に取られてしまうと予見しています(自動運転のトラックは、ネバダ州ですでに稼動し出していることが考慮されてのことです)。実現すれば、アメリカで300万人の仕事がなくなることになります。

しかし、あなたのクライアントはホワイトカラーであり、車の変わりに机に座り、頭を使うことで対価を得ているとしましょう。例えば年間に35万ドルを稼ぐウォール街のアナリストのようにです。それでもAIはその仕事も自動化しています。AIアナリティクスカンパニーの創立者ダニエル・ナドラーは2026年には33~55%のファイナンス関連従業員の仕事はソフトウェアに置き換えられてしまうと考えています。彼は、クライアントが人間によって仕事が成される必要性や欲求をもはや感じなくなってきていると指摘しています。

他にも、倉庫の荷造り人(二足歩行のロボットに置き換えられた)、受付係(マイクロソフトは人口のプロトタイプを3年前から配置)、警備員(ドローンはテロリストから違法駐車までを狩っている)など、多くの弱い産業が倒されてきました。これらは全て長い時間をかけて起きたのではなく、10年~20年程度の間に起きています。もしこれでもなおあなたにとって遠い世界の話のように感じるなら、ガートナーのダリル・プラマーはこれから1年か2年でこんな変化が起きると予言しています。

  • 現在の全てのビジネスの20%(レポートの記述、法的な書類など)は自動化される
  • 300万人以上の従業員が「ロボット上司」によって管理される
  • 45%の急成長企業では、スマート・マシンより従業員の数の方が少なくなる

バンク・オブ・アメリカは業界全体が自動化に直面している産業として、農業や、ヘルスケア、教育、エンタテイメントを挙げています。コンピューター科学者のモシェ・ヴァルディ(Moshe Vardi)は2045年にはほとんどの仕事が自動化されると指摘しています。

もしあなたがマネージャーをコーチしていて、その人たちがマネージするべき人間が居なくなってしまうのだとしたら・・・?

一度、深呼吸してみましょう。

コーチは今すぐにコンピューターに置き換えられてしまう危険性はありません(下記コラム、「どの仕事が一番安全か?」を参照のこと)。安全性の高い仕事は、人間の肉体的、あるいは精神的な部分に直接関わっているものになります。
ホワイトカラーのクライアントたちは、彼らの仕事が不要になるという説を聞いても、鼻で笑うかもしれません。彼らの多くは働きすぎて、山が消えていっていることをイメージすることが出来ないのです。しかし、ワーナー社のアニメで有名な、ロード・ランナーを追いかけるワイリー・コヨーテ(訳者注:トム&ジェリーのトムのように、俊足の鳥を追いかけては、毎回崖から落ちたり岩につぶされたりしてコミカルに失敗するキャラクター)が崖から落ちる時のように、その瞬間まで本人は全て上手くいっていると思っているものです。崩壊は、もし皆が事前に訪れることを知っていれば、そこまで崩壊的にはならないはずなのですが。

コラム:一番安全な仕事は何か?

2013年のオックスフォード大学の研究で、賃金と職業のサイズごとに仕事が自動化される可能性が示されました。

最もリスクが高いのは、レジ係、小売業の販売員、外食産業の労働者でした。在庫管理者から石工まで多くの物理的な仕事も、最近進化が特に顕著なロボティクスなども含めた自動化によって、2013年以降もリスクが高いとされています。ボストン・ダイナミクスのアトラス・ロボットは、荷物を持ったまましっかりと二足歩行が出来るようになっています。

同様にリスクが高いのは、テクニカル・ライター、から保険の販売者、核施設の技術者、事務補佐官などの知的労働者になります。

コーチについては特別には言及されていませんが、心理学者、教師、セラピストはリスクが低いとされています。看護師や科学者も同様です。

しかしながら、研究の結論からこのような問題をとりあげておきたいと思います。私が安全だと考えた経営責任者と弁護士は、短期的には正しいが、究極的には先見の明がないようです。やがては企業内での役員の意思決定も、十分な速度を持って事態にあたるためにAIにとって代わられることになります。

 

知識人にとっての自明の通説として、自動化は、人間をもっと報酬の高い、繰り返し作業の少ない仕事に移行させてくれるものだという考えがあります。馬車の製作者は、自動車のデザイナーとなることでより満たされます。流れ作業の労働者は、会計管理者となることでより幸せになるでしょう。従って、自動化は常に、究極的には全員の状況を改善することになるという考えです。

しかし、今はその通りになっていません。コンピューターは知的なタスクもこなせるよう学んでいます。クリエイティブで知的なレベルの労働者は、その仕事まで自動化されたらどこへ行けば良いのでしょうか? 近代最後の砦、ジョン・ヘンリー(19世紀末、機械化が進み多くの労働者が解雇されそうになった時、機械と勝負して勝ったら解雇を取り消してくれと持ちかけ、戦いに勝つもそのまま亡くなった英雄)となるのは、我々の魂に語りかける仕事になるでしょう。すなわち、芸術家、治療師、そしてコーチです。

多くの人が近いうちに自動化のプレッシャーを感じることになるでしょう。産業全体が消失することによって失業してしまうリスクが高いクライアントを、あなたはどうやって助けることができるでしょうか? 彼らの能力が、より安全な仕事に使えそうか評価しましょう。それが誰もが知る共通のニュースとなる前に、社会的な大変動のために備えようと考える先進的なクライアントは居るでしょうか?

この待ち受ける大変動の裏側に、更に大きな変動もあります。ある日、AIたちは意識を持ち、人間のようにクリエイティブで独立した思考と感情を持つようになるでしょう。それがいつ、どのようにして起きるかはまだ誰も知りません。しかし、ほんの一部の専門家はそれが起きるのではないかと疑っています。ステファン・ホーキング、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク―この惑星で最も頭の良い人間の内の3名です―は、賢くなりすぎたAIは、人類の生存を脅かす可能性を現に有していると言っています。

チャールズ・アイゼンシュタインは著書『The More Beautiful World Our Hearts Know is Possible(我々のハートが知っている「より美しい世界」は実現可能である)』の中でこう述べています。「もしあなたがいくつかのストーリーの間にある神聖な場に居るなら、それを認めよう。古い安全な体制を失うのは恐ろしいだろうが、自分が失うことがないと思っていたものを無くしても、大丈夫であることに気づくはずだ。」 2030年に起きるであろう激震に比べれば、今日の比較的穏やかな状況はこの神聖な場、状況を反映し充電する場のような状態にあります。ただし、人間性、あるいは人類愛といったものはこの場にはありません。

これからは、人間のこの状況を深く理解し、AIたちに人間を受け入れ決して我々を殲滅しないよう教える人々が必要になります。それはコンピューター技術者ではなく、心理学者であり、セラピストであり、コーチであるでしょう。

あなたは将来、この世界を救うかもしれないのです。


著者情報
ピーター・スコット、ACC
ピーターは情報技術と人間開発、両方の分野で30年以上の経験を持つ。『コントロールの危機:人口超知能は人類をどう破壊し、あるいは救うのか(Crisis of Control: How Artificial SuperIntelligences May Destroy or Save the Human Race)』の著者。詳細についてはHumanCusp.comを参照のこと。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Peter Scott, ACC
Coaching World, Issue 20 November 2016 p26-28 Brave New Coaching World

http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、田中チズに翻訳いただきました『社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進』の記事を御紹介します。


社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進社内コーチング文化の浸透で、人材育成を推進

グラクソ・スミスクライン(GSK)社は、イギリスに拠点を置く世界有数のヘルスケア企業で、150カ国以上で営業活動を行い、医療用医薬品、ワクチン、コンシューマー・ヘルスケア製品の3領域で事業を展開しています。GSKが導入している社内コーチング制度は、職種や等級を問わず各国の社員に広く認知され、2010年度の開始以来、現最高経営責任者(CEO)や次期CEOを始めとする経営陣からも大きな支持を得ています。さらに、このコーチング制度の導入により、6,600万米ドルの投資利益率(ROI)を生み出したという事実は驚きに値します。

持続可能なコーチングモデルを構築

2010年頃のGSKでは、コーチングに費用を投じつつも、利用は受動的で責任の所在も不明確でした。その一方で、変化を巻き起こし現状を打破できるような人材を惹きつけ、育成し、保持するための具体的な制度導入の必要性を経営陣は強く感じていました。このような背景から同社では、事業に変革と成功をもたらす戦略的なツールとして、コーチング制度の再構築を行いました。現在では、GSKの人材育成、リーダーシップ、組織開発戦略にコーチングが不可欠な存在となっています。
GSKは、全世界でのプログラム導入を推進するために、一貫した水準と倫理規定を有する国際コーチ連盟(ICF)に支援を求めました。まず、高水準の社内コーチング制度を全世界に導入することを目指し、「ザ・コーチング・センター・オブ・エクセレンス (CoE)」を発足しました。この組織の役割は、より容易なコーチングへのアクセス、高品質かつ効率的なコーチングの維持、コスト面を抑える創造的なアプローチなどの領域から、各国で実施されるコーチング制度を標準化することです。GSKからの予算はなく、各ビジネス・ユニットからの資金調達でこの組織を支援しています。各組織のリーダーシップやコーチ達は、「CoE」を持続可能な組織だと考えています。2016年度「ICF 国際プリズム・アワード」にノミネートしたエイドリアン・マションPCC(GSKの社外コーチ)は、「CoEは高品質なコーチングによってビジネスを支援する制度で、効率化、厳格さ、規模、創造性などでコスト面を管理していくモデルを採用しています」と語ります。
アジア・太平洋および新興市場担当のロジェリオ・リベイロ シニアヴァイスプレジデントはこのモデルについて次のように述べています。
「もし本社が予算を負担していたら、私自身を含む経営陣はROIの測定に躍起になることでしょう。コーチング制度とは、本社から予算が出ているから利用するのではなく、必要性があるからこそ使うべきもの。コーチングが次世代リーダーの育成につながると心から信じることが大切です。」
GSKのコーチング制度は、200人以上の外部コーチ、1,000人以上の社内コーチの他、コーチングスキルを持つ約1万6,000人のマネージャーやリーダーが支えています。外部および社内のエグゼクティブ・コーチはすべて有資格者で、そのほとんどがICFの認定コーチです。また「ジョブ・プラス・コーチ(JPC)」と呼ばれる社員コーチもボランティアでコーチングを行っていることが特徴です。これらの「JPC」は研修を受講し、その後、同僚へのコーチング・セッションを講師が審査する資格試験にパスしています。また、四半期毎の指導やコーチング・セッションの定期的な評価などを通じて水準を維持しています。GSKのリーダーシップは「JPC」を組織や社員にとって有益なものだと考えています。このボランティア制度によって、大多数のコーチングを勤務時間中に行うことができます。またJPCメンバーにとっても、他のコーチやマネージャー、リーダーと同様の自己開発の機会を得ることができます。GSKは「JPC」の価値について公にも語っており、それに倣って同様のコーチングモデルを導入する企業も増えてきています。

次世代リーダーを社内で育てる

リーダーシップもコーチング制度を強力にサポートしており、6割を超える経営陣が定期的にコーチング・セッションを受けています。コーチング部門シニアヴァイスプレジデントのサリー・ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「コーチングはリーダーシップも多いに支援しており、この制度について彼らもオープンに意見を交わしています。彼らはコーチング制度を、事業の成功のためだけでなく、最高の自分になりたい社員を支援するためのものだと考えています。治療や矯正ではなく、社員のさらなる成功をいかに支援できるかという位置づけです。」
リーダーシップ達はコーチングの価値を確信しており、エグゼクティブ・コーチング・プログラムも推進しています。アンドリュー・ウィッティ CEOは、最高責任者級の次世代リーダー育成強化プログラム「エンタープライズ・リーダーシップ」を導入しました。これは、将来的に最高責任者に就任する可能性を持つリーダーを対象とし、1年半のエグゼクティブ・コーチングが含まれたプログラムです。過去に同研修に参加したリベイロ氏は次のように述べています。
「シニア級の社員自身が、よりよいリーダーになるという自己実現のためにコーチングを行っています、と宣言することには強いメッセージ性があります。この取り組みは当社の組織開発に大きな影響を与えていると思います。」
次期CEOに指名されているエマ・ウォルムズリー氏は、2017年3月にGSK社初の女性CEOとして就任予定(2016年11月時点)。彼女は、コーチング、スポンサーシップや対話を通じて女性管理職の割合を増加することを目的として発足した女性活躍推進プログラム「アクセラレーティング・ディファレンス(AD)」の出資者3名の1人でもあります。ウォルムズリー氏は次のように述べています。
「組織のあらゆる階層で女性が活躍することは、社内で模範的な女性社員と関わる機会が増えるということです。キャリア形成の将来像も描きやすくなるでしょう。また、コーチングやメンター制度に触れる機会が増えるほか、職業人、個人としての人生の中で多くの女性社員が直面する課題について、実践的なガイダンスを提供することができる取り組みだと考えています。」
今年度は220人が参加する「AD」には、12回のコーチング・セッション、6日間の半日グループコーチング・セッション、シニアリーダーによるスポンサーシップが含まれています。マションPCCはプログラムの内容について次のように述べています。
「ADプログラムでは、自信、存在感、遂行力、影響力、課題への取り組みなど様々な領域のスキルを学んだ後、それらすべてを融合して実践する実力を習得することができます。」
GSK全体の昇進率は女性社員26%、男性社員27%である一方で、2013年度に「AD」を受講した約46%の社員が最低でも一ランク上への昇進を果たしています。また従業員定着率は、同プログラムを受講していない女性社員が69%、男性社員が71%である一方で、同プログラムの受講者の定着率は76%となり、離職を防ぐ効果も証明されました。さらに「AD」を受講した管理職の効率性は、対照群の管理職グループの2.1%と比較して3倍以上も高い(7.7%)という結果が出ています。プログラムを受講したあるコマーシャル・シニアヴァイスプレジデントは、次のように述べています。
「コーチングのおかげで、自分自身のポテンシャルを最大限に発揮する方法がより明確になり、私の人生が変わりました。キャリアの中盤でコーチングを知ったので、もっと早く知っていればと感じています。」

各国に広がるコーチング制度

文化的背景も異なる様々な地域へコーチング・プログラムを導入することには課題も伴いますが、GSKは、組織内の全社員がコーチングを体験する機会を享受できるように取り組みを続けています。ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「コーチングで構築されるのは上下関係ではなく平等な関係。私達は、事業目標を達成するという目的に、コーチングがどれほど大きな影響を与えるかということを体感してもらうサポートをしているのです。時間と労力をかければそれなりの効果はすぐに現れます。ただ、メンター制度やコンサルティングとの違いや、長期的かつ持続的な成長というコーチングが持つ高い効果が腑に落ちるまでには、相当の時間がかかるものです。」
新しい職責に就いた外国人社員が文化的な問題に直面することもあり、GSKはコーチング制度による課題解決のサポートも提供しています。前述のリベイロ シニアヴァイスプレジデントが現職に就任した際、ブラジルからイギリスへと赴任した頃の課題が実例です。新しい役割や職責に慣れようとする一方で、文化の違いを感じていました。そして、異文化の中で新たな業務を遂行するためにコーチングを活用して発想の転換を行うことにしました。当時の体験についてリベイロ氏は次のように述べています。
「それは素晴らしい体験でした。異なる文化的背景を持つ私ですが、現在ではグローバル戦略に貢献することができていると感じています。」
リベイロ氏のようなリーダーを支援していくため、GSKのコーチング・プログラムは躍進を続けています。全組織に体系的にコーチングが浸透し、コーチングの活用率はなんと2,900%も増加し、社員のやる気はますます高まっています。ボニーウィル PCCは次のように述べています。
「リーダーシップの効率性という本来の趣旨に加え、社員のやる気や満足度にも非常に高い波及効果が出ています。ICFのガイドライン『ICFコア・コンピテンシー』を活用する、認定コーチを使う、コーチングの水準を維持するなどの注意点を守れば、コーチングは全社員におすすめできる有用なプログラムです。シニアリーダーからの応援も不可欠なので、シニアリーダーや経営陣からのスポンサーシップも非常に重要です。」


高い効果を持つコーチング制度を表彰
グラクソ・スミスクライン(GSK)社は、2016年度「ICF 国際プリズム・アワード」の受賞企業。国際コーチ連盟(ICF)は、キャリアコーチング分野で先進的な企業を表彰していたICFトロント支部の取り組みを発想に、2005年に同アワードを開始した。プリズム・アワードは、企業規模や業種を問わず、キャリアコーチングへの様々な貢献を称えて授与される。2016年度の受賞候補企業は48社。世界中のICF会員と認定コーチで構成された審査委員会が、以下の評価基準から厳正に審査した:測定可能な影響度/厳格な水準の維持/ 主要な戦略的目標の達成度/ 企業文化への貢献度

【翻訳 田中チズ】
Coaching World, Issue 20 16, November 2016 p20-22 Creating a Coaching Culture for Better Talent, 2016 Prism Award Case Study
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】未来の仕事のためのコーチング

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2016年11月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『未来の仕事のためのコーチング』の記事を御紹介します。


未来の仕事のためのコーチング未来の仕事のためのコーチング
コーチとして私たちは、「今の彼ら」としてのクライアントと会う必要があります。しかし、クライアントが自分自身の現状や今の目標に集中しすぎるあまり、未来を見ることが出来なくなっていることに気づくこともままあります。そんな時コーチとして私たちは、自分のクライアントが未来のトレンドに目を向け、仕事と私生活の双方において適切で満ち足りた状態を保つための戦略を発展させられるように、サポートすることができます。

11項目あるICFのコア・コンピテンシー(国際コーチ連盟が定める核となる能力水準)は、私たちがコーチングにおいて一貫性のある体系立てられたアプローチをする助けになってくれます。人口統計的、経済社会的、地政学的、あるいはテクノロジー的なトレンドが急激に変化し、変わり続ける現状に直面する中で、将来の仕事に向けて適切な舵取りをしようとするクライアントをコーチングする時には尚更です。

下記のコア・コンピテンシーは、こうした課題に対して特に有効です。

  • 積極的傾聴(Active Listening)
  • 人を動かす質問(Powerful Questioning)
  • 気づきの創造(Creating Awareness)
  • 行動のデザイン(Designing Actions)
  • 計画とゴール設定(Planning and Goal Setting)

これらのコンピテンシーを念頭に置きながら、メガ(大きな)トレンドと未来の仕事について近年発表された解説を見て行きましょう。

世界経済フォーラムの「仕事の未来」
2016年1月スイスにあるダボスで行われた世界経済フォーラム(World Economic Forum/WEF)では、いわゆる“第四次産業革命”と、未来の仕事とスキルについて大きくとりあげられました。WEFは2つの大きなカテゴリー、「人口統計/社会経済」および「テクノロジー」に分けて、時代の変化の要因となる様々なことがらを挙げました。それぞれ5つずつ、特に大きな要因となるものを挙げると、

人口統計/社会経済:

  • 「仕事」の性質の変化、柔軟化
  • 新興市場でのミドルクラスの出現
  • 気候変動、天然資源
  • 地政学の不安定さ
  • 消費者の心理、プライバシー問題

テクノロジー:

  • モバイルインターネット、クラウド技術
  • 処理能力の向上、ビッグデータ
  • 新たなエネルギー供給とその技術
  • IoT(モノのインターネット)
  • シェアリング・エコノミー、クラウドソーシング

テクノロジーは時代の変化の重要な要因ですので、コーチである私たちはクライアントとの対話にオールラウンドに対応していくため、上記のトレンドなどを押さえておく必要があることでしょう。

メガトレンド
WEFと同様に、いくつもの利益団体やシンクタンク、プロフェッショナルの協会などが特定の国、産業、プロフェッショナルに関連するメガトレンド(5年~20年に渡るトレンド)にアプローチしています。2016年オーストラリアのCommonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO).による、「Tomorrow’s Digitally Enabled Workforce」もその一例です。

CSIROのレポートは労働者に影響がある6つのメガトレンドを挙げています:

  1. 急激な技術の変化
  2. デジタル技術とプラットフォーム・エコノミーの登場による境界のあいまい化
  3. 労働者間での起業家的なマインドセットの必要性の向上
  4. 仕事場での文化と世代の多様性
  5. スキルの障害の増加
  6. サービス業で続く成長

これらのメガトレンドの意味は、個人、企業、コミュニティー、そして政府にとって重要です。CSIROのレポートは、新しいスキルとマインドセットは未来のために必要であることを明確にしています。そのためには、教育や生涯学習、デジタルに関するリテラシー、STEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)スキルが重要になります。私が見たところでは、人によってはArt(芸術)の大切さを反映し、SETMに“A”を足してSTEAMにするべきだという人もいるようです。

これらのメガトレンドは、変化し続ける労働市場に機敏に対応していくために、コーチたち、そしてそのクライアントにも心構えとマインドセットの変化を求めています。CSIROは焦点を当てるべき分野として以下の様なものを挙げています:

  • 人口統計と消費者のニーズや好みの変化など、様々な仕事への認識の変化
  • 新しいビジネス、雇用のモデル
  • シェアリング・エコノミー、フリーランスなどの増加

クライアントに問うべき質問を問えるようになるために、コーチとして私たちはこれらのトレンドとその意味を知って置くべきでしょう。

未来のコンピテンシー
2014年、コーン・フェリーは38のコンピテンシーから成る、世界中の仕事で求められるリーダーシップの新たな構造モデルをリリースしました。これらのコンピテンシーはあらゆる団体において、入門レベルの貢献者から、幹部レベルのエグゼクティブまで、その雇用の役割をデザインするのに用いることができます。
コーン・フェリーはポジション・レベルごとに、コンピテンシーとプロモート力の相関性を特定するリサーチを行いました。コーン・フェリーによると、最高幹部レベルでは、コンピテンシーのトップ6は:

  • 革新を育む
  • 素早い学習
  • ネットワークの構築
  • たくさんのリソースを持つこと
  • 決断のクオリティ
  • 複雑なもののマネージ

コーン・フェリーは学習の素早さが未来のポテンシャル、プロモート力、パフォーマンスを予測するカギとなると特定したいくつかの組織に属しています。私たちはこれらを念頭に置きながら、コーチング・プログラムをデザインしていく必要があります。

変化の範囲とメガトレンドは、組織と個人のどちらにも影響を与えます。クライアントのために、私たちはこれらの変化に置いていかれないように併走していかなければなりません。これらの知識をICFのコア・コンピテンシーのフレームワークと組み合わせることで、私たちはクライアントの将来と現在のプロフェッショナル、そしてパーソナルな成功をサポートしていくことができるのです。


著者情報
ピーター・ブラック
ピーターはオーストラリアのシドニーで個人、組織向けの転職、エグゼクティブコーチング、Wellness@Work ™、チェンジ・マネジメント・プログラムをサポートするコーチとビジネス・サイコロジストの企業、ALCHEMY Career Managementのエグゼクティブコーチングパートナー。最高幹部から新規リーダーまで、対面、遠隔両方でコーチング・プログラムを多数請け負っている。詳しくは、www.alchemycm.com.au まで。

【翻訳 牧野内正雪】
Originally written in English by Peter Black
Coaching World, Issue 20 November 2016 p17-19 Coaching for the Future of Work
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】組織内でコーチング文化を築くには

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、松川美保氏に翻訳いただきました『組織内でコーチング文化を築くには』の記事を御紹介します。


組織内でコーチング文化を築くには
組織内でコーチング文化を築くには私が働いている組織、Tech CUではコアバリューである“培う”(Cultivate)をとても大切にしています。当社は、大きな組織ではありませんが、従業員の育成プログラムを豊富にそろえており、特に新人マネージャー向けのプログラムには力を入れています。また、執行部役員やシニアバイスプレジデントへは、外部のコーチによるエグゼクティブコーチングを実施したこともあり、その効果も見てきました。しかしながら、数ある育成プログラムを見直したところ、改良できるものがあることに気づきました。

それは、中間層のマネージャー向けのプログラムです。このプログラムは、シニアバイスプレジデント以上のポジションへ昇格するために必要な、リーダーシップ・コンピテンシーを養うことを目的としていますが、その内容は個々人にオーダーメイドされています。現在、私たちは、このプログラムに目をつけ、個々人のキャリアにおけるニーズに応じて社内コーチングプログラムの設計に取り組んでいるところです。この取り組みを進める中で、大きな学びがありました。その内容をここで共有することで、同じように自組織において社内コーチングプログラムを価値あるものとして広げ、その対象者を増やしたいと考える方々の参考になることを願います。

先ず、コーチングそのものの価値を理解してもらう必要がありましたが、幸いエグゼクティブチームの中にはコーチングが効果的であると考えている者が数名おりました。オペレーションチーフのジニー・ジェイコブソンは、「しっかり構成されたコーチングプログラムの導入による人材への投資は、リーダー育成の主軸となります。受けた本人がコーチングの効果を感じ、次第にどのようにすれば自らがコーチングを行えるか、ということを少しずつしみ込ませることができるからです。」
彼女のこの考えがヒントとなり、私たちはいわゆるストリーム・バリュー・マッピングの現状マップと将来マップを用いることにしました。それを用いることにより、中間層のマネージャーからシニアバイスプレジデント/エグゼクティブバイスプレジデントへのサクセッションプラン(後継者育成計画)を見てみると、現状マップと将来マップが連動していませんでした。このことから、重要な課題は技術的なスキル向上ではなく、エグゼクティブとしての自信、あるいは信頼を得るためのソフトスキルであることに気づきました。このようなソフトスキルの習得は、マイクロソフトのエクセルクラスを受講すれば済むというような簡単なものではありません。このため、私たちは課題を明確にするため自組織のコアバリューである“培う”(Cultivate)に焦点を絞り、シニアマネジメントへ次のように働きかけました。「想像してみてください。私たちの提案を受け入れてくだされば、将来、ご自身のサクセッションプラン(後継者育成計画)をご覧になった際、変革する力と強い意志を持ち、それを行動で示しいるリーダーの顔が浮かぶことでしょう。その人こそが、コーチングを受けることにより、自らの可能性を伸ばしリーダーへと成長する人です。」明確な根拠を必要とする人には、ICFが発表しているコーチング文化の構築に関する研究結果(https://coachfederation.org/coachingculture)を参照してもらいます。

進める過程では、コーチングに期待できることとできないことを説明しました。例えば、業務のパフォーマンス向上計画の一環ではないということ。また、コーチングは日常業務の改善やもっと働くことを“指導”するものではないということ。更に、シニアマネジメントの期待と相違が生じぬよう、コンサルティングやカウンセリングとの違いも明確にしました。これにより、「その人の行いを正すにはどうすべきか」という考え方よりも「その人の成長を促すために何ができるか」という考え方の方が、より前向きに捉えられるポイントだと、私たちは気づきます。
その上で、コーチングセッションとは、毎回行動へ移すことが求められ、本人がその責任を負うものであり、決して軽い思いつきで提案するものではないという事を強調します。

社内コーチ育成プログラムの実現化に向け、更なる理解と新たな見解を得る目的で、ベテランのマネージャーを集い、一人一人と時間をかけ話し合いました。その中で、私たちが提案するプログラムの位置づけや運用の流れを図で示しました。また、彼らの持つ素朴な疑問に答えた上で、私たちからは二つのお願いをしました。一つは、話の内容を消化した後、一か月程の後に再び話し合いの場をもつことと、二つ目は、彼らのチームからこのプログラムの先駆けとなるメンバーを検討してもらうことです。
その願い通り、次の話し合いの場では、彼らから調整事項と参加候補者リストの提示がありました。調整事項には、万一のバックアップと持続性を担保するために1名ではなく、2名以上の社内コーチを育成することとありました。これに併せ、特に守秘義務を重んじる事、そしてコーチング同意書にはクライアント・コーチ・クライアントの上司三者の同意を必ず得ること、が含まれていました。この頃になると、組織全体でコーチング文化を築く兆しがみえてきました。組織のコアバリューとニーズを基に積み上げた提案と、最初の段階から現職リーダーの意見を取り入れて進めたことにより、しっかりとしたプログラムを作ることができたと考えています。このプログラムを進めることにより、今後社内コーチングの価値が更に高まることでしょう。プログラムは始まったばかりですが、今年の後半には次期コーチ要員が、ICF認定プロバイダーの研修を正式に受ける予定です。私たちは、組織のコアバリューである”培う“ということを、このプログラムの中で実現することができることに期待を膨らませています。そして、引き続き次世代リーダーの育成の根幹に関われることを楽しみにしています。


著者情報
ジョシュア・レイミーレンク
Tech CU社(米国カリフォルニア州サンタフェ)でTalent and Organizational Development (組織及び人材開発)のバイスプレジデントを務め、同僚チームと同社のコアバリューである促進・培う・革新・協働に日々取り組んでいる。
ミドルベリー国際大学院モントレー校(カリフォルニア州)国際マネジメントMBA取得。
現在、Coaches Training Institute(CTI)でコーチングを学んでいる。

【翻訳 松川美保】
Originally written in English by Joshua Ramey-Renk
Coaching World, Issue 21 February 2017 p14-15 Building an Internal Coaching Pilot
http://icfcoachingworld.com

【CoachingWorld】心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス

コーチングワールド ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。

ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください

今回は、2017年2月号から、田中チズ氏に翻訳いただきました『心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス』の記事を御紹介します。


心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス
心のあり方でビジネスを成功に導くプロセス管理職や起業、スピリチュアル・ヒーラーの他、コーチとしての独立など様々なキャリアを経験してきた私が感じるのは、マーケットへの理解だけでなく、情熱や目的意識が起業家としての成功を左右するということです。今この記事を読んでいるあなたも、コーチの仕事に情熱を注ぎ、クライアントのサポートに大きなやりがいを見出しているのではないでしょうか。コーチングとは、理論で勝負する単なるビジネスではなく、いわば心を使って経験を積んでいく使命のようなものです。また、多くのコーチにとって、コーチングとは心のあり方の模索でもあります。金銭的な報酬は目標達成にもちろん必要ですが、情熱的なサポートで意識改革を促し、パートナーとしてクライアントに自信や力を与えることこそがコーチングの本来の目的なのです。

情熱の持ち方を、ビジネススクールで習得することはできません。ソニー創業者の盛田昭夫がもしビジネススクールに行っていたら、ウォークマンの発明はなかったでしょうし、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが大卒だったら、マイクロソフトやアップルはこの世に存在しなかったでしょう。成功している起業家は数学的な市場分析ではなく、ひらめきや情熱、不屈の精神、自分の創造力を信じる力を持っています。彼らには、失敗を繰り返し、挫折から立ち直る強さがあります。それらはすべて自分を信じる強さからくるものです。成功者は、自分を駆り立てる情熱に突き動かされて進むことが圧倒的な成功につながることを知っています。そもそもの動機がお金や権力だったとしても、数々の失敗や成功を経て、彼らはやがて、社会に還元できる確かな何かを手にしていきます。つまり、情熱を心に秘めているかどうかが成長や成功を大きく左右するのです。

コーチとして生きることを選択したあなたは、彼らと同じ成功への変革を遂げつつあります。あなたには人をサポートする情熱があります。あとは、チャンスを活かす長所や強みを、情熱や目的意識と結びつけ、クライアントをサポートする独自のシステムを構築したら、コーチとしての成功はすぐそこにあります。この記事では、私がスピリチュアル・ヒーラーとして活動していた頃、数千名のクライアントと実践した6つのプロセスを紹介します。これは「マインドレス」と呼ばれる瞑想を活用したプロセスで、禅やヨガの概念にもとづいています。結果ではなく過程を重視するテクニックで、意識に働きかけるマインドフルネス法をはるかに超える気づきや行動、発想の変革を促します。まずは自分自身がマスターして、クライアントと実践してみましょう。

ここでは6つのプロセスのうち主要な4つを紹介しています。残りの2つは瞑想を用いた対面でのフォローアップとなるため割愛します。

1. 成功につながるポイント「スイートスポット」を発見する

下図に示す第一のステップは、長所やチャンス、リソースなどを情熱と結びつけ、未来の成功を強く思い描く基盤を作るための4つの要素です。

喜びとワクワク感をリスト化:何かをやり遂げた場面、うれしかった評価、人間関係、人をサポートした時など、大きな喜びが満ち溢れる瞬間を1つめの円にリストアップしましょう。そのリストから、あなたの情熱と目的意識の傾向が浮かびあがってきます。

自分の長所を見つける:2つ目の円には、上記の「喜びが満ち溢れた瞬間」を得るために活かした自分の長所や強みをリストアップしてみましょう。円1と円2が重なる部分は、叶えたい夢と強みとが重なり合う場所です。

どんなチャンスがあるか:情熱と長所の接点にある夢を叶えるために捉えるべきチャンスは何でしょうか。思いつくチャンスを円3にリストアップしてみましょう。

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活用できるリソースは何か:上記で発見したチャンスを成功に結びつけるために必要な学びや研修機会、身につけたいスキル、ビジネス上や個人の人間関係などを円3に整理しておきましょう。

CW201702_bringyourb02

この4つの円の中心点に「スイートスポット」が浮かび上がってきます。それはあなたの情熱や長所が、訪れたチャンスの中で最高の形で活かされ、さらにリソースで補完することによって成功へとつなげることができる最強のポイントとなるでしょう。

2. 「65バック・ビジョン」で25年後の未来像を描く

「65バック・ビジョン」とは、キャリアと私生活両面における充実を目指した統合プロセスです。過去の経験にもとづいて重要だと信じているものなどの制約を時間・空間的に解き放ち、本来あるべき未来像を描くことを可能にしています。私がコーチングを行っているエグゼクティブの多くは、目標設定を富や地位を得るためのものと考えており、ビジョン設定も3~5年間の短期間で設定しています。その先の将来は、自分の影響力が及ばない曖昧な領域だと考えているのです。それは、言い換えれば未知に対する恐れとも言えます。私自身も富や地位にこだわっていた頃はまさに同じように感じていました。

未来像を描くこのプロセスでは、例えば現在40歳のエグゼクティブに、25年後の自分を想像してもらいます。富や地位だけでなく、健康、家族・パートナーとの関係、学び、奉仕、精神の充実など、人生の主要な領域を満たすビジョン設定を行うのです。すると、そのビジョンを達成するために必要な情熱や目的意識がまったく違ってくることに気づくことでしょう。

この全方向性の長期ビジョンを描く方法は、65歳の未来像を描いた「人生の輪」を作成することです(少なくとも20年以上先の未来像を描くのが望ましいでしょう)。この人生の輪では、前述の「スイートスポット」を参照して達成できる可能性を考慮しつつ、富や地位をはじめとする各領域における具体的かつポジティブな目標をリストアップしていきます。

完成したら、現在の自分の年齢に向かって5歳ずつ遡りながら同様に「人生の輪」を作っていきます。例えば、もしあなたが今40代前半なら、まず初めに60歳の輪を作り、その後、55歳、50歳、45歳と遡って作成していきます。この5年毎の目標は、最終的な20年後の未来像を実現することを念頭においた目標にすることがポイントです。これらの5ヵ年目標が、短期目標の進捗管理のサポートをしてくれます。

3. 行動を喚起する計画を立てる

図式などを用いたビジネスプランを作成し、現在の自分から一歩ずつ前進するための短期計画を立てましょう。課題を洗い出し、それを克服するための選択肢を見つけます。今使えるリソースを探し、行動計画を練り、見つけた選択肢をもとに課題を克服していきます。このプロセスは認知的なプロセスで、アクション重視のコーチングを活用してビジネスプランを作成するのに似ています。5ヵ年計画用の雛形として、上の図をご参照ください。

4. 視覚化し、落とし込む

夢が叶った時、あなたは何を達成して、どんな自分でありたいですか?ここまでのプロセスを進めたあなたなら、数年後のありたい姿を感覚的に視覚化できるようになっているのではないでしょうか。いろいろなことに思いを巡らせたら、夢を知覚で認識し、心に落とし込みましょう。最後のステップとして、夢を信じて描くことができたあなたのエネルギーに感謝し、目標達成についての執着心を意識的にすべて手放します。心の力を活用してビジネス目標を設定し、心にしたがって実践することが、成功への一番の近道なのです。


著者情報
ラム・S・ラマナサン, MCC
リーダーシップ・コーチおよびトレーナーで、スピリチュアル・ヒーラーとしても活躍。東洋の精神論を心理学や神経学と融合させたマインドレス・アウェアネスを専門分野とする。
ウェブサイトはこちらから coacharya.com
Eメールはこちらから ram@coacharya.com

【翻訳 田中チズ】
Originally written in English by Ram S.
Coaching World, Issue 21 February 2017 p16-19 Brings Your Business With Your Heard
http://icfcoachingworld.com